第一章 絳焰の試練 その3
「……へ?」
火はない。完全に消し止められていた。──いや、そんな段階を通り
いきなり
天井が高く広々とした
清潔な朝衣に身を包んだ彼らの後ろで、煤まみれで
柱には
皇帝になってから十年? 朔耀様の父親の在位はそんなにも短かっただろうか?
そもそも、遠く最前の
朔耀様の父親ではないように見える……?
「──煙くさいな? なんだ、この
彼らは異様なものを見る目をしていた。わたしも
鼻の奥には木と油の燃える
意味がわからない……
「衛士、一体何をしていた? お前たちの仕事はなんだ?」
「も、申し訳ございません。お前、どこから入ったんだ!?」
青い官服を来た男に乱暴に腕を引かれ、
わたしはなすすべなく連れて行かれようとしていた。けれど、それを
「待て! ──翡翠、なのか?」
「朔耀様?」
聞き覚えのある声だった。でも、聞きなじみのない低い
わたしの
わたしの腕を
「……朔耀様、なの?」
前後に十二本の玉の
自分が煤にまみれているというだけで、
逃げようとすぐ腹が決まった。背を向けて走り出し、耳を
けれど、地を
「行くな」
近くで見るとますます神仙の
「
「きゃあっ!?」
美しい青年がわたしの
わたしは煤まみれだし、それ以前に何もかもがふさわしくない。
「翡翠が生きて戻ってきてくれて、よかった……!」
けれど聞き慣れない低い響きに混乱した。
本来わたしなんかが
同時に、ここにいるのは確かにわたしが約束を
「どうして……なんで朔耀様がわたしより大きいの……!?」
「っ、そなたが……っ! 十年も、帰って来なかったからだッ!」
一体いつの間に、そんな時間が
もしかして、わたしは
火事に
それにしては、
目覚めたわたしがどうしてここにいるのか、ここがどこなのかもわからない。
けれど、
昏睡状態から
わたしが母様のようにふるまったから、朔耀様は母様を
朔耀様の望みは
それは、かつて
できることなら、わたしも母様に帰って来てほしかった。
「──ただいま、朔耀様」
この美しいものに触れていいのだろうか?
迷いながら、恐ろしい気さえしながらも、朔耀様の身体に
広くなりすぎて腕が回りきらない朔耀様の身体に
わたしだったらこう言ってほしい。わたしだったらこうしてほしい。
そして、もしもわたしが朔耀様の立場なら、こう言うだろう。
「よくぞ
朔耀様なりの『おかえり』は
けれど、いつの間にか大人になった朔耀様の地位にはそれがふさわしい物言いなのだろう。
百官の
華耀後宮の花嫁 時を越えたら、溺愛陛下⁉ 山崎里佳/角川ビーンズ文庫 @beans
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