最終回 アストレアシティは止まらない

 世界規模の新型腸炎ウィルスによりヒーローとヴィランが一致団結した地球。

 善悪混合の特殊部隊、スクランブルエッグの活躍により世界は徐々に立ち直り始めて行った。

 そんな中、今日も事件は起こる。

 アストレアシティの銀行、マスクをしている行員や客をロープで縛り銃で脅しているのはマスクをしていない一般人の銀行強盗。

 「俺達はウィルスなんざ怖くねえ、だから強盗だってできるぜ~♪」

 「動いたらお陀仏だぜ~♪」

 ドアや壁には穴が開き、植木や壁時計などのインテリアは粉砕されている。

 そこには街で一番おしゃれな銀行と呼ばれた姿はもうなかった。

 そんな荒れ果てた銀行の中でイキっているのはヴィランよりも頭が悪い強盗達。

 

 彼らがその手に持つギターに似た形の武器は、頭の良いヴィランであるディーラーが過去に資金を提供して闇の重機メーカーに開発された銃だ。

 『頭が悪くても撃てる、当たるんです♪』

 と言うキャッチフレーズで市場に出回った迷惑な銃、拳銃にライフルにと様々なシリーズが開発されて当局が回収と廃棄をしたはずであった。


 「へっへっへ、手ブレ補正付きだから酒が切れていても撃てるぜ♪」

 頭の悪い強盗が人質の一人に向かって狙いを定める。

 「レッツ、ロックンロ~ル♪ お前ら、チーズバーガーにしてやるぜ~♪」

 強盗のアホな台詞と共に、そこら辺で雑に転ばされていた肥満の銀行員へ強盗の銃から凶弾が襲い掛かる。

 

 だが、天は哀れな銀行員を見捨てなかった!


 アホな強盗が撃った銃弾は突然、外から飛んで来た白い液体の奔流によって弾き飛ばされて銀行員を救った。

 「パンピーがヴィランごっこするんじゃね、マスクをつけろ!」

 「このご時世に、咳エチケットを守らない汚物は消毒だ~!」

 背中にタンクを背負ったモヒカンのヴィランと真っ赤な全身タイツのヒーローが

消毒液入りの水鉄砲を射ちまくり、素人の銀行強盗達を制圧して行く。

 善悪混合チーム、スクランブルエッグが助けに来たのだ!


 消防の放水より強力な水圧で放たれる消毒液は、その水圧で強盗達をバンバン殴り倒して行く。

 強力な水圧で噴き出した液体に当たるのは、鉄の棒で突かれるのと変わらない。

 強盗達はビリヤードのボールの如く弾かれ、次々とノックダウンして行った。

 「ありがとう、スクランブルエッグ~♪」

 「助かったわ~♪」

 強盗達が鎮圧されると、銀行員や一般客が万雷の拍手でヒーローを讃えた。

 「ハッハ~ッ♪ ありがとう、ありがとう♪」

 「けっ! こんなんで喜んでるんじゃねえよパンピー共っ!」

 「モヒカン、男のツンデレはうけないぞ♪」

 「黙れ赤タイツ野郎、さっさとこいつらふん縛って帰るぞ!」

 「そうだな、帰ればランチタイムだ♪」

 かくして、一つの事件が幕を閉じた。


 善悪混合チーム、スクランブルエッグの活躍が定着し世界は段々と新型腸炎ウィルスに負けじと立ち直りかけて来た。


 だが、そんな時に限って突然宇宙からUFOの大群が惑星アースを目指していた。

 「あの星が、惑星アースか海が青くて気色悪い」

 UFOの中で緑色のタコ型宇宙人の一人が惑星アースをディスる。

 「団長、あんな星はさっさと占領してバンゾク星人にでも売りましょう」

 「そうだな、奴らなら喜んで買うだろう野蛮人だし」

 団長と呼ばれた宇宙人が部下らしい同胞に語り掛ける。

 

 どうやら彼らは宇宙の地上げ屋らしい、この星を何処かの野蛮なエイリアンに売るつもりらしかった。


 だが彼らは知らなかった、この星にはそれを良しとしないヒーローもヴィランもいると言う事を!

 「そこの怪しいUFO諸君、大人しく帰るか礼儀正しく観光するなら迎えよう!」

 真空の宇宙の中で、星座が描かれた青い全身タイツ姿のマッチョな変態。

 もとい、スター合衆国の大統領であるヒーローのキャプテン・プラネタリウムだ。

 

 宇宙空間なのに普通にしゃべれるのは、彼らヒーローが物理法則を無視した超人だからそして超人の声はUFOの仲にも響く。

 「な、何で生身で真空にいる奴の声が聞こえるんだよこっちは通信回線カットしてるんだぞ!」

 宇宙人達はパニックを起こした。

 

 そして、キャプテンの後ろには盾の形を取り惑星アースを守るようにズラリと並ぶ善悪混合のドリームチームであるスクランブルエッグが全員集結していた。

 「ば、馬鹿な! 奴らはこの星の超人兵器共かっ?」

 宇宙ではヒーローは、超人兵器と言う兵器扱いらしい。

 UFOの中で慌てふためくタコ型宇宙人達、やがて彼らは目の前は全て敵とばかりにUFOから色の付いた赤いビームを乱射する。

 

 そして、何故か起こる大爆発っ! 

 「やったかっ♪」

 勝利を感じたタコ型宇宙人の団長、思わず言ってはいけない台詞を言うと同時に煙が晴れて無事なヒーロー達が現れる。

 「ハッハッハ~ッ♪ うちの官邸のシャワーの方が熱いね♪」

 宇宙人には伝わらないであろう合衆国ジョークを言うキャプテン。

 「あ~、大統領がまた支持率下がるギャグ言ってるよ」

 「黙っていれば格好良い男第一位なんだよな、大統領」

 「また今年も、結婚したくない男第一位になるなあの大統領」

 「聞こえてるぞ、チームメイト諸君♪ 楽しい総攻撃と行こうじゃないか♪」

 連れて来たスクランブルエッグの面々にボロクソに言われるキャプテン。


 かくして、宇宙空間にヒーロー達の暴力の嵐が吹き荒れた。

 「ご苦労、諸君♪ さあ、地球に帰って宇宙人達を解剖だ♪」

 キャプテン・プラネタリウムの号令の下にスクランブルエッグの面々がUFOを拿捕して惑星アースへと帰還する。


 そして、タコ型宇宙人達の尊い犠牲により新型腸炎ウィルスの治療薬が完成した。

 

 ウィルスの脅威が去ってから一年後のアストレアシティ。

 「ヒャッハ~! 宇宙人を材料にした治療薬で炎が出せるようになったぜ♪」

 「俺は手足を自由自在に伸ばせるぞ~♪」

 「キャ~ッ! 目からビームが出て彼氏を焼いちゃった~っ!」

 タコ型宇宙人を材料にした薬を投与した市民達が、超能力に目覚めて問題となっていた。

 「おら~っ! 街中で不用意に超能力禁止だ~っ!」

 「止まりなさい、ヒーローじゃない人の最高速度は時速五十キロまでですっ!」

 タールマンやポリスガールと言った公務員ヒーローが対処に当たっているが生家は今一つだった。

 

 こうして、アストレアシティだけでなく惑星アース全体において超能力覚醒事件が

相次いで勃発した為にスクランブルエッグは解散を延期して対処に当たっていた。


 一つの事件が終われば新たな事件が起こる、ヒーローの台所の街アストレアシティは今日も止まらない。

 

 

 

 

 

 




 

 

 

 


 

 

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ヒーローズ・キッチン ムネミツ @yukinosita

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