第2章 新体制と人間関係

2の1 間の悪い敵襲

第15話 間の悪い敵襲

 うちの家は6LDK。

 1階にLDK、それにくっつくように和室6畳。

 そして玄関の方北側に和室6畳がある。

 そして2階には10畳、8畳、8畳の洋室と、6畳の和室。


 俺はLDKと隣の和室6畳しかほとんど使っていなかった。

 2階は換気等はするけれどほとんど未使用。

 その2階で一番条件がいい東南角の10畳を中隊長が占拠していた。

 ベッドに洋服にと生活用具が一通り運び込まれている。

 そこまではいい。


 ただ。

「うーん、やっぱり一戸建ての方がシャワーの出もいいわ。快適快適」

 風呂上がりにノーブラタンクトップにパンツで闊歩するのは勘弁して欲しい。

 意識しているような感じになりそうだから注意も出来ない。

 だから出来るだけ意識しないように心がけ。

 視野にも入れないように心がけ。

 最後は自室で処理する。


 うーむ。

 これが続くと不味いかも。

 そして今朝も似たような状態。


 おかしい。

 若返るまでの45年間。

 望んでも女の子のおの字も無い魔法使いな日々だったのに。

 20代は焦って、30過ぎで悟って。

 そして35過ぎてからはもう何も望まない日々だったのに。

 何で今頃になってこんな事になるのか。


 なんて考えてもしょうが無い。

 だから取り敢えずトースト3枚ずつ焼いて中隊長と俺で食べて。

 そして徒歩3分の職場に中隊長と一緒に通勤する。

 一緒に行くのは色々不本意なのだが、同じ職場なので断る理由も無いし。


 案の定、朝会が終わり、中隊長と陽菜さんが出ていった後。

「ねえねえ。今日どうしたの同伴出勤。ひょっとして中隊長と朝までベッドスポーツで汗かいた?」

等と文月に聞かれた。


「違う。多分陽菜さんの差し金で、中隊長にうちの部屋1つを占拠された」

「何だそれは」

 葉月もやってくる。


「要は中隊長、どうしても自分の住宅に住みたくないんだと。風呂が使いにくいしネズミが出るしで酷いらしくて」

「それを名目に中隊長を美味しくいただきました、と」

「こら文月、断じてそういう事は無い」

 残念ながら俺はそういった事が出来る程器用では無いのだ。


「わかっているって。蓮はそんなタイプに見えないしさ。ところで蓮の家ってどんな家なんだい」


「普通の6LDKだ。2年前に中古で買って今年で築17年」


「そっか、6LDKならかなり部屋に余裕があるよね」

 そう文月が言った時だ。


 ビーッ、ビーッ。

 部屋内に警告音が鳴る。

 音源は陽菜さんのデスク上の通信機だ。

 文月はすっと表情を変えて通信機を取る。


「はい。はい、はい、はい。文月です。はい、了解しました。直ちに準備します。回線維持開始で」

 そこまで言うと俺と葉月の方の方に顔を向ける。


「本部から出動要請。敵さんがお出ましだって。規模は前回と同等程度。接敵予定時間0932」

 敵、来襲か。


「中隊長も陽菜さんも出来るだけ早く戻ってくる予定。でも最悪の場合は2人に先行して貰うからそのつもりでお願いね」


「了解」


 何もこんな面倒な時に、と言っても始まらない。

 敵にはこっちの事情など関係ないし。

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