第45話
『男の目を潰せ』
音声入力に従って、
「ッ?!」
違和感を感じていた
しかし、
『足を掛けて男を転ばせろ』
更に飛んできた命令に素直に従い、
腰を寄せられていたため一緒に床に倒れこんだ。
『マウントとってボコボコに殴れ』
倒れた
「
しかし、彼女は不気味なまでに笑顔をたたえたままで口を開かない。
ひたすら
その様子を離れた所で隠れて観察しているのは、
当初、
今姿を現すのは得策ではないと感じたからだ。
恐らく相手は最後の決着をつける為に、殺しにかかってくるかもしれない。
そんな相手に勝つ為には、相手のペースに乗せられてはダメだ。
自分のペースに持ち込まなければ。
恐らく、あれが
あの男と会うまではまるで普通の人間のようだったと彼は言っていたが、今は機械じみた動きをしていると
そして、少し離れた場所でニヤニヤしながら2人を見ている男──タカ。
彼は手出しする事なく、何やらブツブツ独り言を言っていた。
その様子を見てふと思い立った
声を掛けてもダメなのだと気づいた
勢いに乗じて転がりつつ、掴んだ腕を引き寄せ彼女の身体に足を絡ませて、床にそのまま叩きつけた。
腕
しかし、人間とほぼ同じ骨格を持つ
なんとか抑え込めて息をつく
この隙に、どうしたら良いかを考えようとした。
しかし──
『無理矢理でも逃れろ』
それにより、
動こうとする
「やめろ
バヂンっ
くぐもった何かが弾け飛ぶ音。
その瞬間、
転がって
解放された事により、
ダラリと変な方向へと垂れ下がる右腕に首を傾た。
信じられない事態に、
傷つけるつもりはなかったのに、まさかあの状態になってまで動こうとするとは思わなかったのだ。
普通の人間なら、痛みで動けなくなる筈だった。
それで彼は痛感してしまう。
『再度男に近づけ』
その命令により、
そしてまた笑顔を張り付かせて、怯えた顔をする彼の方へと近寄って行った。
「
命令されたら素直に従う機械である。
恐らく、あの男は
そちらの方の命令を優先させる事は当たり前なのだ。
だけど──
彼女の、自分と一緒にいた時の笑顔が作り物だったとは思えなかった。
そして──
『男の喉を潰せ』
その命令は、
「そりゃ聞けない命令だねェ」
タカのインカムに、するはずのない声が届く。
コロコロと楽しそうに笑う、妙齢の女性の声。
驚いて
「あらあら。もしかして私、何か邪魔をしてしまったかしら?」
更に嘲笑する声が聞こえて、タカは耳からインカムを毟り取って床へと叩きつけた。
「どこだババァ!!」
聞き覚えのあるムカつく声に、タカは一気に激昂する。
しかし、声の主は現れなかった。
「クソババァ……ッ!」
タカは部屋の隅へと行き辺りを弄る。
見つけたLANの接続口に荷物から取り出したコードを指して自分の端末にも接続した。
キーボードを叩き、構築されたまま放置されている社内LANへ侵入し、監視カメラを起動させる。
「どこだっ……」
監視カメラの映像を確認し、居るはずの女性の姿を探した。
しかし、カメラには目的の人物は写っていなかった。
イライラしながら端末を操作するタカの手が止まる。
突然、メッセージがポップアップしてきたのだ。
『この時を待ってたよ』
そのメッセージが出た瞬間、タカの端末の画面が同じエラーメッセージで埋め尽くされる。
操作しようにも、キーボードの操作も画面タップも無効になっていて、手も足も出なくなってしまった。
自分の端末が、勝手に操作されて初期化されていく様を、愕然と見ているだけしかできなかった。
「今の内だよ」
笑顔のまま固まっている
驚いて周囲を見回すと、物陰から手招きする
「様子はどうだい?」
その言葉に、
「もう、彼女じゃないのかもしれない……」
悲しげに
しかし、
いくら機械だとはいえ、突然何もなく変わる訳はない。
むしろ、機械は何かしないと変わらない。
「前の彼女と、何か変わってる場所はないかい?」
そう言われて、
しかし、前との違いはないように思う。
もしかしたら内部的に何か変えられたのか──
それだと自分にも分からない。
ピピッ
電子音がする。
その瞬間、糸を引かれた傀儡のように不自然に起き上がる
首を巡らせて周囲を見回し、
「排除します」
抑揚のない声で一言そう告げると、突然
「見つけたぞババァ!」
その背中に、ヒステリックな声が浴びせかけられる。
スチール製の机の上に乗ったタカだった。
オーケストラの指揮者のように両腕を不自然に広げている。
いつのまにか黒の手袋をしていた。
「ぶっ殺してやるッ……!」
タカは両腕を
その瞬間、彼の背後から黒い小さな物体が6つ飛び出し、猛烈な勢いで
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