第13話『クズ教師?』

死神は、やせ細り白目を剥き口から泡を、吹きながら気を失した。


「おうじょーぎわが、悪いわねぇー。さんざん罪を犯して来たくせに」


仁王立ちで立つラテ。


「罪を犯したぶんここで、実験体になるのよ!」


地下では、犯罪を犯した死神がここで実験体として収容されていた。ラテは、失敗した事に心が折れる。


「今回も、また失敗・・・」


スカートのポケットから、1枚の写真を取り出したラテ。


その写真を眺め、うっとりとした顔をする。


「やっぱり・・・光はカッコイイわ」


ラテは、その写真を見て鼻息荒く元気を取り戻した。


「フーン。こんな事で、クヨクヨしてられないわ!光のためにも、私が頑張らないとぉ!!」


その日の夕方の学校。生徒が下校してい中、光は生徒会室に残り仕事をしていた。


光が、デスクでパソコンをカタカタと打っている。そしてソファーに、栗田が座りくつろぎながら、タバコを吸っている。


ーーーこの人は、僕が1年の時の担任で、暇さえあれば生徒会長にやって来る。


「・・・先生?」


栗田は、「あっ?」と言って光の方に視線を向けた。


「そんなに、暇なら手伝って下さい」


「俺がぁ?・・・何でぇ?イヤだっ」


光は、怒りをグッと抑え顔を引き攣らせながら聞いた。


「何でぇ・・・?って、じゃぁーお聞きしますが、生徒会と関係がない、あなた達先生の雑用まで何で僕がしなければ、いけないんですかぁ?」


栗田は、すました顔をして火の付いたタバコを加えた口を開く。


「それが、お前を生徒会長にする条件だからな」


ーーー生徒会も、この先生に進められ入ったのが、運のつき・・・。生徒会長の他に、先生達の雑用までさせられるしまつ。


光は、初めて聞く話にうろたえる。


「はぁ? そんなの聞いてません!」


栗田は、涼しい顔をしてゆう。


「だってぇ言ってねぇーもん。そんなこと言ったら、お前ぜってぇーやんねぇーだろー」


「・・・当たり前です」


「だから、言わなかったんだよ」


呆れて言葉が出てこない光。


「でも、どーだぁ!お前が生徒会長になってからは、この学校、変わっただろう?」


栗田の口から出てきた言葉に、光は「えっ」と目を見張る。


栗田は、感慨深そうな表情をして。


「みんなが、カラスとか人間だとか気にしてない、そうじゃないヤツも、中にはいるが・・・学校ここでは、カラス《おまえ》達がいて、当たり前になって来たんじゃねーの!それは、お前が望んでいた事だろう・・・」


光は、栗田の言葉に感動したが、しかし栗田のドヤ顔を見てガックリと肩を落とす。


「まぁ、これも全部、俺のおかげだなぁ!あはは・・・」


ーーーこの人は・・・少しずつだけど、また僕たちの居場所が増えていってる。


光は、そう思いひっそりと笑う。しかし、勢き良いよく生徒会室の扉が開き、体育の先生が扉の前で激怒して立っている。


栗田が、驚きながら体育の先生を見てボソッと言った。


「・・・伊達・・・先生」


生徒会室の中を、伊達先生がスリッパの音を鳴らし歩く、そして光がいるデスクの上に両手の平をバーンと叩きつけ、すごい形相で光を睨んだ。


伊達先生の迫力に、光はたじろぐ。


「どーにかしろう!お前、生徒会長だろう」


「えっ・・・なっ何を・・・ですっ?」


鼻息を荒くして、怒っている伊達先生。


「2年A組の、立川 つがるの事だよ」


光は、伊達先生の後に目を向けると、それに気づいた伊達先生が後ろを振り返る。


すると、のんきにお茶を飲んでいる栗田が、目に入り気づいた伊達先生が栗田に怒鳴り声を上げる。


「栗田先生ーー・・・」


それにビクッと、驚いて湯のみに入った熱い茶をズボンにこぼした栗田。


「あっあちぃーー・・・」


栗田の前のソファーに、伊達先生を座らせお茶を飲ませ落ち着かせた後、光は栗田の隣に座った。


そして栗田が濡れたズボンを、ハンカチで拭きながら尋ねる。


「それで、うちの立川がどーしたんですか?」


伊達先生は、お茶を飲みながら栗田をギロっと睨み、お茶を一気に飲み干し机の上に、ドーンと置く。


「どうした、こうしたも、ありません。だいたい、あなたがしっかりしてないから、問題ばかり起こすんです。こんなことろで、油を売ってないできちんと生徒に目を向けるべきでしょう!」


伊達先生は、言いたい事をいって腕組みをする。


ーーーよくぞ言ってくれた。先生。


光は、困った顔をする栗田の方を見てそう思った。


「それでぇ・・・ 何をやらかしたんですか?立川のヤツ」


伊達先生は、見た事を話し始める。


校舎にある部室に向かっている途中、壁の向こうから誰かの声が聞こえる事に気づき。


近ずいて壁の向こうを覗くと、つがるとその友達2人が、1人の男子生徒を恐喝しているのを、目撃してしまった。


「痛い目にあいたくねぇーだろーなぁ?」

「だったら早く、持ってる金出した方が、いいぜぇー」


伊達先生は、それに気づき怒鳴った。


「こらぁー、おまえらぁーー何をしてるっ」


伊達先生の声に気づき、慌てふためき逃げて行くつがると2人の友達。


「やべぇっ、体育の伊達だぁ・・・逃げるぞー」


その話を聞き、栗田は頭を傾げ悩んでいる表情をする。


「そーですかぁ・・・わかりました。責任もって何とかします」


栗田が、隣に座っている光の背中を、ポンと叩く。


「こいつがぁ・・・!!」


光は、栗田の言葉に我が目を疑った。


何でもかんでも、押し付けてくる栗田に、怒りがこみ上げてきた光。


ーーーめんどうな事ばかり・・・僕に押し付けて。


「・・・ヤロ」


光の発した声が、あまりにも小さく聞き取れなかったため、栗田が聞き直す。


「あっ、何か言ったか?」


光は、満面の笑みで伊達先生を見てる。


「そーですよねぇ! 生徒だって、こんなクズ教師なんかに、心開けないでしょうし、開いたところで・・・ねぇーっ」


栗田の心に「クズ教師」が、グサリと刺さる。


「このクズ教師のせいで、どれだけ大変な思いを、してきたかぁっ、伊達先生の心中お察しします」


伊達先生は、満面の笑みで酷い事を言う光に引き気味。


「そっ・・・そこまで・・・言わなくっても・・・」


「えっ!僕は正直な事を言ったまでで」


栗田 は、気を落としながら光の方を横目で見る。


「おまえ・・・笑顔で酷いこと、言ってるのわかってる?」


光は、隣に座る栗田を見て、顔を横に少し傾けニコリと笑って言った。


「何ですか、何か言いました?クズ教師の栗田先生」


栗田 は、その言葉の一撃で倒された。


夕方、光は帰ろうと校庭を歩きながら、伊達先生がいなくなってから、栗田に言われた事を思い出していた。


「1年前は、立川あいつそんなヤツじゃぁなかったんだけどなぁ・・・」


光は、不信そうな表情で栗田を見る。


「じゃぁ、先生のせいなんじゃぁないですか?」


栗田は、根に持ったような言い方をする。


「こんなクズ教師でも、そこまでしません」


ーーーこの人、根に持つタイプだぁ・・・。


光は、考えながらつがるの家に向かった。


ーーー1年前に、アイツに何があったんだろう。


コンビニの近くまで来ると、前からものすごい勢いで、走ってくる男と光がぶつかりお互いに倒れ。


「いっ・・・てぇ・・・」


光は、顔を上げぶつかって来た男の顔を見てハッと驚いた。


「・・・立川?」


つがるも、光を見て驚いていた。


「おまえ・・・」


その時、男性の声が聞こえてきた。


「まてぇー、ドロボー・・・」


つがるが、その声に反応して立ち上がって、慌てて走りさった。


つがるが、倒れたていた地面にコンビニのお弁当が、フタが開きぐしゃぐしゃにこぼれていた。


コンビニの店員の男性が息を切らして、走って来る。


そして光の前で、立ち止まり苦しそうな表情をしながら聞く。


「ねぇ・・・っ、キミと同じ年の男が、来なかったぁ?」


光は、つがるが走って行った逆を指して。


「あっちに、走って行きましたよ」


店員は、顔を顰め怒っていた。


「クソぉ・・・、今度来たらタダじゃ済まさないかなぁ!」


その時、光はお弁当と店員を見て、つがるが万引きしたんだと気づいた。


そして地面に、落ちたお弁当を手に取って。


「あのぉ・・・このお弁当の代金は、僕が支払います」


それを聞き店員が驚く。


「えっ、何でキミが・・・?」


光は、頭を深く下げ謝罪した。


「すみませんっ、僕は彼と同じ学校の者です。そこの生徒会長として、お詫びします」


店員は、光の姿を見て冷静を取り戻し困った顔をしている。


「だけどねぇ・・・。未成年だからって言ったって、万引きは犯罪だよ」


「はいっ。それは分かっています。本当に申し訳ありません。僕しないように、言い聞かせますので」


「わかったよ!キミがそこまで、いうのなら今回は許す。だけど、またやったらとっ捕まえて警察に突き出すといっとけ」


「ありがとうございます」


二階建ての古ぼけたアパート。

階段は錆び付き、光が上るたびにギーギーと音を立てる。


光は、3部屋並んでいる真ん中の部屋の前に立ち、壁についているベルを、鳴らして見るが壊れていた。


ドアノブに、手を掛け扉を開けると・・・。


ーーーあっ・・・開いたぁ!


薄暗い部屋の中を除き混むように見ると、そこはゴミだらけの部屋だった。


ゴミの山の向かうに、人影が見える。


「おーい!立川 つがるーー?」


そのゴミの中から、迷惑そうな顔をしてつがるが出て来た。


「何しに来たんだよ、テメェっ」


光は、さっきのコンビニの袋を手に持ちつがるに見せた。その袋に、お弁当と飲み物が入っている。


「一緒に、食べようと思ってさぁ!」


「はぁ?なんでぇ、テメェーと食べなきゃなんねぇーんだぁよ!とっとと帰れーー」


そう言いながら、つがるのお腹の虫がグーっと音がなった。


光は、ぷっと笑う。そして、笑いを堪えながら。


「痩せ我慢なんかしたって、お腹の足しにはならないぞっ!」


つがるは、恥ずかしそうな顔をするが、空腹には勝てづ渋々。


「・・・わぁったよ!食べてやるっ」


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