第21話『頼み事の代償?』

「ほんとバカねぇー!そんなの島成アイツに探させれば、スグに見つけてくれるじゃない」


急に光の元気がなくなり顔が暗くなり、不敵に笑う島成が思い浮かぶ。


原因は、さっきラテが口にした名前、島成アイツの事が光は苦手だった。


ーーーあの人だけは、僕はどうしても苦手。

悲しい事にラテは、その事を知らない・・・。


相馬が、申し訳なさそうな顔をして光に頼み込む。


「あぁの、もしよければ・・・その人に頼んで貰えないかなぁ・・・」


光は本当は、島成に頼むのは嫌だったが情報を集める事に掛けては適任だと知っている。


複雑な気持ちを抱えながら、光は相馬の頼みを受け入れた。


「・・・わっわかりました」


次の日の食堂。夕食どき、沢山の人が食堂に集まり食事をしている。


食堂の隅っこのテーブルで、1人で食事をしている島成がいた。


島成が、コップに入っているお水を飲んでいると、前に人の気配を感じ顔をあげると目の前に光が立っている。


「・・・光さん?」


光は、テーブルの上にお盆を置き。


「ここ・・・いい?」


「ええどうぞ。でも、珍しいですね!光さんから、来てくれるなんって・・・」


困った顔をする光。


「・・・あぁ、そうだねぇ・・・」


島成は、何かを察したかのように口を開いた。


「それで・・・?」


「えっ・・・!」


「たくさん空いている席がありながら、嫌いな私がいるこの席に座ったって事は、何か私に頼みたい事があるのでしょ?」


「いやぁ、嫌ってなんていない。ちょっと・・・苦手・・・なだけ」


「残念。私は光さんのこと大好きなのに。そっかぁ!苦手って事は好きになって貰える可能性だってあるって事をですよね?」


「あっうっうん。まぁ・・・そうなるかなぁ・・・」


ニコリと島成が笑う。


「光さんに、好きになって貰えるように、私ガンバります。何ですか、頼みたい事って?」


ーーーこの人が、何を考えているのかよく分からない。その笑顔だって、本当は僕に罪悪感を持たせるための演技じゃないのかって思える。


光は、机の上に「星野 正人」の写真と今まで、調べてわかっている所までの情報を書いたメモを出した。


「コイツの事を、探して欲しい!」


チラっと見て、軽く笑った島成。


「ふっふふ。そんな簡単な事でいいんですか?」


「ああ、頼まれてくれますか?」


「はいっ。私にかかれば目をつむっていても探せますし」


島成が、すんなりと聞いてくれた事に光は呆気にとられた。


「ホントに?」


「ええ、その代わり・・・」


「!?」


島成は、席を立ちお盆を持って歩き出す。


「もし、私が頼み事をしたその時は聞いて頂けますか?」


「・・・僕に、出来ることであれば」


「私そんないじわるな頼みなんてしませんよ。それじゃぁ、楽しみに待ってください」


意味深な言葉を、残し去って行った島成に不安を覚える光。


「あの人の、頼みって・・・?めちゃくちゃ不安・・・」


次の日の夜。赤レンガが、特徴的な倉庫を別にも借りていた星野は、車を止め紙袋を手に持って倉庫の中に入って行った。


倉庫の中に入ると、紙袋からビニール袋に入れられた女性の首から頭部を取り出した。

倉庫の中に、シャンプー台がありそこで血で汚れた女性の髪の毛を洗いだす。


シャンプーの泡が、真っ赤に染まり洗い流された泡が、排水溝に流れていく。


それから、濡れた髪の毛をタオルで拭き終わると、黒く長い髪の毛をクシで整え始めた。

星野は、女性の頭部を持ち髪の毛に頬ずりする。


「なめらかな滑り・・・」


そして、髪の毛を撫で。


「この艶ある髪、なんとゆうさわり心地」


星野は、うっとりとした目をして見惚れ不気味な笑を浮かべる。


「ボクにはわかるよ!この素晴らし髪にするのに、君がどれだけ努力してきたか・・・栄養のある食事に、適度な運動、そして髪のケアー。それが出来てこその髪」


頭部を、台に置き手にハサミを持ちだした星野。


「でも、残念。その髪型はぜんぜん君に似合っていない」


星野は、長い髪の毛を切り始めた。


「大丈夫。ボクが君に似合う髪型にしてあげるから・・・」


長かった髪の毛が、ボブショートに切り鏡に映る女性の頭部に話し掛ける。


「ほぉーら、こっちの方が似合ってるだろ!」


大森が、運転する車に乗っている相馬と光、ラテ。


相馬が、助手席に座り光にお礼を言った。


「本当に、助かったよ」


「いえ、僕はお願いしただけで、探してくれたのは彼女なので」


大森が、運転しながら言った。


「いやぁー、こげんなにも、はよ見つけるなんてびっくりだよ」


運転席の後から、衝撃を受け大森の体が前かがみになり急ブレーキを掛けた。


そして、大森は後ろを振り返り思わず宮城弁で怒鳴りつけた。


「危んこつせんじゃひかーないじゃないです!!」


ラテが、腕を組み大森の事を睨みつける。


「あんたが、バカにしたからっ」


「はぁーっ?バカになんてしてんやろー!」


「そーだったんだぁー、私はてっきりバカにされてるのかと思っちゃった」


ーーーこん人、おいのなまりをバカにしちょるな!


「ラテさん!辞めてください。そんな人は僕、"キライ"です」


光の『キライ』とゆう言葉に、ショックを受け大人しくなったラテ。


「キライ・・・キライ・・・」


ラテが、凹みながら呪文のように連行しそれを見ていた相馬が、困った顔をする。


ーーーこの先、大丈夫なのか?


4人の乗った車が、赤レンガ倉庫に着き車を止め車から降りた。


相馬と光が先頭に立ち歩き出す。そして、その後にラテと大森がついて行く。


「あんたのせいで、光に"キライ"だと言われたじゃない」


隣にいる大森に、八つ当たりするラテ。


「おいのせいじゃありません。自業自得」


正論を言われて、ラテは言い返せなくってニラむ。


「扉が開いてる・・・」


倉庫の扉が、少し開いている事に相馬が気づく。


相馬が、ドアノブに手を伸ばすと光が小声で言った。


「ちょっと待ってください」


「えっ?」


「ここは、僕が先に行きます!」


「しかし・・・」


「光の言う通りよ!犯人が人間だとは限らない。もしかしたら、死神の可能だってあるんだし、そうなったらあんた達じゃぁ、適わないわ」


相馬と大森が、ラテから聞かされ衝撃を受ける。


「そげんなっ、そげんなこと聞いてませんよ」


「そんなの当たり前!私たちだって知らされてないもの」


島成あの人そこまでは、調べなかったようで・・・」


光は、相馬の心配そうな顔を見て、微笑みながら言った。


「ですが、僕なら大丈夫です。なんて言ったってカラスですから!!」


「それに、死神わたしもいるし!」


ラテが、自信たっぷりに言った。相馬は、光の言葉を渋々受け入れた。


「・・・わかりました・・・」


光が、倉庫の扉を開けると地面にうつ伏せになって倒れている星野を見つける。


「これは・・・」


「・・・死んでるっ」


相馬は、愕然として星野の遺体を見ている。

ラテが、ミイラのようになっている星野の遺体に近づき調べだした。


「これは・・・死神のしわざのようねぇ」


そして、ラテは星野が口に何かを咥えていることに気づき指を口の中に入れ取り出した。


そして前に、光に届いた手紙の中身と同じ白い羽だった。


「何かしらぁ・・・これ」


それを見た瞬間、光は目を見開き驚く。光の表情に、ラテは気づき。


「・・・光、どうかしたの?」


——なっなんで・・・それ・・・が?


その時、大森がその白い羽を見て言った。


「それって・・・」


ラテが、大森に聞いた。


「何よぉ、あんたもこれの事を知ってるの?」


「ええ、1ヶ月前ぐらいに水死体で、見つかった男の口の中からも同じ物が・・・」


光は、ふと保泉の事を思い出した。


——1ヶ月前って確かぁ・・・。


光は、手をギュッと握りしめる。


——心・・・キミが・・・。だとしたら、なぜ?


少し離れた倉庫の上に、全身白い服装で謎の男2人が、離れた倉庫の上から光たちの事を見ていた。


男の長い髪が、風に揺られ気持ち悪いモノを見たような表情で、自分の体を擦りながら隣で座っている男に言った。


「ソーヤったら、良くもあんなキモイ男のアームなんって、喰えたわねえー」


お腹いっぱいで、やる気のなさそうにソーヤがアクビをしながら言った。


「ふぁー、腹に入っちゃえば、何だって同じじゃーん」


「お腹壊したって、ワタシっ知らないわよ!」


「眠い・・・早く帰ろう」


その後、光は自分の部屋に戻ると机の引き出しから、手紙を上に置かれた白い羽を取り出し見つめていた。


保泉が住んでいた屋敷。大きな窓の前に白いトレーナーのフードを深くかぶってしんが立っていた。


そして、フードを取り心はマジックを持ち壁に、書かいたカレンダーの7月10日に、大きくバツを付けた。


「おれからの愛は、届いたかなぁー」


大きく引き伸ばした光の写真が、壁に貼られその写真に笑みを浮かべ触れるしん


「必ず君の事を迎えに行くからね。おれの光・・・」


昼間、肌がジリジリと焼け付き、セミの鳴き声が校庭に響く。


終業式も終わり下校中、生徒たちが明日から始まる夏休みに、浮かれ楽しそうに下校する。


学校の校庭を、光と大毅が並んで歩いている。


「明日から、夏休みだぁー」


浮かれる大毅を見て光は言った。


「明日から、朝の10時からみんなで、勉強をするからうめも来るだろ?」


それを聞き大毅は、愕然とする。


「えっ!?」


「だって、今回のテストも赤点ギリギリだったろう!!」


そして楽しみにしていた夏休みが、楽しく思えなくなった。


「それ・・・は・・・」


光は、乗り気じゃない大毅を見て。


「僕はいいんだよ。うめが2年生をもう一度やりたいって言うなら。残念だなぁ・・・一緒に、3年に上がりたかったのに・・・」


光にそう言われたら、大毅は嫌だとは言えず仕方なしに行く事を決めた。


「わかったよ。行けばいいんだろーー・・・」


次の日の朝、光の所へ向かう途中の大毅がバス停でアクビをしながらバスを待っていると、いつもつがるとつるんでいた悠真と明信いた。他校の男子生徒に絡んでいる所を目撃した。


ーーーあれって、いつも立川とつるんでるヤツだよなぁ・・・。


気にはなったが、バスが来てしまいそのまま大毅はバスに乗り込んだ。

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