おししょーさんっ!ニンゲンさんっ!

みやちゃん

第1話 村の少年 グラールト


僕の住んでいるところから見える大きな城には怪物が住んでいると言われている。


その城へ入った者は酷い目にあわされ、焼かれて食べられると噂になっている。


僕は、そんな屋敷にみんなには知られては行けないある秘密を持っている



______

サーガント村



「グラールト!なにボーッとしてんだい!さっさと薪を持ってきな!」

静かでのどかな村に、ある獣人の声が響く。

「わっ!ごめんなさい!」

グラールト、と呼ばれた獣人の少年は大声に驚いたのか腕にたくさん抱えていた薪、数本を落としてしまう

「あーあ、落ちちゃった…」

慌てて地にひざまずき、落ちた薪を拾って腕の中に戻していく。

「……だめだ、あと一本が拾えない……」

残りの1本を拾おうと懸命に手を伸ばしていた。

仕方ない、もう一往復しよう

と諦めたグラールトは立ち上がり、ここから少し遠くの納屋へ向かおうと木の棒に背を向けた。

「まったく、ほんとにどんくさいわねー」

と、呆れたような声。

グラールトには届いていないようだ。

その人物は親切に落とした薪を拾いグラールトを追いかけて

「忘れ物」

と言って後ろからグラールトの頭をコツン、とその木の棒で小突いた

「いたっ、なにするのさ」

グラールトが振り向いて、暴力を働いた人物を見る。

「あっ、アーリン」

「ほんと、我が幼なじみはいつも鈍臭いわねー」

片手で薪を持って腕を組んで立っているのはグラールトの幼なじみである同じく獣人のアーリンだった


「拾ってくれたのは嬉しいけど叩かないでよー」

「いいから、ほら早く持っていきなさいよ」

痛かった、と眉間に皺を寄せるグラールトに対しアーリンは彼を殴った薪を乱暴に腕の中に押し込める

「一応、ありがとうアーリン」

「一応は余計。ほら、あんたのとこのおばさん待ってるからさっさと行きなさいよ」

「うん、じゃあ」

少年はそのまま納屋の方へかけていく。


ここ、サーガント村では獣人族が静かに、時に怒鳴り声が聞こえるような平和な村であった。

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