HF-F01-001

 それはもう、悪夢という名前ではない。



 此の所毎晩毎晩見る過去の映像。

 詳細まで覚えているそのシーンが、何度も何度も繰り返し、夜目を瞑ると再生される。


 まるで今、それが目の前で繰り広げられているかのように。


 毎晩毎晩見るにも関わらず、毎回毎回恐怖や何も出来なかった無力感、そして果てしない憎しみを感じる。



 まるでそれは、脳に刷り込むかのように繰り返される。



 半壊した身体。

 人工皮膚が剥がれて剥き出しになった骨格。

 血なのかオイルなのか分からないテカテカ光った液体。


 恐ろしい形相で自分に伸ばされる手。


 ヤメテ

 コワイ

 コナイデ

 サワラナイデ


 いつも、自分の叫びで目が覚める。


 そう、それは悪夢ではない。


 過去に起こった純然たる事実。

 ただそれがフラッシュバックされるだけ。

 その時感じた感情が夜な夜な繰り返されるだけ。


 ──私に触るな。


 いつものように、彼女は自分の身体を抱きしめて震えを止めた。


 そして、いつものように考える。


 例え私が──ても、──────。


 だって、──────なかった。

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