第17話『汚らわしき者』

その日のお昼。相馬が、1人で黒山の部屋にやって来た。


「やぁ、あさ電話をくれた件だね?」


「はい。こんなお願いをしなくては、いけないなんて心苦しいのですが・・・」


「いいんだぁ。気にするな!」


光と蓮輝が、学校から帰って来ると黒山に呼ばれ部屋に行くと、先に来ていたソファーの端にリュクが座り、相馬は向いのソファーの真ん中に座っていた。


リュクは、蓮輝の顔を見て気に入らずそっぽを向く。そして蓮輝は、リュクのことなど気にも止ず空いている端のソファーに座った。


ため息をつきながら、光はリュクと蓮輝の真ん中に座る。相馬は、光の姿は昔とは変わってしまったけど元気そうな光の顔を見て嬉しかった。


「元気そうだね」


「お久しぶりです。相馬さんこそ、お元気そうで何よりです」


笑顔で光も返すが、何だかよそよそしさと距離を感じた相馬。


ーーーキミのよそよそしいその笑顔。心が締め付けられる。


「それで・・・挨拶しに来た訳じゃないですよね?」


光が、そうゆうと相馬が言いにくそうな表情をした。


「あっああ・・・うん」


困っている相馬を見るに見かね黒山が、相馬の隣に座り口を開いた。


「・・・お前たちに、頼みがあって来たんだ。なぁ相馬?」


「ははい。政治家の杉浦 京太郎すぎうら きょうたろ総理大臣の息子さんを、守って欲しいと頼みに来ました」


「つかぁ、なんで俺らが?警察が守ってやればいーじゃねぇか!」


面倒くさそうに、リュクが聞く。


「それが・・・」


そう言って、相馬は上着の中から封筒を出しテーブルの上にだした。


「読んで下さい」


光が、封筒を手に取り中には手紙のようなものが入っていた。


『汚らわしき者。

お前は、生きたいが為に汚らわしい者から命を買い体に入れるなど許されぬ。

そんな事してまで、生きたいと思っている事に恥を知れ。

体に汚れた血が、流れるお前を我々が清めよ。

さすれば、神もお許しになり手を差し伸べてくれるだろう』


「昨日、総理の家に届いた脅迫状です」


呆れた顔をして、リュクが言葉にした。


「汚れた者って、俺らのことか?」


真顔で、光がゆうとリュクが微笑する。


「だろうなぁ・・・」


「でも清めて、もらえるんだろう?だったらべつに脅迫状じゃねぇじゃん」


「ただの清めならね。でもこれの我々が清めよは、我々が殺すって意味」


今まで、黙って聞いていた蓮輝が込上がってくる怒りを堪えながら顔を歪め言った。


「くだらない。こんなの、総理そいつに反発しているヤツらのしわざだ。そんなのほっとけば、そのうち辞める」


相馬は、真剣な顔をする。


「これを聞いても、そう言えますか?総理の息子さんは、1ヶ月前に「フォールン・エンジン」の心臓を移植しています」


それを聞いた3人は、思いもしない事にすごく驚く。


光たちの気持ちを、考えると引き受けるわけがないと相馬は諦めかけた。


「そうですよね。こんな話し聞かされて、余計にやりたくないですよね?断ってくれても、構いません」


「断るに決まっ・・・」


そう蓮輝が言いかけた時、光がソファーから立ち上がって。


「それ・・・お受けします」


蓮輝は、驚き光に腹をたてた。


「お前には・・・プライドってものは無いのか?」


横目で見ながら、光は鼻で笑って言った。


「ふふっ、そんなくだらないプライドなんて、とっくの昔に捨てたよ」


「・・・くだら・・・ないだと」


蓮輝は、光に激怒する。


「何がどんなふーに、くだらないんだよ!」


光は、隣にいる蓮輝に鋭い目付きで睨む。


「それがだぁ・・・」


光は、蓮輝に背を向け。


「嫌ならキミは、来なくていい。邪魔になるだけだから」


そう言って、光は部屋を出て来た。するとリュクが、気だるそうに立ち上がり。


「マジ、めんどくせーなぁ」


リュクが、部屋の扉の前に立ちドアノブに手を、伸ばすと蓮輝の声が聞こえてきた。


「お前・・・なんかに、わからないだろーな。死神だから」


「ああ、わかんねえ。だけど、これだけはわかるう」


リュクは、扉に目線を向け言った。


「クソつまんねぇー、プライドなんて捨てて正解。そんなモン持ってたら、アイツの夢叶えられねぇーからなぁ」


「ゆめ?」


リュクは、蓮輝の方を向いて。


「だから、テメェーのクソっみてーなプライドで、アイツの邪魔だけはするな」


そう言って、リュクは部屋にを出て行った。

蓮輝は、リュクを追い掛け部屋を出た。


「おいっ」


黒山は、バツの悪そうな顔をする。


「わっ悪いな・・・変なところ見せて」


「いえ、大丈夫です」


相馬は、黒山に聞いた。


「・・・それより、光ちゃんの夢ってなんですか?」


そして廊下で、蓮輝に引き止められリュクは、鬱陶しそうに振り返る。


「おいっ待て・・・」


「あっ・・・うぜえーなぁテメェーわ。まだ文句でもあんのか?」


「教えろっ!アイツの・・・ゆめ」


「バカかぁテメェーわ!朝も言っただろーが、なんで大嫌いなヤツに、教えなきゃいけねぇーんだよ。知りたきゃー本人に聞け」


そう言って、リュクは薄笑いを浮かべ。


「でも、教えてくれるといいけどな!!」


次の朝。光は都内でも有名なお金持ちが通う「金星高等学校」にいた。


学ラン姿の光が、髪は崩れる事がないぐらいガッチガチに固め後ろで、お団子をし真面目そうな担任の女性担任と一緒に並び廊下を歩るく。


女性担任は、カッコイイ男子生徒が転校して来たと嬉ししうな表情して話しかける。


「光さんは、前の学校の先生からとても、優秀な生徒だって聞いているわ!そんな素晴らしい生徒の担任に、なれるなんって光栄よ」


光は、女性担任の手をそっと握り満面の笑みを浮かべ。


「こちらこそ。そんなステキな先生が、僕の担任だなんて光栄です」


男慣れしていない女性担任は、光の王子スマイルに鼻血を出して、メロメロになってしまいそのまま廊下で気絶した。気絶した女性担任を見て、光は困惑する。


「えっ・・・先生!!」


休み時間、教室で光が席に座っていると、転校して来たと光の席に男子生徒たちが、物珍しそうに集まってきて話し掛けてきた。


「なあ、キミがいた学校ってさぁ。カラスがいたんだろ?」


「そりゃー怖いよなぁー!いつ命狙われるかわかんねぇーもんなぁ」


1人の男子生徒が、そうゆうと光の隣の席に座っている男子生徒。


地味で暗い男子「杉浦 慎也すぎうら しんや」総理の息子が、急に顔色が悪くなり硬い表情をしたす。それに、光は気づく。


「だから、キミは転校して来たんだろう?」


そう聞いてきた男子生徒に、光は答える。


「そうじゃないよ。じゃあ聞くけどキミは、カラスが命を奪うところ見た事がなるの?」


男子生徒は、光にそう質問され困った表情をする。


「いっ・・・いやぁ、見たことはないけど・・・だってカラス《アイツ》らは半分死神だし」


「だいたい半分死神だからって、死神のように人間のアームを食べるわけじゃない。まぁ、カラス《かれ》らをかばうわけじゃないけど、人間だって命を奪うヤツだっている。カラス《かれ》らもそれと同じさ」


光に、説教され気に入らなかったのか不機嫌そうに、男子生徒たちは光から離れていった。


「なんだコイツ」


「人間と、カラスを一緒にするなよな!」


「こんなヤツほっといて、行こうぜ」


「ああ、せっかく仲良くしてやろーと思ったのに」


呆れ果て、光はそれ以上言葉がでてこなかった。


ーーーこっちから、お断りするよ。そんな偏見でしか見られないヤツとわ。


隣から視線を感じ光が、隣に目線を向けると慌てて杉浦が顔をそむけた。


杉浦の様子に、光は不思議そうな顔をして見ていた。


体育の時間。体育館にボールが床に叩きつける音とシューズの擦れることがする。


光のクラスが、体育の授業でバスケをしていた。その中に、杉浦の姿があった。


「おい、たかしパスっ」


男子生徒が、パスを出した。だかしかし、パスを受けとる別の男子生徒の手をすり抜け、杉浦の方にボールがいった。


ネットから、離れた場所にいた杉浦の手の中に、ボールが杉浦は、そのボールを見て慌てふためき、周りにいた男子生徒の声が聞こえ。


「杉浦ーー・・・。突っ立てないで、投げろー」


ネットの下にいた同じチームの男子生徒に、杉浦は目を閉じボールを投げた。数十秒後に、目をつぶっていた杉浦の耳に笛の音が聞こえ、体育館がシーン沈みかえる。


そっと杉浦が、目を開けるとみんなが呆然と立ち尽くしている姿を目にして、自分が失敗してみんなが怒っているのだと思って、暗い表情をする。


その時、同じチームの男子生徒が嬉しそうな顔をして、杉浦のところまで駆け寄って来た。


「お前すげぇー」


「ここから、ネットにいれるなんてえ」


あの時、みんなが立ち尽くしていたのは杉浦が、投げたボールがネットの中に入ってみんなが驚いていただけだった。


勉強以外は、まるでダメだった今までの自分と、明らかに違う自分に杉浦は少し驚き戸惑っていたそして光は、その姿を黙って見ていた。


学校の下校時間。校庭に男子生徒たちのお迎えの車が、何台も止まっている。


教室で、光の隣の席で杉浦は携帯で家の人と話をしているようだった。


「うん。今日は1人で帰りたいんだ。大丈夫だよお母さん」


そう言って、杉浦は電話を切ってカバンを手に持ち教室から出て来く。その後を、光が跡をつけた。


杉浦は、人どうりの多い街を歩き駅に向かっていた。すると、ガラの悪い3人の若い人間の少年が杉浦に絡みだす。


「おっ兄ちゃん。金星高の生徒じゃん」


「まじっ、あの金持ち校?」


怯える杉浦の肩に、腕を回しガラの悪い少年がニッターと笑って言った。


「オレたち貧乏学生に、おごってくれよ」


体を震わせ杉浦は、困っていた。


「あ・・・あぁ・・・」


杉浦の顔を、覗き込むようにガラの悪い少年がニタニタと笑う。


「いいじゃん。兄ちゃんっちって、金持ちなんでしょ?沢山お小遣いだってもらってるんだからさあー」


「そのお小遣い、ちょっとオレらにも分けてよ。なっ!」


そう言って、杉浦をどこかに向かって歩き出した。

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