第44話
待機命令がやっと解除され、
すっかり陽も落ちて鈴虫やらカエルやらが盛大に鳴いている。
大きな月が、雲のない夜空にポツリと存在していた。
明るい月が地面に陰を落とす。
落ちた影は濃く、自分の足元に広がる
「
色々な機材が入った大きな鞄を抱えた
「何も。ただオートマトンを壊し、
「周りをチョロチョロしてるヤツらは?」
「始末しろ」
タカの方へと振り返らず、端的にそう告げて前だけを見ている
タカと
「ま、許可されてんなら思いっきり
肩をゴリゴリいわせて回しながら、
暫く行くと、
「ちょっと待ってろ」
工場近くの電柱の下で立ち止まり、上を見て工場から伸びる電線のうち1つを確認する。
「アレ出せ」
コードを引き出してグルグル振り回すと、上に向かって
コードの先端が鉤針状になっているソレは、工場から伸びる1本のコードに巻きつく。
機械からもう1本のコードを引き出し、
しゃがんで膝に端末を置き、画面を開いてキーボードをカタカタと叩くと、いくつかのウィンドウがポップアップして黒地に白の文字が大量に流れて行った。
「監視カメラが動いてやがる。あのババアだな……」
再度キーボードを操作して監視カメラの制御を断ち切った。
監視カメラに接続していた先を辿ろうとしたがブロックされる。
「チッ」
舌打ちし、様々なコードを流すが全て弾かれる。どうやら物理的に切断されたようだった。
「取り敢えず、向こうの監視は遮った。スマホの接続も全部ジャックしてる。これで連絡方法もなくなった筈だ。光学障壁もセットしとく。いいぜ」
電線に付けていたコードを外しながら、タカは後ろにいた2人へと声をかけた。
耳を塞ぎたくなるような金属の摩擦音がして人1人が通れるほどの隙間が出来ると、
中には灯りが点々とついており、所々に大きな影を作っている。
建物に一歩入った時点で立ち止まり、
点々とした灯りが所々に大きな影を作っている。
と、正面で
建物の最奥。
妙に積まれた机やロッカー、棚などの隙間を縫って行ったその先に──
カッと目を見開いた
高く飛び上がった
「
先走る仲間に危機感を覚えた
監視をブロックしても、それ以外にも準備されている可能性があるからだ。
それを証拠に、机やロッカーの積まれ方が意図的だ。
重い体でダッシュして、先を行く
「2人とも先走り過ぎだっての」
最後にタカが、端末片手に部屋の周囲を見回しながら入ってくる。
完全に中へと入ってから光学障壁装置を展開させた。
これで、工場周囲へ音や影が漏れることはない。
「
男の声がする。
視線をそちらへ向けると、朝方ボコボコにした男が驚いた顔をして立っていた。
タカはニヤリとする。
この男──
タカの目が嗜虐的に輝いた。
端末を弄ってからインカムのスイッチを入れる。
通常、仲間同士の通信用として使っているソレの接続先を、
そして、周りには聞こえない程の声量で呟いた。
「男に笑顔でゆっくり近寄れ。こっからは許可するまで返事すんな」
言われるがまま、
「
返事もせず、貼り付けたかのような笑顔を崩さない
しかし、どうオカシイのか分からず、目の前まで歩いてくる
手を伸ばせば、直ぐにでも触れられる位置まで辿り着いた時──
『男の目を潰せ』
タカの口から残酷な言葉が紡がれた。
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