第8話『ツラい過去』

 そこは、草木が生え太陽の日差しが差込み、とても暖かく感じさせるような広い庭に、沢山の子供たちが楽しそうに遊んでいた。


 蓮輝は、周りを見渡すと足がなかったり、片目がない子たちばかり何かしら、傷ついている子供が沢山。


「ここにいる子たちは、心のない人間たちに傷つけられた子ばけり」


 驚きのあまり蓮輝は、言葉が出てこなかった。


「・・・」


「キミは、知ってる?人間たちは、カラスの体を1部もっていると、幸福が訪れるだとか臓器を移植すると、長生きできるって思ってるってこと」


——僕たちは、半分人間で半分死神。風も引かなければ、病気などしない不死身な体質。


 光は、胸がギュッと締め付けられる。


「喉から手が出るほど、欲しがる人間がいて闇サイトで『カラス』の臓器が、高額な金額で取引されている。そんなくだらない迷信を、信じている人間が沢山いるんだよ」


「それなのに何で、人間の味方をするんだぁ?それに目が曇ってるのは、お前の方じゃないのか?」


「・・・味方?そんなつもりはない。僕らを傷つける者は絶対に許さないし、この子たちを守れるのは僕らしかいない」


 死神の親を持ったせいで蓮輝は、小学生の頃に友達にされたツラい過去を思い出した。


 友達のお父さんが、不運な事故で亡くなったのを、蓮輝のせいにし泣きながら憎しみがこもった目で蓮輝の事を睨んだ。


「お前なんかと、仲良くしたせいで・・・僕のお父さんが死んだんだ」


 友達は、野球のボールぐらいの大きさの石が、目に入りその石を掴み、蓮輝に向け投げつけた。


「お父さんを返せえーー・・・」


運悪く蓮輝のおでこに、当たってしまい血を流す。そして蓮輝は、友達の言葉にショックで傷つき悔しさが湧き始める。


——オレのせいじゃない。何でオレが、こんなめに合わなきゃならないんだ。全部・・・死神の親をもったせいだ。


 それからクラスで、蓮輝と仲良くすると大切な人が殺されると、噂が広がり蓮輝に誰も近寄らなくなった。


——人間も死神も、みんなキライだ・・・。


 庭で、楽しく遊んでいる子供たちを光は、嬉しそうなに微笑む。


「でもあの子たちは、あんな酷い事をされても、人間の事が好きなんだ。それは、なぜだかキミにわかるか?」


 光は、黙っている蓮輝をチラっと目線を向け少し間を開け口を開く。


「曇のない目で、見ているからあの子たちは、そんな人間ばかりじゃないって知ってるんだ」


 蓮輝は、鼻で「ふっ」と笑う。


「オレのツラい過去なんか、この子らに比べたら大した事ないってゆうために、こんなの見せたのか・・・あんたわ?」


「違う!傷ついた事に、小さいも大きいもない。ただ僕は・・・知って欲しかったんだ」


 光は、傷ついている子供たちを見つめる。


「ここにいる全員が、過去も今も何かしら、ツラい思いをしてここにいるっ。それはキミだけじゃないって事・・・」


——僕だって、平気なフリをしてツラい過去にフタをしているだけ。誰もがツラい過去に、ふたをして生きている。


 その日の夕方。沢山の大学生が、大学の門から出て来た。その中に、真面目そうな1人の男子に、目を付け女性が近づき声を掛ける。


「あっ・・・あの・・・ すみません」


 男子が、振り返ると女性が目の前に立っている。フワフワとしたハニー色の髪に、目をウルウルさせ胸の谷間を、強調した服を着た可愛いらしい女性に目を奪われた。


——うわぁっ、可愛い・・・!


 男子は、女性の可愛いさと胸の谷間を見て鼻の下を伸ばす。


「なっ・・・なんですか?」


 目を潤ませ上目遣いで、甘ったるい声を出す女性に見つめられ男子の心臓が、ドキドキと大きな音をたてる。


「道に迷ってしまって・・・」


「えっ・・・あぁどっどこに、行きたいの?」


 男子が、聞くとおもむろに女性がカバンの中に手を入れて、ガサゴソと何かを探していた。そしてカバンの中から、行き場所が書かれた紙を、取り出し男子に見せた。


「私をここまで、連れて行ってもらえる?」


 少し考え男子は、淡い期待を抱きながら答える。


——まぁ、いっかぁ・・・この子、オレごのみだし!!


「・・・あっうん。連れて行ってあげるよ」


 女性は、嬉しそうにニッコリと微笑み。


「嬉しぃ。ホントは、わたし道に迷って心細かったの」


 数時間後、女性から渡された紙に書いてあった場所に着くと、そこは人けの少ないというよりも誰も通らない道にある廃病院の前だった。


 それにしても何だか背筋が、ゾワゾワするような気持ちが悪い場所。さらに嗅いだ事のない臭いが、漂い鼻につき、怖くなってきた男子は女性に聞く。


——おいおい、なんだよココ。変な匂いもすしぃ・・・)


「あっあのさぁ・・・ホントここ?書き間違えたとかない・・・かなぁ?」


 急に「カー」とカラスの鳴き声に、男子はビクっと体を大きく動かし驚く。そしてカラスだと、男子は気づき胸に手を当てホッ安心する。


「なんだよっ、カラスかぁ・・・」


 それを見ていた女性が、ク スっと笑う。


「怖がりなのねぇ!それなら・・・」


 男子の首に腕を、まわし大きな胸を男子の体にムニュッと、密着させ顔を近ずけた。


「これなら・・・怖くないでしょ!」


 男子は、顔を赤くし心臓の鼓動が早くなり、女性からコロンのいい香りが鼻をくすぐる。


——あぁ・・・いい匂い。


「うふふっ。すごい、あなたの心臓の鼓動が、私にまで伝わってくる」


「ご・・・ごめん」


「ううん。謝らないで・・・」


 女性は、ぷるんっとした桜いろの唇が、男子の唇に近づく。


「私も、ドキドキしてるからぁ」


 そのまま女性は、男子にキスをした。


「・・・んっ」


 男子の体がしだいに、力が抜け意識を失いそのまま女性の方に倒れ込んだ。


「ごちそうさま」


 廃棄の病院の中。窓ガラスが割れ床に散らばりっている。そして大学の男子が、悪臭で目が覚めた。


「う"っ・・・くっせえっ。なんだこのニオイ?」


 鼻に、手をやろうと手を動かすが、しかし動かす事が出来ない事に気づき困惑する。


「えっ!」


 その時、男子は全裸で台の上に載せられ手足を金属で固定され身動きが取れない状況に、気づき戸惑いながらドタバタと体を動かして見るがビクともしない。


「どーしてこんな事に・・・」


 さらに周りを見渡すと、透けてわかるぐらいの透明ビニールが、テントの様に男子の周りを囲んでいる。


 そしてビニールに、何が飛び散り黒く染色し、そこに、新たな赤いペンキの具のような物が飛び散っていた。


「ちっ・・・?」


 ビニールの向こう側に、とんでもない光景が男子の目に飛び込んできた。そこには、数え切れないほどの遺体がゴロゴロと転がり腐りかけの遺体に、虫が集りそのせいで悪臭を放っていた。男子は、それを見て血の気がサーっと引く。


「・・・ウソだろう・・・何なんだよーこれ」


 男子は、恐怖に気が動転する。


「うわぁああ。誰かぁー助けてくれーー」


 必死に、大きな声を出すが誰にも届かない。


「クソっ!なんでオレが、こんな目にあわなきゃいけないんだよっ」


 男子は、不安と恐怖で顔を歪めすると、ビニールの向こう側から、男性のシルエットで声が聴こえてきた。


「お目覚めかね?」


 男子は、男性に気づくき自分の声に気づいて、助けに来てくれたのだと思った。


「良かったぁ、助けてくれ」


 だかしかし・・・男子が、安心したのもつかの間。手術着を、着てマスクをした男性がビニールが重なり合う入口を掻き分け、手術道具をワゴンに載せ中に入って来た。


「なんでだい? 君は今から、すごくよい事をするってゆーのに・・・」


「はあ・・・な、なに言って・・・」


 男性が、何を言っているのか理解出来てない男子は戸惑う。男性は、ゴム手袋をしている手で男子の心臓の部分を優しく撫でながら。


「君のコレが、人の命を救うんだよ」


 男子の顔が怖ばりそして、動かない体を必死に動かし泣き叫んだ。


「イヤだぁーー」


 男性は、男子の首元にメスを押し当てた。


「うるさいなぁ。騒ごうが喚こうが、誰もきやーしないよ」


 男子は、涙を流しガダガダと震え後悔に苛まれる。


夕暮れの廃病院の屋上。

 カラスが、血の臭いに誘われ廃病院の屋上に集まって来た。男子の体を、切り開かれさっきまでドクンドクンと、男子の体で動いていた心臓を男性が手に取る。


 男性は、男子から取り出した心臓を、大事そうにクーラーボックスの中に入れた。血まみれになった服と手袋を外し、心臓が入ったクーラーボックスを片手に、死体の中を雑に足で避けながら歩いて行く。


「もう、ここはダメだなー、また新しい場所を、探して貰わないと」


 男性が、居なくなると割れた窓からカラスが飛んで来て、台の上で死んでいる男子の体を啄むついば


 それから数日後。カラスの基地で、黒山の部屋に女性が黒山が座っているデスクの前に立っていた。


 メガネをかけ知的な少女「島成 なぎしまなり(カラス)」が、大きめの封筒を黒山に渡しす。


「遅くなりましたが、頼まれてたモノです」


「ああ 悪いねぇ。急かせてしまって」


「いえっ・・・」


 そして会議室に、みんなが集められ壁にスクリーンが設置されコの字に並ぶテーブルの真ん中に、パソコンが置かれ入口の近くの席に、黒山と成島が先に席に座って待っていた。


 それから光と、リュクが部屋に入ると先に来ていた「神楽坂 健太かくらざか けんた(カラス)」が、緊張しながら座っている事に気づく。


 ちょっと、臆病な健太は光を兄の様にしたい光も、弟の様に可愛いがっていた。


「健太・・・」


 健太は、顔を強ばらせながら光を見る。


「・・・光さん」


「緊張してるのか?」


「はっはい・・・こーゆうのはじめで、僕にできるのか不安でぇ・・・」


 光は、健太の髪の毛をクシャクシャになるほど、頭を撫で回した後。


「大丈夫・・・健太なら」


 健太は、嬉しそうに笑った。


「はいっ!」


 次に無表情で、蓮輝が部屋に入ってきて光の隣に座る。その次に、デカい図体している割にオドオドして恥ずかしがり屋な男子「坂森 かさもり とおる(カラス)」と、お調子者で光より背が低い男子「関田 せき らい(カラス)」が、坂森の腕にぶら下がりながら中に入ってきた。

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