第14話
和モダンでお洒落な居間に鳴り響く警報。
似つかわしくないというより、違和感しかない。
ここは
この人、何を目指してるの??
この時代に完璧とは言えなくても、こんなセキュリティを自宅に施してる人間が何人いる?
しかも、別に資産家でもなんでもない、ただの団塊世代の老婆なのに──
「多分この音で逃げたかと思うけど、まーちゃん見てくれるかい?!」
いつの間にか、
「あのっ……これ、なんなんですか?!」
「何って……だから、庭に裏から侵入された時の警報だよ!」
「センサーでも張り巡らせてるんですか?!」
「そうだよ! 一人暮らしの女の
フンっと鼻息荒く答える
そこで、
「お婆ちゃん! 私も時々、面倒くさいから庭から入ってきてたよっ?!」
「そン時も警報鳴ってたんだよ! ただ、アンタは侵入する前から大声でいつもアタシの事呼ぶから、すぐ音を切ってたのサ!」
「そうだったんだ……なんか、ごめんね?!」
「今はそれどころじゃないよ! まーちゃん!」
「あっ……はい!」
再度呼び掛けられて、
カーテンと鍵を開けて、恐る恐るサッシに手を掛け──
ガシャアアアン!!
あまりの衝撃に、
全く予想だにしていなかった事態に、その場にいた全員が身を固くして動けなくなった。
ガラスの破片とともに、窓から侵入してきたソレは、ゴツいブーツでバリバリと破片を踏みしめながら、ゆっくりとした動きで部屋の中に侵入してきた。
大きな身体を暑苦しいグレーの迷彩服で包み、黒いグローブとブーツ、そして沢山のポケットのついたベージュのベストで完全武装したその男は、サングラスで視線を隠しつつも、首を巡らせてその場にいる人物たちを確認していった。
「誰だいっ?!」
一瞬、驚きのあまり固まっていた
サングラスで半分顔が隠されたその姿を見て
「さっきの変態かい?! さっきも言ったけど人違いだよ!!」
しかし、男は腕で箒を受け止め、そのまま掴んで自分の方へと引き寄せた。
その力強さに
しかし、体勢を崩されたところを男に肩を強く押されて横へと倒れ込んだ。
「お婆ちゃん!」
咄嗟の所で
が、チビな
そして、横に倒れ込んだ
「……まだなようだな」
男は掠れてひび割れたよう声でそうポツリと呟くと、倒れた
その瞬間、警報音が突然止まった。
「ババァが、粋がりやがって……」
妙に甲高い引きつったかのような、人を不快にする声を発しながら、もう1人の男が破壊された窓から中へと土足で入ってきた。
首にヘッドホンを下げた、妙に痩せぎすの男。
ヨレヨレで襟首が伸びた黒いTシャツに、ダボついたダメージジーンズ。
青白い顔には無精髭がまだらに生えており、着ている服も相まってダラシない印象を与えた。
「
頭をガリガリ掻きむしり、忌々しげにそう吐き捨てた。反対側の手には、そこそこ大きなニッパーを握りしめている。
「コードを切ったのかい……フン。そろそろ無線型に変えようかと思ってた所さ。変えるキッカケをくれてありがとよ」
「手順を踏まずにセンサー切れば警察に通報がいく仕組みさ。じきここに警察が来るよ。
今なら見逃してやるからさっさと帰りな」
立ち上がりつつ、背中に
片手で
「そんな機械ドコで売ってるの?! ホームセンター?!」
こんな状況に危機感なくそう言うのは
男たちの後ろでこっそりと、何か武器になるものを……と探していた
その様子に気づいた
「私が作ったんだよ。さ、アンタたち! どうすんだい?!」
男たちに後ろを
2人の男と対峙しながらも全く怯えた様子も見せない
「団塊老害が。邪魔をするな」
グローブを着けた両手で一度拳を突き合わせると、迷彩男は半身を引いた。
殴られる──
そう直感した
こんな大男に殴られたら、年老いた自分はひとたまりもない。
しかし。
彼女は退くつもりはない。
奥歯を強く噛み締めて、その衝撃耐える準備をした。
「やめてよ!」
その瞬間、
迷彩男は、予想だにしなかった
そして片手で
「重罪人のクセに、一丁前に正義漢気取りか」
憎々しげにそう吐き捨て、空いたもう片腕を振り上げた。
「やめなさい!!」
後ろで隙を伺っていた
驚いて手を止めた迷彩男だが、すかさず痩せぎす男が
「お前はそこで見てろや」
下品に唇を引きつらせて、床に転がった
痛みに声を上げつつも、横目で自分を踏みつける男を睨み上げた。
「覚えてなさいよ……」
歯を食いしばりながらも、そう悪態つく。
「ぐぅ……げほっ……」
首を掴まれ、息が詰まってきた
声も上げられず、掴む男の手首を引っ掻くがグローブ越しでは効果もなく。
「りっちゃん!!」
床に再度転がされた
心配げにその顔を覗き込んで、悔しそうに唇を引き結ぶ。
「
悲しげにそう一言呟いた。
抵抗していた
真っ赤だった顔が、逆に青白くなり始めた。
「りっちゃんっ……」
「
それに呼応するかのように、
「だ……ダメっ……」
やっと絞り出た
「声をかけても応答がない為、勝手に入らせて頂きました」
低くて渋い声。しかし、場違いにノンビリとした印象を与えるその声が、居間の入り口から発せられた。
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