第48話
工場内に響き渡った破裂音に、
「あの野郎ッ……」
音の主がタカだと予想した
時間跳躍には、火器はどんな化学反応を起こすか分からないから危険だと言ったのはタカだった。
だから泣く泣くお気に入りの銃火器を全て置いてきたというのに。
あとで見てろよ、タダじゃ済ませねぇからな。
タカを殴るには、まずこっちを片付けなければならない。
さっさとカタがつけられると思っていた戦いは、相手が地の利を生かす事によって遅々として進まなかった。
子供だと侮り、いたぶって殺したいという嗜虐的思考が邪魔をしたのだ。
彼の身体は、ぶつけたれたトマトやカラーボールで色取り取りに汚れていた。
「逃げてんじゃねえよ腰抜けが! 男なら出てこいよ!」
近くにあったロッカーを殴りつけながら
チラリと視界の端に写った少年──
が──
バインっ
足が何かに取られてすっ転ぶ。
しこたま打ち付けた腹を抑えつつ立ち上がり、足にくっついたソレを外す。
塩ビパイプを使ったお手製のトラバサミだった。
「チクショウ!!」
足から外したソレを地面に叩きつけ、
その瞬間、背中に衝撃を受けて前のめりに手をついた。
床に転がるジャガイモ(生)を憎々しく目で追い、怒りで沸騰しそうな頭をもたげる。
「ふざけんなゴルァァァァ!!」
地面に拳を叩きつけ、
先程から終始この調子である。
子供騙しのお手製罠にかかっては、同じくお手製のポテトガンで狙い撃ちされる。
完全に相手のペースに乗せられて、
何本か用意したポテトガンは、既に何回か撃っては充填しを繰り返している。
そろそろ銃身にしたパイプが保たない。
破裂して
充填には
が、そろそろそれも限界に達しようとしていた。
相手が疲れて油断したところを、スタンガンでトドメを刺すつもりだったが、
ヘアスプレーを充填したポテトガンにカラーボールを詰め込み、
撃ったばかりのポテトガンは、銃身が熱くなっている為、冷まさないと暴発の恐れがあるのだ。
「
殆ど囁きのような声が耳に届く。
声のした方へと振り返ると、
「今詰められている分で球は終わり。予定の位置に配置してあるよ。ただ、罠はもうこれだけ。どうしよう……」
しかし、作れたスタンガンは3つのみ。
今手元にあるのは1つだけ、しかもそれは使い捨てだった。
一度スイッチを入れたら、放電しつくすまで止まらないし、その時間も長くはない。
外したら最後である。
確実に
「俺が囮になるから、
そう言って、
「囮にって……どうやって?」
「アイツは遠距離武器を持ってない。だから俺を殺すには近づくしかない。俺を殺そうとした、その瞬間を狙って」
「そっ……そんな事出来ないよっ」
「出来なくても──」
その瞬間、またロッカーを殴りつけた音が比較的近くからした。
「やるんだ」
「見つけたぞ小僧!」
動く
鍛え抜かれた太い腕が、走る
広がった粉を顔面で浴びて、
「目がァ! 目がァァ!!」
何処かで聞いたセリフを叫んで狼狽する
ガチャガチャのケースに小麦粉を詰めた、お手製の煙幕だった。
「逃げろ!」
その言葉に呼応して、
「クソがぁ!!」
目が一時的に見えなくなった
彼女は衝撃で床に倒れ込み、手にした最後の罠を落としてしまう。
手応えを感じた
床に突っ伏した
「うぐっ!」
しかし、歴然とした力の差はどうしようもなく、上を向かされた
「舐めた真似してんじゃねぇぞ」
男の生暖かい息が顔にかかって、嫌悪で
「お前は──」
しかし、熟れたトマトでは牽制にもならなかった。
「お前はそこで大人しく見てろや」
今がチャンスとポケットに手を入れようとした
彼女の両手首を片手で鷲掴みにして上へと持ち上げた。
「姿見せねぇと、コイツがどうなるか分かんねぇぞ?」
空いた方の手で、
周囲を見回しても、
「そっか。いいんだな。じゃあしょうがねぇ」
仰々しくそう言うと、
何をしようとしているのか
その瞬間、
それを見た
「スタンガンか? 残念ながら俺には効かねぇよ。この服がただの服だと思ったら大間違いだ。
ま、使うチャンスもなくなったけどな」
そう鷹揚に告げると──
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