第11話
夕飯時を超えた頃。
けたたましく連打される呼び鈴の音に、
ドアホンのモニターで誰だか確認していたので、
そこには、両手に靴をぶら下げて焦った様子の
「
手にした靴を
「あ、お姉ちゃん。おかえりー」
「
「何か大変な事が起きたって聞いたけど、アンタ大丈夫だったの?!」
頭の先から足元までを見渡し、ほっと安堵のため息を漏らした。
「だいじょうぶだよー。お姉ちゃんは相変わらずだなぁ」
姉はいつでも相変わらず心配性だと、自分がこの家に来るまでどんな目に遭ったのかすっかり忘れて
年が離れているせいもあるかもしれないが、
ちなみにそのイタリア車は、
「まーちゃん。言ったろう? 大丈夫だって。心配しすぎだよ」
「どうせ何も食べてないんだろう? アンタの分も作ってあるから、今日は家で食べて行きな」
そう言いつつ、
途中、何か言いたげな
「よっちゃんも良ければ食べて行きな」
「あ、でもお家に──」
そう
「大丈夫です。色々済まして来てますんで」
ふぅん、と思うところがありつつも、
「
居間のテーブルの前に座った
なんで私に? と疑問に思った
「なんで私じゃなくて
「だってアンタの説明じゃ、擬音多いし順番バラバラだし要領を得ないじゃない。分かりにくいのよ」
ぐぅの音も出ずに黙る
彼女は困った笑顔で
「
その場であった事そのまま伝える。
本当に? という言葉が返って来ると思っていたが、
「そっか……だからテーブルが壊れて畳が歪んでたんだね」
そしてそのまま続ける。
「どんな男だったか覚えてる?」
少し前のめりになって聞く
まさか一片の疑いもなく信じてくれるとは思っていなかったからだ。
「えと……凄く大柄で……髪は短くて黒かったと思います。あとは……突然で、よく覚えてないです」
折角信じてくれたのに、上手く説明できず
すると、そこに
「私覚えてるよ! 多分身体は2m近いんじゃないかな?! 無駄な肉なくて筋骨隆々って感じでゴリゴリに鍛えてそうだった! 口の周りに髭が生えてたけど綺麗に整ってたし、年は40近いんじゃないかなぁ。多分だけど!」
まるで、目の前にいるかのようにスラスラ答える
「そうだなー。プロレスラーで言うと──」
「ストップ。例えられても分かんない」
止まらない
この話はきっとズレる。
止めなければそのままプロレスラーの話にシフトチェンジする。そんな予感がした為止めた。
「
人の好みって不思議……
そう
クラスメイトがアイドル雑誌を広げてキャイキャイしている中、一人週刊プロレスを読み
そんな姿は嫌いではなかったが、内心どうしてそんな事が出来るのかと呆れてもいた。
「うん。大好き」
満面の笑みで大きく頷く
むしろ彼女はアイドルに色めき立つ気持ちの方が分からなかった。
あんな、男だか女だか分からない細面にヒョロヒョロの身体のどこがいいのだろうと。
ただ、人の好みは千差万別。逆に『棲み分け』のようなものだと、
人間すべて違うのだから、求める物も違うハズ。同じ訳がないのだと。
その考え方自体が、クラスの中で珍しいのだと、
『同調圧力』
彼女は良い意味でも悪い意味でもそれを感じる事がなかった。
何故なら、
両親は愛着のあるものは古い物でも、コストを掛けてでも大切にしていたが、新し物好きな
そして
「その大男、今何処にいるのか分かる?」
ハッと現実に戻り、首を横にブンブン振った。
「分かんない」
「何か、
そこまでを聞き、考え込む
そんな
「そう言えば、お仕事大丈夫なんですか?」
今日のように早く帰って来る事など、ほとんどしない筈なのに……
「あ、お姉ちゃんは長期休暇で日本に戻って来てるんだよ!」
考えに
「日本に戻ってきてる?」
言葉の表現がオカシイ気がして再度問う
自分の言葉が足りない事に
「あ! お姉ちゃん、今年の頭からアメリカ勤務になったの! ずっと向こうで仕事してたんだけど、夏休みを取って戻ってきてくれたんだ! お母さんたち旅行に行ったじゃん? その間だけ、私が一人にならないようにって!」
「あら? 夏休みで戻って来てるから、両親が旅行に行ったんじゃなかったのかい?」
台所から、煮浸しと豆腐サラダを持って出てきた
あ、と気付いて手伝おうとした
「あれ? そうだったっけ?」
自分の記憶違いか? と
「そんな事より、その大男が誰で、今何処にいるのかが気になります」
「それが分からないと、オチオチ家にも戻れません」
横に携えていた鞄から2つのスマホを取り出し、それぞれを
「あ! 私のスマホ! ありがとう!」
「ありがとうございます。助かりました」
2人は嬉しそうに受け取り、早速起動させてメッセージアプリにメッセージが来ていないかどうかを確認した。
「私、ちょっと電話してきます」
今度は自分のスマホを取り出して操作しつつ、居間を出て行った。
「りっちゃん。まーちゃんは仕事は休みじゃないのかい?」
何処に電話しにいったのか気になり、知っていそうな
「んー。どうなんだろう。時々本社? ってところに顔出しに行くって言ってるよ」
スマホを
そして
その後──
揃えられた夕飯の豪華さに
両親が旅行に出た後からコンビニ飯ばかりだった
お腹もいっぱいになり、一段落した空気が居間に流れた頃の事。
そろそろ家に戻ろうか、そういった話をしている最中だった。
穏やかな空気を破壊する警報音が鳴り響いた。
ビックリしちょっと飛び上がる
突然の大きな音に衝撃を受けて耳を塞ぐ
何事かと左右を見回す
そして
「全く! 今日はなんなんだいッ!?」
急ぎ立ち上がり、
「お婆ちゃん! またハッキング!?」
苦しそうな
しかし、
「違うよ! 誰かが庭に裏から侵入したんだ!」
ハッキングの時とは違う警報音と
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