第3話
その日、
かけられた老眼鏡はハイブランドだが主張せず上品。
朱色の紐で
同世代の友人達はあまりIT技術等に親和性はないが、彼女は違った。
むしろ懇意である。
自分でVPSを借りてOS等をインストールし、CMSを入れて自分でサイトを運営していた。
仲間内のグループウェアとしても利用しており、個人情報を管理しているのが
──この間、IPA(情報処理推進機構)から脆弱性情報が届いた。
これを機にライブラリ整理して、邪魔なツールも排除しようかしら。
真っ黒なコンソール画面に白の文字が足早に流れて行く様子をジッと見つめながら、
悲鳴が聞こえたのは、そんな時だった。
悲鳴に機敏に反応した
悲鳴の主を探して左右を見回すと、玄関先のブロック塀の陰に縮こまる二人の少女と、
それをブロック塀越しに見下げる大男が目に入った。
瞬時に状況判断。
敵を大男と認定。
「何ヤツ?!」
気分は時代劇である。
道路に出て大男と対峙すると──
変態だ。
間違えようもない変態だ。
こんなにも分かりやすいのは今時珍しい程の変態だ。
「天誅っ!!」
京子は思い切り箒を振り下ろした。
パスン
残念ながら、
頭に箒の一撃を食らっても微動だにしない大男。
首を巡らせてゆっくりと
「誤解です」
「何がだい?!」
ボソリと呟かれた大男の言葉に、思わず被せ気味に
その隙に、ブロック塀の隅に隠れていた二人──
「お婆ちゃん! 助けて!」
「りっちゃん! 誰だいコレ?!」
「知らないよ!」
「よっちゃんは?!」
「知らないですっ」
二人を背中に庇いつつ、
大男はゆっくりと三人の方へと向き直った。
「その子は、
丸太のような腕を持ち上げ、ゴツゴツの指で
「違うね! 人違いだよっ!!」
咄嗟に嘘をつく
先程
愛称だったから大丈夫なハズ──勘が鋭いヤツなら別だが。
毅然とした態度の
どうか、お婆ちゃんの言葉を信じて──
「……そうですか。ご迷惑お掛けしました」
あっさり、大男は言われた事を信じる。
ゆっくりと三人に背中を向けると、ペタペタという素足の足音をさせながらその場を立ち去って行った。
あまりにもアッサリしすぎていて、残された三人は呆気にとられる。
大男が角を曲がって消えて行った姿を見送ると、
箒を下げて後ろを振り返る
「アイツは何なんだい? どこから追いかけられて来たの」
追いかけられていた張本人に疑問を投げかけるが、
「
代わりに
「なんで玄関開けたんだい。ドアを開ける時は必ず相手を確認してからだとあれほど──」
「そうじゃなくって……本当に、いきなり目の前に現れたんです……」
──
そう説明した
見えちゃった色々な部分を記憶から消そうと何度も頭を振る。
その様子を見て、
二人が靴を履いていない事に気付いたのだ。
本当に慌てて逃げてきた。
──恐らく玄関以外の場所から。
「取り敢えず、詳しい事は家の中に入ってから聞こうじゃないか。喉が渇いたろう。
さ、お入り」
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