第12話
目の前には、真っ黒な作業着で身を包み、サングラスをかけた1人の大男が、礼儀正しく正座している。
爺ちゃんが鼻息荒く買って来たのは、あまり実用的とは言えない、見た目重視のツナギの作業着であった。
そして何故かサングラス。
全てを着終わった大男を見て、爺ちゃんは満足げに頷いた。
確かに。
確かに、恐ろしく似合っている。
作業着なのに作業員には見えない。
むしろ軍人のように見える。
しかし。
この大男は、
確かに彼女の事は知ってる。
今クラスメイトであるし、家も近所で小学校上がる前から面識はあった。
しかし、仲が良いかと言われると『普通』である。
親同士は、道端で小一時間世間話に花を咲かせるレベルでは仲が良いようだが……
あとは、ゴリラが好きでゴリラグッズを(一体どこから仕入れているのか知らないが)集めている事、プロレスが好きな事(いつも昼休みに雑誌読んでるから)、近所に肉親ではないけど仲の良い祖母のような人がいる事、ぐらいしか知らなかった。
どうしよう……
こんな『如何にも』な人物を連れて行ったら、
いや、
ハタから見たら、無表情でただ座っているだけに見えるのだが──
「困らせてしまったようで申し訳ありませんでした。
住所は存じ上げておりますので、またお伺いしてみます」
デカイ身体を折り曲げて、ペコリと頭を下げる大男──
この大男──
すると、一気に沸き起こってくる『なんとかしてあげたい』という気持ち。
「大丈夫。俺が案内します」
本来、理由を聞くべきところだが、
「ありがとうございます」
その様子を見て、
こんなに物腰丁寧である人間なんだから、きっと変な事はしない筈。
この人──
気づくには、まだ人生経験が乏しかった。
才能ある詐欺師程、他人に疑問を抱かせない人間であるという事を──
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