第19話『偽善者がいてもいいじゃないか?』

「お前は、カラスだなぁ?」


「だったら?僕の臓器を売って金儲けするきか?」


「そんな汚れたものなど、この世にあってはいけないんだ。きみのような生まれて来た時から、汚れたカラダはもってのほか」


そう言って、男がやらしい目付きをして光の髪を指先で撫でた。


「きみの肌は、まるで陶器のように白く目鼻立ちが整っていて、まるで女の子のようにとても美しい。だが、ときどき神は残酷なことをする」


光は、ひねくれ混じりにその男に、言い返した。


「それわどうも、同情してもらえて涙が出るほど嬉し」


男が、光の学ランの上着のボタンを上から一つづつ外し出し始めた。


「あんたオトコが好きなのか?残念だけど僕は、そっちの趣味はない」


「フフッ、おれは美しければ男も女も関係ない。それに神様もお許しになるだろう。きみのような汚れた体を、おれの清い体で清めてあげよっとしているのだからね」


学ランのボタンが、ぜんぶ外せれ光の下腹部当のシャツの中から、男の手がゆっくりの忍び寄ってくる。


あまりの気持ち悪さに、光の全身の毛が逆立った。


「・・・僕は遠慮させてもらう。例えカラダが清められても、変態ヤローの気持ち悪さだけが残るぐらいなら、汚れたままのカラダでけっこう」


光は、精一杯の力を出し男のおデコめがけてドツきをお見舞いした。


光に、ドツきされた男はおデコを抑え痛みに耐え、後ろのズボンに隠していたナイフを手に持ち、こみ上げる怒りと一緒にナイフを振り下ろした。


「ちょっと優しくしてやったら、調子に乗りやがってえーー・・・」


その瞬間、光は自分の手をナイフの前に出し左手の手首を切り落としロープを外した。


ポタポタと、光の手首から血が垂れる。痛みに耐えながら、光はその男の頭めがけ回し蹴りをして気絶させ、ロープを外すために犠牲にした左手が、右手に結ばれたロープにぶら下がったまま杉浦の元へ向かった。


一瞬で、3人を光が片手で倒し湯船に沈められている杉浦を聖水の中からあげ床に寝かせる。


「ぶっはぁっゴボボ」


口の中に入り込んだ聖水を吐き出す杉浦。


「ごめん。遅くなって」


光は、申し訳なさそうな顔をしてあやまった。その顔と、左手がない事に気づき杉浦は何とも言えない悲しい気持ちになる。


「なんで・・・なんで、仕事だからってそこまでにするんだぁ。ぼくのお父さんが、闇サイトでお金を出して買った心臓で、ただ生かされてるだけなのに」


杉浦の言葉に、光は悲しくなった。


「それは違う」


光は、杉浦の心臓に耳を当てドクンドクンと心臓が、波をうつ音を聞く。


「心臓が、生きたいって言ってる。だしかにキミのお父さんは、僕らの仲間の命を奪った。それは許される事じゃない。だけどキミの中で、僕らの仲間が生きてるんだ。だからそれを、背負ってキミはこの子の分まで生きて行く義務がある」


「・・・義務?」


光は、杉浦に抱きつくように倒れてそのまま気を失った。


次の朝、医務室のベッドで光が目を覚ました。


左手は、包帯でグルグルに巻かれベッドの横で、イネスが椅子に座って眠っていた。


包帯で巻かれた光の左手の指が、微かに動き痛みもかんじた。


「いっ・・・治してくれたんだイネス」


その後、光はイネスと義父である黒山にこっぴどく叱られた。


そして心配で、学校を2、3日休ませイネスは医務室のベッドで光を寝かせ常に監視しされている中、杉浦がやって来た。


光の姿を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいな杉浦は、光の顔が見る事ができずにいる。


「ごめんなさい」


「なんで、あやまるの?」


「だって、きみはぼくを助けるために、こんな酷いケガを・・・」


「当たり前のことをしただけ、キミをどんなヤツらからも守ってあげるって約束しただろ。友達なら破っちゃダメでしょう。それにぱっとみ酷いケガしてるように見えるけど、こんなの大したケガのうちには入らないよ」


神妙な面持ちで、心臓の方の服をギュッと握り締め杉浦は俯いて聞いた。


「ぼくなんかに・・・この子の分まで生きていく、そんな重大なこと背負っていけるのかな・・・?」


杉浦の手に、光がそっと手を添え。


「ああ、キミなら大丈夫。もしツラくなった時は、いつでも僕に頼って来てくれていいから」


「うん」


杉浦が、帰ってすぐ蓮輝が医務室に入って来た。そして持ってきた食事を、テ-ブルにドーンと乱雑に置いた。


「ほんっと、ムカつくなぁお前。何が友達なら約束を破っちゃダメでしょだ」


照れくさそうに、光は頭をかき。


「聞いてたのか・・・」


甘い考えをしている光に、イライラして蓮輝が腹を立て。


「お前が、言ってること全て偽善にすぎないんだよ。友達だって笑わせるなっ。人間アイツらがオレらのこと、そんなふうに思ったりするもんか!何かが起これば、すぐ裏切るに決まってるだろう」


「そうだね。そうゆう人間もいる。だけど僕は信じたいんだ」


「・・・信じたいっ?だから、それが偽善者だって言ってんだよ」


「いいじゃないか。それも1人ぐらい偽善者がいってさ。生きて行く事がツラいこの世の中で、少しでも希望が持てるなら僕は偽善者にだって何だってなるよ」


数日後、やっとイネスから学校に行く許可がでた。でも、左手の包帯をあと2、3日取ることを許されなかった。


夏の制服に変わり日に日に、暑くなっていき光の左手はイネスに頑丈に包帯を巻かれ無償に痒くってたまらない。


教室で自分の席に座り、光は痒いのを紛らわそうと、本を読むが耐えられずもがく。


「あーあぁ、痒いかきたい。暑いーー・・・」


「しゃーないだろう。治るまで耐えるんだなぁ。それにもし、それ取ったらイネスさん、めっちゃキレるぞ」


大毅に、そう言われ光の頭の中にイネスの鬼のような顔がうかんだ。


「それは困るっ・・・でも、かゆい・・・」


光の、もがく姿を見て女子は男の色気を感じ、その日から光の包帯が取れるまでの2、3日は、女子たちは別の意味で苦悩した。


「白王子エロ・・・」


「やっぱり白王子・・・最高」


杉浦が、帰ると部屋に入って来てテーブルに、持ってきた食事をドーンと乱雑に置いた。


「ほんっと、ムカつくなぁお前。何が友達なら約束を破っちゃダメでしょだって」


照れくさそうに、光は頭をかき。


「聞いてたのか・・・」


甘い考えをしている光に、イライラして蓮輝が腹を立て。


「お前が、言ってること全て偽善者にすぎないんだよ。友達だって笑わせるなっ。人間アイツらが、オレらのこと、そんなふうに思ったりするもんか!何かが起これば、すぐ裏切るに決まってるだろう」


「そうゆう人間もいるだろうねぇ。だけど僕は信じたいんだ」


「・・・信じたいっ。だから、それが偽善だって言ってんだよ」


「いいじゃないか。それも1人ぐらい偽善者がいってさ。僕らにとって生きて行く事がツラいこの世の中で、少しでも希望が持てるなら僕は偽善者にだって何だってなるよ」


ある日、警察署の死神課に、1本の電話が掛かってきてた。その電話に大森がでる。


「はいっ、もしもし」


借り倉庫から変な匂いがすると、従業員からの通報だった。


午前11時頃、都内の海近辺にある貸倉庫、プレハブ小屋ぐらいの大きさの倉庫がズラリと並ぶ。


その中の1つの倉庫の扉の前に、相馬と大森そして倉庫の管理人の中年の男性が立っている。


「ここですか?」


大森は、緊張して生唾を飲む。


「はいっ、ここは5年前ぐらいからですかね。男性に貸してて・・・」


管理人が、予備の鍵で扉を開け相馬が落ち着いた態度で言う。


「そうですか・・・後でその方の連絡先を教えて下さい」


「はいっ。わかりました」


従業員が、扉を開けると3人の目にとんでもない光景が飛び込み絶句する。


そこには、沢山の黒髪の女性の首から頭部が、棚にマネキンのように横一列に並んでいた。


「な・・・何だコレ・・・」


従業員が、真っ青な顔をして言った。大森は、匂いと光景に嘔吐する。


「・・・オェ・・・ゴホゴホ」


相馬は、口元をハンカチで抑え慣れたように中に入っていた。


「なんだ・・・これ」


そして1つ1つ確認していると、下に何が落ちている事に気づく。相馬は、しゃがみ込みそれを手に取り確認する。


「これは・・・切った髪?」


相馬は、もう一度周りを見渡すとそれぞれ髪型の違う頭部が、数体ある事に気づいた。


その倉庫から出ると、相馬は大森に言った。


「お前は、先に戻ってこれ全部・・・鑑識にまわせ」


「相馬は、戻らないじゃひか?」


「ああ、ちょっと用事を、思いだした」


そう言って、相馬は1人でどこかに向かう。

相馬が向かったのはカラスの基地。エレベーターに乗り込み上に向かった。


エレベーターが、止まり扉が開くとそこに光が扉の前に立っていた。相馬は、一瞬驚き光と目が合う。


「あっ」とお互いに声が揃った。


光は、エレベーターの中に乗り込み相馬に背を向け。


「義父に会いに来たんですか?」


相馬は、光と2人っきりで気まずい気持ちになり少し戸惑う。


「あ、うん。ちょっと相談したい事があってね」


気まずい空気を、相馬は何とかしようと話し続けた。


「大ケガしたって、黒山さんから聞いたけど」


「ええ。心配されるようなケガじゃありませんので、気にしないで下さい。それで今日はまた、仕事の依頼ですか?」


相馬は、光の塩対応に少し寂しそうな表情を見せた。姿も性格も昔の光と違い過ぎて言葉がでず相馬は口ごもる。


ーーー姿だけではなく性格も、変わってしまった。それも仕方がないのかもしれない。大切な人を2人も失ったのだから。


黙っている相馬を見て、光は自分には話せない事なんだと思った光は、エレベーターが止まり扉が開き。


「すみません。僕には話せないんですよね」


「えっ、いっいやあ」


エレベーターを降りる姿を見て、相馬も慌ててエレベーターから降りた。


「ちっ違うんだ。そうじゃなくって・・・」


ーーー言えない・・・。君が変わり過ぎて、寂しいっだなんて。

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