第6話『金髪王子』
昼休み生徒会室の窓側に、大きなデスクがあり壁側に本棚が置いてある。その本棚には、学校の資料が年数事に整理整頓され閉まってあった。
空いたスペースに、二人掛けのソファーが二つテーブルの両側に置かれている。デスクに光が、突っ伏せ寝ていると母親が優しい笑顔で「ひかり」と、名前を呼んでいる夢を見ていた。
しかし突然、あたりが真っ暗になり母親の姿が見えなくなった。光が、「お母さん、お母さん」と何度も呼び探していると、男が母親にキスをしているかのような姿で、現れ次第に母の体がぐったりとなっていく。
そしてその男が、真っ黒でおぞましい目で光の方に視線を向けられ、あまりの恐ろしさに光は冷や汗をかいて夢から跳び起き周りを、見渡し夢だった事に胸をなでおろす。そして椅子の背もたれに持たれ天井に目線を向けた。
——僕の目の前で、母を死神に殺された。それが誰なのかは、知らないけどあの日が
思い出しただけで吐きそうになり、光は口元を手で抑え怯える。
——
ある時、男に『お前は、不幸を呼ぶ白カラス』と、言われた事を思い出し苦渋な顔になった。
——いつか僕も・・・。
生徒会室の外から、扉をコンコンと誰がノックした。それに光が気づき、普段どうりを装う。
「はいっ」
扉が開き1人の女子生徒が、部屋に入って来て光がいるデスクの前に立つ。
「会長・・・先生がお呼びです」
光は、だいたいの予想がつき、呆れため息を吐いて席を立った。
——またぁ・・・あいつらか。転校生に、何もしてなきゃいいけど・・・。
「わかった。すぐに行く・・・」
放課後。光は、生徒会室に問題を起こしたつがるとその友達、悠真と明信を呼び出した。つがる達は、光が座っているデスクの周りを囲むように立っている。
つがる達は、手当を受けているが結構すごいケガをしている姿に、光はかける言葉がなかった。
——あらら、派手にやられたなぁ・・・。
後からやって来た蓮輝が、生徒会室の扉を開けつがる達の姿を見て何で呼ばれたのかがわかり不機嫌な顔をして、部屋の中に入って来た。蓮輝が、デスクの前まで来るとチラッと蓮輝の顔を見てそれから光は口を開き。
——金髪王子って、彼のことかぁ。確かに金髪の王子だなぁ・・・。
「遅かったねぇ。鈴達 蓮輝くん!」
デスクの上に、肘を付き手を絡め光はその上に、アゴを添え目線だけつがるの方を向けた。
「キミ達が、なぜここに呼ばれたか、わかっているよね?」
問題ばかり起こすつがる達に、光はほとほと困り果てていた。蓮輝と、つがる達の態度のでかさに光を苛立だせる。
——こいつら、人が下手に出てやってれば・・・。
数時間前、昇降口の前でつがる達が3人がかりで蓮輝に、殴り掛かったが逆に蓮輝がボコボコにしてしまったのだ。
「キミ達が、学校で暴力行為を起こした事で、生徒会に苦情がきている」
光は、その苛立ちをグッと堪えつつ話を続ける。
「
つがるが、舌打ちをし軽蔑するような目で光を睨んだ。
「・・・チッ。
光は、そんな事を言われ慣れていて、顔色一つ変えない。
「
光は、諭すように話すが、つがるには通用する訳もなく。
「違うところだらけじゃねぇーか!お前らは死神の子、俺ら人間とわ」
頑なに、受け入れようとしないつがるに、光は嫌気をさしていた。
——僕たちだって・・・好き好んで死神の親から、生まれてきたわけじゃない。
光は、理性的な態度でデスクの引き出しから、作文用紙を大量に手に取りデスクの上に置く。
「もういい・・・。キミ達に何を言っても、わかってもらえないようだから・・・。暇つぶしで、問題ばかり起しされてもキミ達と、違って僕は暇じゃないんだ。だから今回は、反省文10枚書いてもらうよ」
つがるが、眉毛を吊り上げ怒鳴りつけてきた。
「はぁっ、暇つぶしだとぉ?」
そして光の胸ぐらを、掴みあげつがるは目けんにシワを、寄せ顔を近づけ睨みつけた。
「ナメたこと言ってんじゃーねぞぉ。テメェー・・・」
光は、つがるの行動にあきれて腹も立たない。
——・・・時間が勿体ない。聞き分けの悪いヤツらには、少しお仕置きが必要だな。
つがるの手を、払いよけ光が席を立ちつがるの隣に移動して。
「そっかぁ・・・。キミ達の気持ちは、ようくわかった!」
光は、わざとつがるの腕を上から下に指をやらしく滑らせるように撫で、光には不適切な笑みを浮かべ口を開いた。
「そんなに、書くのがイヤなら仕方がない・・・それなら体を使って、反省してもらっても、かまわないけど・・・僕わ」
つがる達は、光にやらしく触れられ体が、ゾクゾクっと震え変な事を想像して顔が青ざめる。
「おっオマエ・・・頭おかしーんじゃねぇーの?」
「なぁつがる。こんなもん、適当に書いて出しゃーいいだけじゃん」
「そ、そぉ、早く紙もらって行こぉぜっ!」
そしてつがる達は、乱暴に作文用紙を手に取り慌てて部屋から出て行った。つがる達の反応に、光は思わず笑い声が噴出しそうになり口に手をあて必死に堪えた。
「ぷっ、残念・・・校庭の草むしりを、頼みたかったのに」
蓮輝は、つがる達をからかっている事に気づいて、引いた顔をして光の事を見ている。そして光は、真面目な顔をしてデスクに持たれ掛かり口を開く。
「次からは、彼らに何を言われても、無視をすることだね」
蓮輝は、光の言葉に不満げな顔をする。
「そんな事をしてるから、余計にナメられるだけだろ」
「だとしても、相手にしない事が、ここでやっていくコツだよ」
蓮輝は、そんな甘い事ばかり言っている光の事が気に入らなかった。
——どうして、コイツはあんなこと、言われて平気な顔をしていられるんだ。
その日の夕方。人気のない路地裏で昨晩人を、襲っていた死神がいた。ひとつしか無い街灯が、点滅して電球が消えかけながらコンクリートの地面を照らしている。
死神の足元に、大学生の若い男性の遺体が転がり、今女性の口からアームを吸い取っていた。それを1人の男性が、怯えながら目の前で友達が死神に襲われ死んでいく姿を、ただ見ているしかなかった。
なんとか、その場合から逃げようとするがあまりの恐ろしさに腰が抜けて、まともに立てず地面を這うように逃げるも、死神に頭を鷲掴みにされ。
「ヒィィ・・・っ」
「どこにも、行かせないよーぉ」
そのまま、上に持ち上げられ若い男は必死に抵抗するが、死神にリンゴを握りつぶすかのように、捕まれ強烈な痛みに表情が歪む。
「あ"ぁぁ」
その時、死神の背後から男の声が聞こえて来た。
「ああ、こんなにも喰い散らかしやがってぇー」
死神が、声のする後ろを振り返ると、全身黒ずくめの格好をしあきらかに、その少年よりもたちが悪そうな男「リュク(死神)」が、気だるそうに遺体の前に立っていた。
「はぁっ?」
リュクの姿を見て、死神が掴んでいた若い男の頭を離すと、その間に若い男は慌てて逃げて行く。
「こんなにも、喰うことねぇーだろう?」
「はぁ、人の食事の邪魔しておいて、何言っちゃってんの?」
「めんどくせぇー・・・」
「じゃー、早く帰れよぉ。おじさん」
リュクは、『おじさん』とゆう言葉にカチンときて死神の方に視線を向け、顔を良く見るとまだ若い死神だと気づく。
「ああ・・・なんだぁ、まだ子供もじゃねぇーか、お前・・・」
死神は、子供と言われ腹を立てリュクに飛びかかった。
「オレは・・・子供じゃーねぇー」
「ほんっと、めんどくせぇーガキぃ」
「おじさんに、言われたくないねぇ」
リュクの顔に、死神の蹴りあげた足が来た瞬間、足首を掴みそのまま力いっぱい死神の頭から地面に叩きつけた。
「言っとくが、オレもおじさんじゃねえよ。お兄さんだぁ!」
頭から叩きつけられた死神は、あまりの痛さに頭を抑え地面をのたうち回る。
「いっ・・・いってえー」
リュクは、弱すぎて漠然とする。そしてしゃがみ込み死神を見下ろす。
「そんな生意気な口たたくのは、100万年はえーんだよ!」
「もう、終わったぁ?」
リュクの背後から、聞き覚えのある声にハっとリュクが気づいく。
——・・・光?
そして振り返ると、リュクと同じ格好をした光が立っていた。リュクが、シラケた目線を遅れて来た光に向ける。
「いつから、いたんだぁ?」
「んー、おじさんのあたりからぁ・・・」
そしてリュクが、大きな口を開け唾を飛ばしながら光に怒鳴りつけた。
「だったら、もっと早く出て来いよなぁー・・・!!」
「あははは」
怒るリュクを見て、光は笑って誤魔化す。死神は、上半身を起こし片膝を立て座り鼻血を流していた。
「なんだぁ、またおかしなおじさんが、1人増えてんじゃん」
『おじさん』とゆう言葉を聞き、光は満面の笑みを浮かべ。
「キミには、礼儀ってゆうのを教えないと、いけないよーだねぇ!」
そう言って、光は死神の首根っこを掴み、地面を引きずりながら歩き出す。
「何すんだあー、離せよー」
死神は、左右に体を動かし抵抗するが、光はそのまま歩く。
「大丈夫!僕が、みっちりと教えてあげるから・・・」
リュクは、死神の子供を見て少し可哀想に思えてきた。
「可哀想だが・・・光がああなったら、誰も止められねぇんだぁ。ごしゅうしょうさま・・・」
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