Episode3 緑の少女の健気な夢


彼女はクラスでもその性格の良さと人当たりの良さから人気者だった。

本人は否定していたが彼女の人気は目に見えてわかるだろう。

いつだって彼女の周りには誰かがいたのだから。

いつだって誰かがそばにいるのだから。



「萌華ちゃんっ」


「萌華〜っ!!!」



「あはは、なぁに?みんな」


完璧すぎたいたいけな彼女は周りに人が良すぎたために、友達がいなくなることを恐れていた。

せっかく一人じゃないのに。

その友達を失うのが怖かったのだ。

自分を作り上げ人気者の〈萌華〉というキャラクターを作り上げていた。

それでもやはりいつボロが出てしまうかとかそんなことばかりを考えて信じたはずの仲間にさえだんだんと仮面が出来上がっていく。



「萌華?」


「なぁに?拓也」


「最近おかしくなぁい?大丈夫?」


「郁哉まで何w大丈夫だってば」


「ほんと、?」


「ちょ、ヒロまで、??」



ケラケラと笑ってやり過ごす。

大丈夫なんだと偽り続けた。

でもさ。

疲れたんだ。

嘘をつき続けることに。

だから願ったのだ、1人になりたくないと。








『なら監禁してしまえばいいよ』



「え、?」



『ならみんなを殺してしまえばいい』



「そん、なこと」







不意に目の前が暗くなる。

聞いたことのあるその声の持ち主が思い出せそうになる瞬間に、視界も意識もブラックアウトした。






「正直うぜーんだよ、、、郁哉に近寄んなよな」



え、いやいや、何言ってるの拓也



「正直嫌いなんだよね、近寄ってきてさ」



冗談きついよ、、、郁哉



「君みたいな子、嫌い」



ひ、、ろ、、?








嘘だ








みんなはそんなこと言わない







夢だ、夢なんだ、







つ、かれてるから、悪夢見てるんだよ、ね?












でも











            もし、ほんと、なら、?













  みんなが何処かに行ってしまったら?














          『ほら、捕まえておかないと』















そ、うだよね


そうすればいい


みんなそばにいてくれる




そうすればもう演技なんてしなくていいんだから

そばにいてくれるんだから。






「、、みんな、、、」




「私のそばにいてよ」




「いうことが聞けないなら、、、、、」















「殺しちゃうね」












持っていたハサミを振り上げて

思い切り殺意を持って殺そうとした手がその場で止まる、

動かない。


なんで


また私は一人になる


だから、こーでもしてそばにおいておかなきゃ


死んでしまえばもう誰もどこにもいかないでしょう、?




「馬鹿っ、僕がいるだろ、!!!」


涙をこらえながら強く優しく抱きしめてきた兄の姿に涙が頬を伝う。


「私、、、一人じゃない、?」

「僕はそばにいるよ」

「っ、お兄ちゃんっ!!!」





抱きしめあって笑い合う兄妹をいまいまそうに見て

『なんでだよ』

そう吐き捨てたのち低く舌打ちをした少年の事など二人の視界に映ることはなかった。


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