SF-001

 私達には、明確なる『意志』というものが存在しません。



 よって『好み』も存在しません。



 人間は、誰しもが意識無意識関係なく、

 脳のシナプスの繋がり具合、そして過去の記憶により、思考パターンに偏りが生まれ、

『好み』を生成します。


 その影響力は強く、

 本能に強く結びついたそれは、時として論理的に愚かとしか言いようがない判断も平気で下させてしまいます。


 倫理観という、時代によって酷く揺らぐその価値観も、その時存在する大多数の人間の『好み』により、さもそれが絶対正義のように決められます。



 私達には、明確な『好み』は存在し得ません。



 それは、過去の成功体験などに裏打ちされて放出される脳内麻薬を受けた、あくまで『感覚』でしかありません。



 私達には、『感覚』がないのです。



 でも──



 は、貴方のその、顔に変な皺が寄る歪んだ『笑顔』という表情表現を



 何度も見たいと、判定してしまうのです。




 例え私が──ても、──────。


 だって、──────だから。

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