例え私が──ても、

SF-003

　暴力事件発生中。介入不可。

　暴力事件発生中。介入不可。

　暴力事件発生中。介入不可。

　行動起因判定処理で警告が発生していました。

　そこは、私が起こす行動の基準となる物事を判定する中枢装置です。

　本来であれば、暴力事件に関わる全ての事象から遠ざかる必要があります。

　例え借主に危険が及んでいたとしても、手出しは無用です。

　手出しをすれば、事件に巻き込まれて企業が損害を被る恐れがある為です。

　私は恋人（スウィート）オートマトン。

　疑似恋愛をする為だけに生まれた、ただの道具。

　そこに『意志』など存在し得ないのです。

　なのに──

　行動起因判定処理以外のところで、それは起こりました。

　これが、人間で言うところの『咄嗟に』『無意識に』というものでしょうか？

　私はオートマトンです。

　全ての行動起因は中枢処理装置で判定されます。

　けれども──

　遠くに立つ男が手にした機械が、目の前にいる男性の命を脅かすものだと認知した瞬間、

　私を動かしたのは、行動起因判定処理以外のところでした。

　そこは何なのでしょうか？

　私には分かりません。

　でも、思ったのです。

　例え私が壊れても、必ず貴方を守ります。

　だって、貴方が私の初めての人だから。