SSS5.竜帝装備ができあがって

「ヒャッホー! 竜帝なんてもう目じゃないぜ!!」

「竜帝は消毒だ! ヒャッハー!!」

「……皆、テンション高いなぁ……」


 約束の時間に完成した装備を取りに行ってきて、帰ってきたあとの皆の反応です。

 いや、気分はよくわかるんだけどさ……皆、壊れてない?


「ロックンロールよ。これ、本当にあの値段で買えたのか?」

「さすがにちょっとボリ過ぎじゃないですかね? 俺らが」

「……そう思うよなぁ。俺もそう思ったもの」


 ターフやびふーも同じような感想らしい。

 そうなんだよなぁ。

 完成品、品質がぶれるって話だったけど……上方向にぶれるとか聞いてないよ……。



―――――――――――――――――――――――――――――――



「さて、頼まれていた装備、完成しているぞ」

「ありがとうございます。トワさん」


 メールで指定された時間に竜帝装備を受け取るため、『ライブラリ』のクランホームを訪れる。

 そこでは、トワさんが完成した装備品を準備して待ってくれていた。


「事前に教えていたが、品質にはブレがある。均一になっていないのは了承済みだよな」

「はい、大丈夫です。というか、俺らが作るとトワさんの作品より圧倒的にブレますから……」

「ならいい。早速だがトレードするぞ。代金は用意してきているよな?」

「準備できてます。さすがに、一日でできるとは思ってなかったんですが……」

「俺もドワンもイリスも練習を兼ねて作ったからな。こう言っちゃ悪いが、数打ち品だよ。その分、値段も下げてるけど」


 だよな。

 『ライブラリ』のハンドメイド品がこんなに安いわけないし。

 ……★10くらいの武器でも、俺たちが使っている装備より強いはずだし問題ないけど。


「……うん、代金は揃ってるな。さて、これが今回作った装備だ。確認してくれ」

「はい、わかりました。……って、トワさん、これって……」

「品質はブレるって言ってあっただろう。俺たちでも、まだ★13以上を安定して作ることは難しいんだよ。特に、竜帝装備みたいな専用素材で作る装備は」

「……いや、ぶれることは聞いてましたけど、★14も混じってますよ?」


 ★13以上が解禁されたのは、前に掲示板で見かけた。

 アップデート情報でも、特級生産セットって言うのが追加されたってのは知ってたけど……。

 まさか、こんなところで解放された装備が出てくるとは思わなかった。


「……これ、本当にもらっちゃって大丈夫なヤツですか? ★14なんて、俺たちが支払う代金の数倍で売れるんじゃ……」

「だからこその練習だよ。普段だと、代金に見合った性能しか作らないけど、単純に最高品質を求めて装備を作るとか、たまにはやってみたい」

「はぁ……」

「まあ、それに関しては提示した代金でかまわないと話はついてるから気にするな。……クラン内でどうやって割り振るかは任せるけど」


 ……そうなんだよな、クランで割り振らなくちゃいけないんだよな。

 ★14はハンドガンのひとつだけ、ほかには★13がそれなりの数、それ以外は★12。

 ★12のハンドガンでもめちゃくちゃ強いけど、★14になるとそれの三割増しくらいになってる。

 これ、クランに帰ってからが大変じゃないかな……。


「とりあえずこれで取引は終了だな。ほかになにか用事はあるか?」


 トワさんに質問されたので、ついでだからちょっと聞いてみるか。


「トワさん、なんで眼帯してるんですか? いえ、似合ってますが」

「ん? ああ、これか。ちょっと訳ありでな。説明する気はないけど」


 まあ、装備を変えるのはよくあることだし、あまり踏み込んでも仕方がないか。

 それよりも、アレについて聞いてみるかな。


「刻印装備を作ってもらうとしたら、どれくらいかかります?」

「……刻印装備か。売値としては素材持ち込みじゃない場合、純粋に二倍くらいかな。刻印装備が作成成功する確率って六割弱くらいだから」

「なるほど……。ちなみに、素材持ち込み有りの場合はどうなんですか?」

「そうだな……。失敗しても問題ないという前提でなら、同じ金額で引き受けてもかまわないな。ただし、最悪ひとつもできないかもだけど」


 成功率六割ってことは四割は失敗するんだよな。

 ってなると、四つ分くらい持ち込んでも、全部失敗ってことはあり得るのか。

 リアルラックが要求されるなぁ。


「……そうだ。試しで作った刻印装備が残ってるんだけど、それを持っていってみるか? 練習で作った装備だから、性能はそんなに高くないけど」

「え、いいんですか?」

「大量発注のおまけ、程度に考えておいてくれ。……ああ、昨日見せた特注品みたいな性能はないからな」

「でしたら、ひとつ頂きたいです」

「わかった。……ほら、これだ。攻撃力増加の二重刻印を施してある。刻印を発動させたら、耐久力の二割ちょっとを一度で消費するから、取り扱いは慎重にな」

「……えっと、ありがとうございます」


 練習品だから、もっと簡単に作れるものかと思ってたけど、結構すごいものだった。

 トワさんが、外に出していい、と判断してるんだから、そこまで非常識な性能じゃないんだろうけど……。


「ああ、二重刻印くらいだったら、トップクランではすでに所有者がそれなりにいるぞ。コストがかかるけど、瞬間火力は大きいからな」

「……わかりました。大事に使わせてもらいますね」

「そうしてくれ。……ほかになにかあるか?」

「いえ、大丈夫です。今回はありがとうございました」

「了解。また発注があるなら、声をかけてくれ」

「わかりました。それでは失礼します」


 『ライブラリ』から帰ってきた後は、予想通りお祭り騒ぎになった。

 特に★14のハンドガンを誰が持つかは揉めたなぁ……。

 結局、誰が持ってもしこりが残るってことになって、俺に押し付けられたけどな!



―――――――――――――――――――――――――――――――



「おっしゃ! 竜帝が一時間以内に倒せるぞ!」

「これでもうなにも恐くないな!」


 装備を配り終えたら、試しに竜帝レイドをやってみた。

 結果は、二時間かかっていたレイドを一時間以内でクリアできるという圧倒的な早さを記録したんだけど。


「……やっぱり、強い装備って強いよなぁ」

「……なに当たり前のことを言ってるんだ、クラマス?」

「いや、ちょっと黄昏れたい気分になって」


 装備がよくなるだけでここまで違うんだなぁ。

 実際、俺のハンドガンもめちゃくちゃ火力がでたし。


「それにしても、刻印装備って便利だな。消費ははげしいみたいだけど、あんだけの効果があるとは」

「俺もビックリだよ」


 刻印装備も試しに使ってみたけど、与えられるダメージ以上に相手をひるませる効果があった。

 最初に使ったときは試し撃ちというのもあって普通に使ったけど、二回目はブレスを使われそうなときに使ったんだよ。

 そうしたら、ブレスをキャンセル出来てしまって……そのあとはめっちゃ楽になった。


「だが、これで俺らもレイドは恐くないな」

「だなぁ。トワさんたちには感謝しないと」


 これだけ強い装備を用意してくれた『ライブラリ』には感謝だな。

 ……お礼をするにも、俺らで用意できるものは送ってもあまり意味がないのが難点だけど。


「……あの、クラマス。ちょっといいですか?」

「ん? どったの?」


 竜帝レイドが終わって、事後処理をしていたメンバーが俺のところにやってきた。

 素材の分配で揉めたかな?


「あの、装備のことなんですが……」

「装備? 新しい装備のこと?」

「はい。……ぶっちゃけ、装備の品質が高すぎて自分たちで修理するのがきついです」

「へ?」

「修理自体は不可能じゃないですけど、かなりのコストがかかります。わかりやすく言うと、高品質な魔石がたくさん必要です」

「ほ?」

「……修理で手に入るスキル経験値も多いのでバランスはとれてますけど、しばらくは修理費用がバカにならないと……」


 ……そうだった。

 品質の高い装備は、修理するにも高ランクのスキルが必要なんだった。

 新しい装備に浮かれて、すっかり忘れてたよ!


「……どうしようか?」

「……しばらくは修理費用を皆で負担するしかないんじゃね?」


 強い装備だけ手に入っても、楽にはならないらしい。

 俺たちの戦いは、まだまだ終わりそうにないな……。




**********



~あとがきのあとがき~



本話でSSS、終了となります。

シューティングスターメインで普通の話を書いたことがあったかどうか覚えてませんが、結構楽しく書けました。

彼らの戦いはまだまだこれからだ!



さて、年内の更新ですが、あと1~2回できるかどうかと言ったところです。

できれば更新したいけど、結構厳しいかなって感じです。

……ほかのゲームをやってる時間を削れば時間だけはとれますけど、それだと筆が乗らないんだよなぁ。

申し訳ありませんが、気長にお待ちください。

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