第9話『地に落ちた堕天使』

 阪森が、恥ずかしさで真っ赤な顔をして言った。


「あのさぁ・・・雷ちゃん・・・」


「うん。なんやぁ?」


 関田は、阪森に返信をするが部屋に入るなり席に座っている蓮輝の事が目に入る。そして関田が、蓮輝に近寄って行く。


「あっ!キミかぁ?光を怒らせたってゆーんわ?」


 関田が、まじまじと蓮輝の顔を見て無神経な事を言って周りが、変な感じになった。坂森がオドオドしながら関田を止める。


「ねぇ辞めなよ。そうゆうの聞くの、無神経すぎるよ雷ちゃん!」


「えっ?なんでぇ、なんで聞ぃたらいけへんの?」


 坂森は、申し訳なさそうな顔をして関田を担ぎ席に連れて行く。


「ごめんね。雷ちゃんが変なこと聞いちゃって、悪気わないんだぁ。本当だよ」


「なぁー、なんでぇなんでなん?」


 坂森は、関田の口を抑えた。


「もう、その話はいいからぁ」


「うんんん」


 全員が、集まったのを確認し黒山が、はじめに口を開いた。


「ここ3ヶ月で 、35名のカラスひとの行方不明者が出ている。その親御さん達が、とても心配しているんだが・・・」


 黒山の口が、段々と重くなって行く。それに島成が、察しパソコンの前で話始める。そして1件の廃病院で見つかった沢山の遺体を、スクリーンに映し出した。


 それを見た瞬間、健太は顔色が悪くなり今にも吐きそうになっていた。


「・・・うぅっ」


 島成が、投影機の横に立ち説明をし出す。


「ぼう、都内の廃病院3件から臓器だけが取り除かれたカラスひとの死体が、見つかりそして3件で見つかった遺体は、行方不明者35人だと思われます」

スクリーンに、男性の写真と名前 保泉 宗也 ほずみ そうや「闇医者」と個人情報と一緒に映し出す。会員制の闇サイト『フォールン・エンジェル』で、行方不明者と思われる、臓器が売られていた事が、わかりました」


 光たちの机の上に臓器が、A~Dのアルファベット順に格付けられたプリントが配られた。関田が、そこに書かれていた金額に目が飛び出るほど驚く。


「・・・いっ1億!!わいらって・・・そないにするん?」


「あぁ、それは・・・Aクラスの上物のですねえー」


 島成が、何か言いたげに関田の目を、じーと見つめる。


「・・・残念ながらあなたのは、せいぜいDクラスの5百万ってとこでしょうねぇ」


 島成は、関田に勝ち誇ったような笑みを浮かべ。


「だいたい、お菓子ばかり食べて不摂生な臓器なんで、誰が欲しがるんですか?」


 島成に、指摘され関田は食べていたお菓子の袋を慌てて隠した。


「・・・うっうるせぇー、べっ別にええやろー、オノレにとやかく言われる筋合いないわぁー」


「ホント、関田さんはお子ちゃまぁ・・・」


 関田が、成島を睨みつけ険悪な空気のなか必死に、坂森がオロオロして困った顔をしながら止める。


「雷ちゃん。ケンカはやめてぇ・・・」


 光は、落ち着きはらった態度で2人に言った。


「後でやってくれないかな?小学生みたいなケンカ、見苦しくって見ていられないから」


 すると2人は、ケンカを辞め島成は光が座っている席の机の上に座り、光の頬に手を添え上から下にかけ指先を、滑らせ顎で止め意味深な笑みを浮かべた。


「余計な脂肪がなく、鍛え抜かれた肉体。きっと・・・あなたのは、特Aが付くほど綺麗な臓器なんでしょーねぇ」


 光の周りに、真っ黒な花が咲いたような満面の笑みで言った。


「キミに、そう言って貰えるなんって光栄だよ。だけどキミのは、真っ黒で誰も欲しがる人はいないんだろうねぇ。そんな事より早く問題に、戻ってくれるかい?」


 黒山は、呆れて深くため息を吐き画像を操作するリモコンを手に取り。


——・・・やれやれ。


 スクリーンに、「死神」とだけの情報と大学生に、声を掛けていた女性の写真が、映し出され黒山が口を開く。


「そして行方不明者が、いなくなった日に必ずと言っていいほど、この女が目撃されている。そしてもはや・・・ここには、戻って来ることはないだろう。そこで新たな廃病院を3件に絞ってもらった」


 関田が、気に入らないような表情をして文句を口にする。


「3件って・・・もう少し、絞れへなんだの?」


 それを聞いた成島が、黙ってはいなかった。


「ああ・・・これだから、嫌なんですよねー。頭脳派の私たちと違って、戦う事しかぁー頭にないおバカさんわ!私たちの苦労も知らないで」


「・・・っ、いまぁバカっていうたなぁ?」


「ええ、言いましたがなにか?」


「バカっていうた奴が、バカなんやぁ!!」


 隣で、島成と関田が口ケンカをし始めオドオドする坂森。 その時、黒山は「ゴホンゴホン」と咳払いをすると、関田と成島は口を閉じる。


「・・・それじゃー、配置を決めるぞぉ。A地区の廃棄を阪森と関田。B地区が、神楽坂とリュク」


 リュクは、黒山が言った事に驚く。


「そしてC地区 、光と鈴達で組んでもらう」


 光と組むのが、自分じゃない事にリュクが声をあげた。


「おいっ待てー・・・何で光と組むの、俺じゃぁねぇー?何でぇこんな蓮輝ヤツとなんだ?」


 リュクの顔を見づ光は、机を見つめ。


「・・・やめる!リュク」


「お前は、それでいーのかよ? 俺は納得がいかねぇっ」


 リュクは、黙り自分の方を見ない光に苛立ちを、抱きながら席に着いた。


「チッ、なん・・・だよクソ・・・」


 静かになったのを確かめ黒山が口を開く。


「実行は明日だ。頼んだぞぉみんな」


「はいっ」


黒山が、そう言ったあと全員の声が揃った。


 次の日の夜、リュクと健太が廃病院の近くにある高層ビルの建物の屋上で、体を低くして隠れながら廃病院の入口を、見張っていると耳に付けた無線から聴こえてくる声。


「A地区・・・配置に着きました」


「C地区も同じく」


 健太が、緊張して唇を震わせながら口を開いた。


「Bっ・・・B地区、つっ着きました」


 リュクは、緊張で体がガチガチになっている健太の、背中をバシッと思いっきり叩き、そして驚いて大きな声を出してしまった健太。


「・・・痛え」


「肩の力を抜け!何があっても、俺がお前を守ってやるから」


 健太は、リュクにそんな事を言われるとは、思っても見なかった。そのリュクのおかげで、健太の緊張がほぐれたのか、急に立ち上がり深くお辞儀をする。


「はいっ、よろしくお願いします」


 リュクは、昨日の事を思い出していた。会議が終わりみんなが、帰って行く中リュクは席から動こうとしない。


「どーしたぁ? 行かないのか?」


 その時のリュクは、光に裏切られたと思いギロっと睨みつけた。


「お前が、ここまで来れたのは、誰のおかげだ?」


「ずっとは、組んでいられないだろう。リュク大人になれ」


 感情的になるリュクに、光は冷静な口調で話す。


「はあ? お前よりも大人だ! 300年も生きてんだからな」


「それが、子供だって言ってるんだぁ」


「ふざけんな!お前にとって俺は、どーでもいいのかよ」


 ずっと、冷静に話していた光が感情的になり思わず怒鳴りつけた。


「しかたがないだろう!」


 そんな光の姿を見て、リュクは言葉をなくし絶句する。


「死神と人間から、産まれたってだけで差別され、たくさんの人が傷つき、この先も何も変わらない。僕は彼らには、憎しみだけで生きて行って欲しくないんだ。だけどいつか、僕らがいて当たり前の世界にするには、やらなきゃいけない事は僕が、新しい子たちに教えて行く事じゃないのか?」


 光の気持ちを、リュクが1番理解しているが、それでも光と組む事にこだわっていたせいか、納得がいかず苦渋の顔をしている。


「例え、組む相手が変わっても変わらない事が1つある。リュクは、僕にとって大切な家族だってこと」


 リュクは、昨日の光の真剣な表情を見て、考えが変わった。


——これで、良かったのかもなぁっ。俺が光の目の前で死んだら、きっと光の事だから自分を攻めまくるんだろ。


 その頃、古びた大きな屋敷の中で、12帖はありそうな広い書斎の部屋。本棚にぎっしりと医学の本でぎっしりと収められている。


 保泉が、デスクに座り誰かと携帯電話で話をしていた。


「えぇ 作業場さえ見つけてくだされば、いつでも、あなたのご期待に、お応えしますよ」


 保泉が、電話を切ると部屋の扉が開き死神の女性が、お盆に載せて飲み物を運んで部屋に入って来た。死神の女性が、コップを机の上に置くと保泉が死神の女性の手を握り。


「今度の客は、目が綺麗なカラスをお望みだそうだ。探して来てくれるね?」


 うっとりとした目で、保泉の事を見て。


「えぇ、あなたのためなら、何でもするわ」


 3日目の日も暮れて、学校帰りの女子高校生達が、歩道を歩いている。ある交差点で、友達と別れ1人で駅に向かって、歩いている女子高生。


 当たりが、だいぶん暗くなり公園の近く間で来ると400メートル先に駅の看板の灯りが見えだし、女子高生がカバンから携帯を取り出しメールを打ち出した。


 「今から帰るね」と、母親に送り終えると突然、女子高生の口を塞がれ真っ暗な公園の中に、引き込まれていった。女子高生は、目を大きく開き口元を手で塞がれ。


「うっ・・・ううっん・・・」


死神の女性は、怯える女子高生の目をまじまじと見て囁いた。


「あなたの目・・・綺麗ねぇ」


その夜。A地区の廃棄の病院を、見張っている阪森と関田。

関田が、お菓子を頬張りながら島成に、言われた事に腹を立てている。

島成あいつちーとばかし可愛いからって、ズケズケと・・・」

「そんなに、気にするならぁそれ辞めればぁ?」

「フン 、アイツに言われたからって、辞めんのは嫌なんや」

「・・・雷ちゃん」

関田の周りは、お菓子の袋が沢山散らばっている状況を見て阪森は呆れ果てていた。

「そう言って、3日も言い続けてるよ・・・」

「へへぇ」と笑ってごまかす関田。


 光と蓮輝が、C地区の廃病院を見張っているとスクリーンに映し出された死神の女性が気絶を、失った女子高生を担ぎ連れ廃病院の中に入って行く姿を目撃した。


「C地区、廃病院の中に入って行く死神を確認」


 光は、皆にそう伝えると無線から心配する黒山の声が聴こえ。


「わかった・・・とにかく気おつけろ光」


「・・・うん」


 光が、話しているのに蓮輝が勝手に1人で、動き出し慌てて光が蓮輝の後を追った。リュクの無線から、慌てた光の声が聞こえる。


「・・・えっ、ちょっ・・・ちょっと待てえ」


 「チッ」と舌打ちをして、苛立ちを隠せないリュクは、光が心配でいても立っても、いられなくなりその場を離れる。


——アイツ・・・。


 それを見て、健太が戸惑う。


「えっ! どこに行くんつもりですか?」


「決まってんだろー。アイツの所だよ」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る