第57話
畳の上で大の字に寝転ぶ妹の姿を見下げ、
暗示が弱まっている。
今は咄嗟に麻酔を使ったが、幸い、これ以外にも手元に1本だけ薬剤が残っている。
後でソレを使って暗示をかけ直さなければ。
ただ、ほかのアンプルは全て
高校入学まで待てなくなってしまった。
本物の眞子は連絡を取れないように細工しているが──
無理矢理にでも帰国を促し、早めに片付けてしまうか?
それよりも。
それに、
その人物たちの目は誤魔化せない。
いっそ引越しして、誰も知らない場所に移動すべきか。
そうだ。その方がいい。
ここには、李子や眞子を知ってる人間が多すぎる。
引越しは
どのみち引っ越す予定だったのだ。
それが少し早まるぐらい、なんて事はない。
そもそも、
日本人女性の平均値程の身長があれば、成り代わるのは簡単だったはずなのに。
確かに、出会った彼女は小さいなとは思っていたが、車椅子に乗っていたし歳をとれば背も縮む事もある為、あまり重要視していない事柄だった。
まさか中学時代は、小学生並みに小さかったとは。成長期が遅すぎる。
暑くて集中して考えることができない。
彼女は前髪をかきあげ、コメカミより少し上の生え際の辺りを微かに押し込んだ。
ピピっ
微かな電子音がし、
彼女は、そんな顔の
そして、顔を剥がす。
「はぁ……スッキリした」
その下からは、
ついでといった感じで、首にしていたチョーカーペンダントも外す。
そしてその下、喉仏あたりに貼られた肌色のシールのようなものも剥がした。
その瞬間、顔どころか声も変わってしまう。
「流石に連日付けっ放しはキツイわ」
手にしたそれらを、眠る
「さてと。ここからが本番ね」
女は、横たわる
「アンタの人生、丸ごと奪ってあげるわよ」
口の端を持ち上げてニヤリと笑うと、彼女は
そして考える。
盛大なこの計画の締めについてを。
例え私の居た事実が消えても、私自身が残って讃えられればそれでいい。
だって、私の名前が残らなくても、私の存在そのものが残るのだから。
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