第25話
興奮冷めやらなかった
──鼻にティッシュを詰めた無様な姿ではあったが。
「先生……それって……」
「やはりそうでしたか」
納得の声を出す
「知ってたの?! なんで言わなかったの?!」
「聞かれなかったので」
しれっと答えた
「オートマトンは一目でそれと分かる身体的特徴を必ず持っています。正確に言うと耳です」
「見慣れていないと判別は難しいのかもしれないですね。具体的には──」
「いい。説明いらない」
ピシャリとそう止めたのは、こめかみを抑えたままの
「貴女もオートマトンだとして……それをどうやって信じ──」
「はい。私にもコントロールパネルがあります。ご覧になりますか?」
そう言って
「ダメダメダメダメ! 女性は! 人前で! 服を捲らない!」
「そうですか」
「彼女がオートマトンだって事は信じるわ。で、なんで彼女はここに居るの? 彼女も
「いいえ。私は気づいたらここに居ました。それまでの記録はありません。借主情報も
説明途中の
「
「ああ……走ったりしたからね」
そう呟くと、
「ごめん。コンセントを借りてもいいかな。……電気代は後日返すから」
「え……いいっすよ。電気代も別に……」
「親から怒られるよ。かなり電気代かかるから」
「いや、ウチ工場なんで。多分大丈夫っすよ」
そう言い、
すると
「ありがとうございます」
するりと立ち上がり、指し示されたコンセントの所まで歩いていくと、コンセントの隣の壁にしなだれ掛かる。
行動がいちいち艶っぽい。
彼女はゴソゴソと自分の背中を弄ると、一本のケーブルを取り出して、そのコンセントに挿した。
「では
「うん、おやすみ」
ニッコリと微笑み、
その様子を見ていた
「……60年後も、現代と同じ型のプラグなんスね……」
なんとも不可思議な光景だなと
人と問題なくコミュニケートでき、自立歩行が出来る程の高性能の機械が、冷蔵庫と同じという──彼の倫理観が揺らぎそうな出来事が、目の前で起こっていた。
「恐らく、ですが」
「
それを聞いて、
「あれ? じゃあ、あなたも充電が必要なの?」
「はい」
「あ、じゃあ、そっち使っていいよ」
しかし、指し示されても
「……
彼には珍しく、言葉を濁す。
「充電しなくていいの?」
「……」
先程と変わって言い淀む
「今、どれぐらいバッテリーが残ってるの?」
「お教え出来ません」
「なんで!」
それでも
「もしかして、プラグの形が合わないんじゃないの?」
ついでに、また鼻血出るよ、との言葉付きで。
それを聞き、
「はい。それもあります。また、例えこの時代の工場用高電圧コンセントでも、1時間に充電出来る量は、私の稼働電力の数%程度です。
どんだけバカでっかいバッテリー積んでんだ……
「でも、しないよりマシなんじゃないかな。……あ、でもプラグの形か……」
「ちょっと充電ケーブル見せて」
ちょっと飛び上がる
白いランニングシャツも脱ぎ捨て、
自分の腰骨辺りに指をめり込ませると、カチリという音が彼の腰のあたりからする。
「リールコードの横にハッチがあり、中に様々な形式の変換器が入っています」
その言葉に導かれ、
いくつかを取り出し、
「……あ」
その中の一つを見て、彼は声を漏らした。
「多分、コレなら使えそう」
「これ、ドイツのプラグに似てる」
次第に饒舌になっていく
「多分、そう。待って、工場の倉庫に変換器転がってるはず。ちょっと見てくる」
そう言ってスクリと立ち上がって
「
あ、コレ喜んでるんだ。
よく分かったな。
「さて。宙吊り問題を片付けちゃいましょうか」
今までやり取りを静かに見ていた
「あのオートマトンはいつから貴方と一緒に居るの?」
真剣な眼差しを向けられた
「夏休み前、7月に入ったばかりの頃だったと思う。だからそろそろ一ヶ月になるのかな……」
そんな前から
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