第11話『ゴミはゴミ箱に』

朝の通勤や通学で、沢山の人が行き交う街中で、高層ビルの液晶に男性の写真と名前が、デカデカと写し出されニュースが流れる。


男性は、頭のてっぺんから身体中にイレズミを彫った(風見 かざみ まさ)。


風見が、映し出された後スクリーンに、女子アナに切り替えられ下の方に風見の写真が映る。


「1週間前に何度も刑務所を、脱獄を繰り返した幼児虐殺犯の風見 雅容疑者が、おととい警察に取り押さえられました」


人々が、不安と怒りで警察を批判する声が、聴こえてきた。


「・・・ってもコイツ5ヶ月前も、脱走してなかったか?」


「どーせっ、捕まえたどこりで、また逃げるに決まってるのによー」


「早く、死刑にすりゃーいいのに・・・警察官は、何してんだ?」


警察庁。警察庁長官の部屋で、白髪混じりの髪で小太りの男性の浜口(警視総監)が、椅子に座り保泉 宗也が口の中に、白い羽を詰め込まれ水死体で発見されたと書かれた書類に目を通していた。


その時、部屋の外から扉をノックする音が聴こえ。


「・・・入れっ」


浜口が、そういうと男性が部屋の中に入って来た。男性は、ビシッとスーツを着た相馬 叶夢そうま かむいが、浜口警視総監の前に立ち深くお辞儀をして。


「・・・失礼します」


「おお、来たか・・・相馬!」


相馬が、目の前に来ると浜口がデスクの上に、置いてあった書類をすっと渡す。


「今回のリストだ・・・目を通しておいてくれ」


「はいっ、わかりました」


その書類を受け取った相馬が、手に取りリストに目を通していた。


「・・・幼児殺害の風見の事で、警察署に市民から苦情が鳴り止まないのは知っているか?」


浜口が、険しい顔をしている。


「はい」


相馬は、そう返事をし浜口が保泉の書類をビリビリに破り捨て、足元に散らばった。


「これもすべて、風見こいつのせいだ!ゴミ同然のような風見こいつのおかげで、私の汚点となった」


浜口は、意味深な言葉を相馬に投げかる。


「なぁー相馬・・・ゴミはゴミ箱に捨てないとダメだよな?」


相馬は、その言葉に不快な気持ちになった。


「ああ・・・そうだ!あそこへ行ったら、黒山によろしくと伝えてくれっ」


浜口は、薄ら笑いを浮かべ言った。


「わかりました、そうお伝えします」


相馬は、そう言って部屋を出た。そして扉を、締め深くため息を吐き歩き出す。


ーーーホント、あの人はイヤな人だ。


死神課はプラスチックの板に大きく『死神課』と書かれた立て札が、立て掛けられている。


死神課とは、死神と人間の間に子供カラスが、増えてきた為、前の警視総監が仕方なしに立ち上げられた。


子供カラス達を管理し市民の不安と苦情を、聞くのが「死神課」の役目なのだ。


相馬は、死神課に戻り部屋に入るなり扉の近くに座っている新人の男性に声を掛ける。


「大森 !」


「・・・はい」


大きな声で、返事をする大森。


「これから、羽山刑務所に連絡してこのリストに、書いてある奴らをすぐに、連れて来いと伝えてくれ」


そう言いって相馬は、大森にリストを渡す。


「あと、お前もついてこい」


大森は、緊張しながら。


「ははい、わかりました」


護送車の扉の近くに、先に乗り込んでいた相馬が座っていた。そして後から大森が乗り込み相馬の隣に座り当たりを見渡し目を疑がった。


大森の前に座っている男は、銀行強盗に、入り持っちょった銃で6人もん人を、射殺して無期懲役が決まった受刑者。


その隣に座っているヤツは、2週間前にニュースにもなっちょた小学校を、建物ごと爆発させ生徒295人 先生25人全員を殺し死刑になった受刑者。


大森は、1番奥に座っている風見が目に入り大きな目を開き驚く。


ーーーコイツ・・・何度も刑務所を脱獄しては、幼い子だんを殺害し警察が手をやいちょった。・・・ってゆーか、全員が無期懲役が死刑になった 重犯罪者ばかりじゃないかーー。


大森は、冷や汗をかきながら不安で落ち着かない。


「あんのぉ、相馬さん・・・今からどこ行くんじゃひか?」


大森は、何処に行くか何も聞かされていなかった。


「今から、こいつらを別の場所に移すんだ」


相馬が、そういうと「ふふっ」と、笑い声が聴こえてきた。


「まぁ、俺は何処に連れて行かれたって、また脱獄してやるけどな!」


相馬の斜め横に、座っている風見が笑い蔑む。それを、聞いて相馬が薄ら笑いをする。


「ああ、いいとも好きなだけするといい」


相馬が、言った言葉に大森の心臓が、一瞬止まり焦りだす。


「ちょっ・・・ちょっと相馬さん」


「ただし、できればの話だがな!」


相馬も、自信ありげに風見を見て言った。そしてある場所に、着くと護送車が止まり大森が先に降りその後、全員手錠を掛けられ受刑者同士の腰に、ロープを結び付けられ車からズラズラと降りて来る。


「大森、先に降りろう」


降ろされ場所は、カラスの基地のひとつの建物の入口の前。


全員が、降りたか確認して後から相馬が車を降りてきた。


「これが、全員のリストです」


相馬は、そこの担当者の男性にリストの用紙を渡し、担当者がリストに軽く目をどうした。


大森が、はじめて来た場所にキョロキョロと周りを見渡す。


「相馬さん、ここは何処じゃひか?」


相馬は、黙って建物の中に入って行く大森は何も教えて貰えず不安な気持ちで、相馬の後を追って建物の中に入って行った。


中は、刑務所と思えない建物の中で、幼い男の子が前から走って来て大森とぶつかる。


その男の子が、背後に倒れ尻もちをつき目に涙を浮かべ泣きそうな顔をしていると、相馬がその男の子に優しく声を掛けニコリと笑って手を差し伸べ。


「大丈夫?怪我していないか・・・?」


「うん! 大丈夫」


「ありがとう」と、言って男の子が走って行った。


大森は、幼い子供を見てもっと不安に駆られた。


ーーーホントに、こげんな所にあんげなヤツらを、連れて来て大丈夫・・・なのかぁ?


エレベーターのドアが開くと、相馬と大森が出てきた。そして相馬は、部屋の前で足が止まり扉をコンコンとノックする。


扉が開き扉の向こうから、笑って黒山が出てきた。


「いやぁ、久しぶり・・・相馬!」


「お久しぶりです。黒山さん」


部屋に入り黒山と、迎え合わせに相馬と大森が、ソファーに座ると大森が相馬の耳元で、コソコソと耳元で話す。


「こん方・・・誰じゃひか?」


「黒山さんは、オレの元上司で警視総監になってたかも知れない人だ」


相馬が、そう言うと大森が驚いた顔をする。


「えっ!そげんな人が、なんでここに?」


「相馬くんが、言ってただろう。なってたかも知れないっと・・・」


相馬は、自分の言った言葉に動揺する。


「ちっ違います。そうゆう意味で、言ったのではなく・・・」


「あはは」


からかい黒山は笑た。相馬は苦笑いをする。

そして黒山は、相馬に訪ねた。


死神課どうだ?」


相馬は、浮かない顔をしている。


「黒山さんが、いた頃が懐かしいです。オレのような者が、黒山さんのようには慣れません」


「珍しいな・・・君が弱音を吐くなんて」


「今の死神課は、みんな淡々と仕事をこなすだけ、あの時のように、彼らの事を良く知ろうとしないで、カラス《かれ》らが悪いと決めつける者ばかり」


「キミは私の事を、過信しずきだよ。私はあのこがいたから頑張ってただけだ」


相馬は、そんな事を言える黒山を尊敬した。


「それでも、すごいです」


「相馬なら出来ると、私は信じている。あの子を想う気持ちは同じだから」


黒山は、相馬を励ました。


「そーですよ!おいは、相馬さんの事すごく、尊敬してます。一緒に頑張りましょ!」


大森が、真面目な顔をして相馬を見ている。

そんな、大森を見てクスリと相馬が笑った。


「ありがとうな・・・大森」


そして少し心配そうな顔を覗かせ、相馬が黒山に聞いた。


「元気ですか?」


黒山は、相馬の顔を見て誰の事を聞いているのか察した。


「ああ、元気だよ。最近は学校で友達も、出来たみたいで」


ーーーそっかぁ・・・友達ができたのか。


嬉しそうな顔をする相馬。


「今では、楽しく学校に行っているよ」


相馬は、ソファーから立ち上がりながら。


「そうですかぁ・・・それじゃー オレ達は、これで失礼します」


「えっ?光に会っていかないのか?」


扉の方に、歩き出す相馬。


「それだけ、聞けただけで十分です。それに今のオレじゃ会えません」


吹っ切れ相馬は、自信に満ちた顔をする。


「オレも頑張ってみます!」


相馬が、そう言うと黒山が引き止めるのを辞めた。


「そうかぁ・・・」


相馬が、扉に向うと大森がずっと、不安に思っていた事を口に出す。


「あんの・・・ホントにいいんじゃひか?」


黒山は、キョトンとした顔をし大森を見た。


「んっ、何がだい?」


「こんな事を、聞いていいとかと思ったのですが・・・ここには、幼い子どんもいるようですし、あんげなヤツらを連れて来て、良かったのでしょうか?」


「キミ、もしかして・・・宮崎出身かい?」


「あっ、すみません。なかなか、なまりが抜けなくって・・・!」


黒山は、優しく笑って大森の肩に手を載せた。


「謝ることはない。それに心配してくれて、ありがとう。ここにいるみんなは優秀だから」


別部屋では、受刑者が連れて行かれた所は、ずらーっと部屋の扉がいくつも並んでいる場所。


1人ずつ受刑者が、部屋ごとに入れられて行く。


風見が入れられた部屋は、お人形さんの様な可愛いらしい女の子に見える「ラテ(死神)」がいる。


風見は、ラテを見て薄気味の悪い笑い方で近寄った。


「アハアハ、キミ可愛いねぇー」


ラテは、顔色1つ変えないで風見を見ている。


「ねぇー歳いくつ?キミのにく柔らかそー。刺したら気持ちいーんだろーなぁー。ねぇー 刺していぃ? いーよねぇー」


風見が、興奮してラテの頬に触れようとした瞬間、ラテが豹変し風見の顔を、おもいっきりグーで殴りつけた。


「その汚ねー手で、触れんじゃねぇーよ。このド変態ヤローがあ。私に触れていーのは、おうじだけなんだよ!」


数分後。ラテが、ハンカチで口を拭きながら、部屋から出て来た。


その後、部屋に2人の男性が入って行き風見の遺体を一輪者に乗せ運び出した。


基地の外にある焼却炉まで、運ばれ他の遺体と一緒に風見も、焼却炉の中に放り込まれた。


護送車に、乗り込み大森は暗顔をして黙ったまま座っていた。




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