第18話『キミを守ってあげる』

光は、隠れて見ているだけで助けようとはしなかったのだ。


ガラの悪い少年たちは、杉浦をゲーセンやらカラオケに連れ回しその代金をぜんぶ杉浦に出させた。


人気のない路地裏で、杉浦はこわこわ財布の中を見せ唇を震わせながら口を開いた。


「もう・・・お・・・かねないです」


杉浦が、そうゆうとガラの悪い少年が、鋭い目付きで睨んだ。


「あ"ぁ"」


「金がなくっても、金持ちなんだからクレジットカードがあるだろが」


「そっ・・・そんなの・・・持ってません」


ガラの悪い少年が、杉浦の胸ぐらを掴み。


「だったら、友達に借りて来い」


「そっ・・・そんな・・・」


「なぁーに、お友達もお金持ちなんだろう?すぐに、貸してくれる。本当の友達なら」


「・・・いない。そんな友達」


ガラの悪い少年が、杉浦の事をバカにするようにあざけ笑う。


「キャハハハ。金持ちなのに、友達いねぇーって」


「たしかに、どんなけ金持ちでもこんな、根暗な男なんかと、友達にはなりたくねぇー」


「ぼくだって・・・好きでお金持ちの家に生まれたわけじゃーない」


そう言って、杉浦は自分の胸ぐらを掴んでい少年の手首を力いっぱい掴んだ。


すると、ガラの悪い少年があまりの痛さに、制服を離し顔を歪める。


「いっ痛え・・・」


ふっと、杉浦が我にかえり手を離す。


「・・・あっ」


「・・・てめぇー、ふざけやがって」


そう言って、杉浦に殴り掛かりそして杉浦は、顔をかばい目をぎゅっと閉じる。


それから数分後、杉浦の手を誰かに捕まれ声が聞こえてきた。


「それ以上は、やめておけ」


光の顔を見て杉浦は我にかえる。そしてガラの悪い少年2人が、誰かに殴られ気絶して倒れていた。


だけど、3人いたはずなのにもう1人が見当たらなかった。


杉浦は、光が助けてくれたんだと思い込みお礼を言った。


「君が、助けてくれたんだね。ありがとう」


「僕は何もしてないけど」


「えっ!じゃあ誰が・・・?」


光が、視線をしたに向けると杉浦も下を向き酷く驚いた。


杉浦が、馬乗りになっていた見当たらなかったもう1人の少年だった。そして少年は顔をボコボコに殴られ気絶していた。


全く、記憶がない杉浦は何が何だか変わらず、動転している。


「ぼ・・・ぼくが・・・やったのか?」


「1ヶ月前に、心臓を移植しただろうキミ?しかも、その心臓は裏サイトから買ったカラスの心臓」


「なっなんで、それを知ってるの?」


「キミのお父さんがら、僕はキミを守るために雇われたカラス」


杉浦は、混乱し過ぎて理解が出来ない。


「リュク、そこにいるんだろっ。出て来い」


光が、名前を呼ぶと建物の屋上からリュクが降りて来た。


酷くやられた3人の少年の姿を見て、リュクは止められたはずの光が、止めなかったことに呆れていた。


「お前、こんな事になる前に止めるべきだろうがぁ!」


「わるい。僕の判断ミスだ」


「たっく・・・。あとは、俺に任せておけ」


杉浦が、震える手を握りながら光に聞いた。


「あっ・・・この人たち・・・し・・・死んだるの?」


「いいや。まだぁ死んでない」


光からそう聞いて、杉浦はほっと方をおろした。


「良かったぁ・・・」


リュクが、杉浦を睨みつけた。


「はぁ?何が良かっただぁ!ぜんぜんよくねぇー」


自分がした事に怯え、杉浦は未だに信じられないでいる。怯える杉浦の姿を見て、光が言った。


「たぶん。これは副作用だ」


「副作用・・・?」


「ああ、たまにいるんだよ。カラスの臓器を移植した人間が。今まで、運動音痴だった人が運動神経が良くなったり、急に体つきが変わり強くなったりする」


それを聞き杉浦は泣き崩れる。


「それじゃぁ、ぼくは死神になっちゃったの・・・か」


「テメェーは、バカかぁ!だから人間はダメなんだよっ。カラスの心臓を、移植したぐらいで死神になれるわけねぇーだろう」


リュクが、泣く杉浦に向かって怒鳴りつけた。


杉浦は、不安そうに顔をあげ光の顔を見る。

光は、杉浦を安心させようとニッコリと笑った。


「うん。死神にはならないよ。僕たちカラスだって、半分死神だけど死神のように人間からアームを、食べる事は出来ないんだ。キミたちは、勘違いしているみたいだけど。僕たちは、キミたちと同じ。ハンバーガーだって食べるし、ピーマンだって嫌いだし」


「それは君が、嫌いなだけだよねぇ?」


光は、真顔で頷く。


「うん」


自分と何も変わらない光を見て、安心したのか杉浦は声を出して笑った。


「はっはは。君って面白いね」


光は、杉浦の笑った顔を見て手を差し伸べ。


「僕が、どんなヤツからもキミを守ってあげる」


光のその言葉を聞いて、杉浦は顔を背けた。


「どーして?だってぼくは・・・」


「だって、僕たちは友達だから」


光の偽りのない笑顔に衝撃を受けた。そして光の差し伸べた手に、杉浦はそっと手を添えると光が、杉浦の手を優しくぎゅっと握りしめる。


光の細くって柔らかい感触と、少し熱をおびた手の感じに杉浦の胸が、ドキっと鼓動をたてた。


「家まで送って行くるよ」


「あっう・・・うん。ありがとう」


「そうゆうことだから、リュクあとは頼んだよ」


そう言って、光と杉浦はその場からいなくなった。そして1人残されたリュクは、ため息をついて口元が緩む。


「やれやれ。ほんっと光のヤツ、優し過ぎるって言うかっ甘いんだよなぁ・・・」


次の日の朝、つがるが学校に登校すると教室の入口の前で、仁王立ちで険しい表情で大毅が立っていた。


それに気づき、つがるは困惑する。


「なっなんで・・・アイツがオレの教室の前にいるんだ?」


つがるが、教室の入口の前までくると大毅が口を開いた。


「ちょっと、聞きたいことがある!」


放課後。金星高等の生徒たちが下校している中、門の前に制服の違う男子生徒立っている。金星の生徒たちが、コソコソと話す。


「なぁ、あれってカラス高の制服じゃねぁ?」


「カラスが、何のようだぁ」


「もしかして、金持ちのアーム食いに来たとか?」


「それっありえる。貧乏人のアームじゃぁまずくって」


バカにして、笑いながら陰口を叩き聞こえてきて大毅は、イライラする感情を抑えながら光の事を待っていた。


「さっきから、聞こえてんだよ」


前を通る生徒に、大毅が睨みつけ怯えて生徒が慌てて逃げる。


その時、光の声で大毅の名前を呼ばれ大毅が、横を振り向く。


「・・・大毅」


光の隣に、知らない男がいる事に大毅が気づき、なぜか嫉妬みたいなものが湧き上がって来るのを覚えた。


「光、なんで転校した事とおれに言わなかった?友達じゃあねぇーのかよ」


「ごめん。言わなかったことはあやまる。大毅なら、わかってくれるって思ってたから。仕事で少しの間だけの転校だって」


光の口から出た言葉『仕事』と聞き、大毅は急に怒っていた気持ちがサーっと冷め恥ずかしくなった。


「あっそうだよなぁ。仕事、仕事だよな。光がおれに何も言わず転校するわけないもんな」


光は、あたふたする大毅がおかしくって、大毅の耳元で囁きからかった。


「大毅さぁ、僕が転校したと思って寂しくなって来てくれたの?僕って愛されてっんだよねぇ」


真っ赤な顔をして大毅が、動揺する。


「バッバカじゃねぇーの!だっ・・・だれがお前なんか、あ・・・愛してるっじゃなくってねぇーよ」


大毅の動揺ぷりっに、笑いが止まらない光。


「愛してるって、自分で言っちゃってるじゃん」


「だから、間違えたんだよ。後で言い直しただろー」


「本当は愛してるから、間違えたんじゃないのー?キモぉーー・・・」


「光、お前なキモぉーは、取り消せーー」


楽しそうな光と、大毅をそばで見ていた杉浦は、キズついていた。


ーーー仕事だから・・・ぼくと友達になったんだ。


そう思ったら、急に胸が苦しくなって目の前がかすれ杉浦がその場で倒れて気絶した。


それに気づき地面に倒れる前に、光が支え名前を呼んだ。


「杉浦・・・」


「おいっ、だれか救急車よべ」


「それじゃぁ遅い。このまま、病院に連れて行った方が早い」


「って、光が連れて行くきか?」


「大丈夫。体力と力だけは誰にも負けないし」


光は、気絶した杉浦を抱き抱え病院へ走って向かった。


病院のベッドで、杉浦が目を覚ますと光が心配そうな顔をしてそばにいた。


「大丈夫?」


「・・・ああ」


「良かったぁ・・・」


杉浦には、光の「良かったぁ」が信じられなくなっていた。


ーーーどうせっ、仕事だからそう言ってるんだ。あの時だって、キミを守るために雇われたって言ってたじゃないか。


医師から、帰ってもいいと言われ帰ろうと病院の出入り口まで行く。だが、ずっと杉浦は暗い表情をしている事に気づいていた光。


こんな時に、どんな言葉を掛けたらいいのか光には分からなかった。


病院の外に出ると、ワゴン車が猛スピードで光と杉浦の目の前に止まり、車のドアが開くと白い天使の羽のアイマスクを付けた男が、3人降りて来ると光と杉浦の体に、スタンガンを押し当て気絶させ2人を車の中に、連れ込みそのワゴン車は走り去った。


光が、初めに目を覚まし周りは木で囲われ畳1畳分の広さの個室に、手足をロープで結ばれ1人だけ入れられていた。


「あっ杉浦はいない」


何とか、手のロープを外そうをするが、キツく結ばれているせいで、なかなか外せなかった。


「キツく結ばれてっ外せない。余計にキツくなるっ」


もう使われていない協会だが、きちんと掃除が行き届いて綺麗にかれている。


光が入れられている個室は、協会にきた人たちが、神様に懺悔をする部屋。


その頃、イエス様の大きな銅像の前に聖水が入った湯船が置いてある。その湯船の周りを、3人の男たちが囲み杉浦をその湯船の中に入れ、髪の毛を掴み聖水の中に押し込み杉浦が苦しがると髪を引っ張りあげ息を吸わせ、それを何度も繰り返した。


「助けて・・・ゴボボボボ」


「ああ、助けてやるとも」


「お前の汚れた体を清めてから」


苦しがる杉浦の声が、光がいる部屋まで聞こえてきた。


光は何とかして、杉浦を助けに行きたいが手のロープが外せない。


「手のロープさえ外せれば・・・」


部屋の扉が開き羽根のアイマスク付けた1人の男が、その部屋の中に入って来た。


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