SSS3.詳細について

書籍版『Unlimited World~生産職の戦いは9割が準備です~』本日発売です!

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「作ってほしい装備は輝竜を始めとする竜帝装備の銃、これでよかったかのう?」

「はい。それでお願いします」


 トワさんが不在ということで、ドワンさんと依頼内容について話し合いをすることになった。

 といっても、俺たちが依頼する内容はすでに決まっているので、細かいところを詰めるだけなんだけど。


「それで、素材はどれだけあって、どのくらいの銃が必要なんじゃ?」

「ええと……素材はこれだけですね。銃は予算内で作れるだけ作ってほしいです」


 俺はクラン倉庫から持ってきた素材を見せてみる。

 すると、ドワンさんは驚いたように目を見開き、そしてひとつため息をついた。


「……よくもまあ、これだけ貯め込んだものじゃのう。イリスとも話し合わねばならんが、これだけあれば全部で50丁から60丁は作れるぞい?」

「そんなに作れるんですね……」


 正直、これだけ素材があっても30丁作れればいいほうだと思ってた。

 うちのクランの鍛冶士や錬金術士に聞いてもそれくらいだったし。

 その辺のことをドワンさんに聞いてみると。


「ふむ。それは失敗も見込んでの数値じゃろう。失敗なしでなら、さっき言った数は作れるのう」


 なるほど、純粋な腕前の差か。

 ドワンさんに言わせると、同じものをどれだけ作ってきたかにもよるらしいけど。

 経験と実績って大事だよね。


「さて、あとはどの銃をどれだけ作るかじゃが……」

「希望としては、ハンドガンが全体の半分、ライフルが10丁、ショットガンが6丁、残りをマナカノンにしてほしいです」

「それだと、マナカノンの数が大分多くなるぞ? それにマギマグナムはいらんのか?」

「ああ、60くらい作れるんでしたね。ちょっと確認してみます」


 ドワンさんに一言告げてから、クランチャットでメンバーの希望を聞いてみる。

 やっぱり、大半はハンドガンを希望してて、次点がライフル、一部がショットガンって感じだ。

 魔法銃士系統のプレイヤーにも確認したけど、マギマグナムじゃなくマナカノンがほしいそうなので、マギマグナムは依頼しなくて大丈夫そう。

 いまの話をドワンさんにも教えて、最終的な数を確認する。


「とりあえず、決まっている数の銃は、ショットガンが6丁、マナカノンが5丁、ライフルが少し増えて16丁。残りはハンドガンが希望です」

「了解じゃ。あとは金銭的な話じゃが……」

「おいくらぐらいになります?」


 ドワンさんから提示された金額はかなりお高い金額だった。

 いや、現状でも最高級品である竜帝装備を50個以上頼んでてこの値段なんだから良心的なのかもしれないけど……。

 さすがにこの値段はすぐに頷くことはできず、再びクランチャットで確認することにした。

 すると……。


『その程度の金額、なんとか集めるから頼んでくれクラマス!』

『そうそう! 『ライブラリ』にその金額で銃を頼めるなんて滅多にないんだから!』

『いつか自分の強力な武器を持つために貯めていた貯蓄がある! だから問題ない!』


 などなど、肯定的な言葉しか返ってこなかった。

 皆、結構貯め込んでるのね。


「話はついたかのう?」

「あ、はい。お金はなんとかする目処がついたので、作製よろしくお願いします」

「了解じゃ。スケジュールについては、トワが帰ってきた後に話をしてみるのでしばらく待っておくれ」

「わかりました。無理はしなくてもいいので、よろしくお願いします」

「うむ。……さて、他に用件はあるかのう?」


 用件か。

 銃の発注自体がメインだったから、もう特にはないんだけど……。

 ついでだから、あの件について聞いてみるか。


「ドワンさん。『刻印装備』っていうのがあるって聞いたんですけど……」

「ふむ。確かにあるぞい。それがどうかしたのかの?」

「ええと……今回作ってもらう装備を刻印装備にしてもらう事って可能ですか?」

「可能不可能で言えば可能じゃな。ただし、作れる装備数は半分程度になるぞい」


 やっぱり、まだ刻印装備は高いのかな?


「ああ、これは値段云々の話ではなく、刻印装備を作るときの仕様の問題じゃな」

「仕様、ですか?」

「おう、仕様じゃ。刻印装備を作ろうとすると、無条件で半分は消滅してしまうのでなぁ。完成品の数が半減してしまうのじゃよ」


 なんと、そんな仕様があったのか。

 ついでだから、もっと詳しく教えてもらえないか聞いてみよう。


「俺ら、あまり詳しくないんですけど、そんなに難しいんですか?」

「……そうじゃな。あまり詳しくは教えられぬが、作るのもそれなり以上に難しい。少なくとも数打ちするには向かんのう。それ以上に、どんなに上手く作れたとしても、システム的な理由で50%程度の確率で作製失敗扱いになり消滅してしまうんじゃ」

「……それは大変ですね」

「大変じゃよ。できた装備についても、純粋に強い、というわけではないしのう」

「そうなんですか?」


 それだけ苦労するなら、単純に強そうなんだけど。


「刻印装備は、装備の耐久値を消費して一時的に攻撃力や防御力を上昇させるんじゃ。上昇率はそこそこいいのじゃが、対価となる耐久値もバカにできん割合で持っていかれるのでな。そのほかにもデメリットがあるが……まあ、それはおいておこう」


 なるほどね。

 びふーが言っていたような単純に強い武器ってわけじゃないんだな。

 そんなクセがある武器、俺たちじゃ上手く使いこなせないだろうから、依頼しないでおこう。


「そういうわけじゃから、依頼するなら請け負うが納品数は少なくなるぞい?」

「いえ、今回は大丈夫です。普通の装備でお願いします」

「それがよかろう。瞬間火力がほしい場面でもなければ、あまり使わない方が良い装備じゃし」

「そうなんですね。勉強になります」


 実際、刻印装備については全然知らなかったし、ある程度の情報をもらえただけでも嬉しい。

 将来的にはそんな武器もほしいけど、まずは目の前の目標をクリアするための装備だな。


「さて、ほかに聞きたいことはあるかの?」

「いえ、大丈夫です。ドワンさん、ありがとうございました」

「なに、気にすることでもない。……そうじゃ、トワの奴じゃが、いま刻印装備の試運転に行っているのじゃ」

「刻印装備の試運転、ですか?」

「うむ。面倒な依頼を受けたとかで、かなり特別な刻印装備を作っておったのじゃが……まあ、それの最終試験のようなものらしい」


 トワさんが作る特別な刻印装備か……。

 結構気になる。


「確か、雷獣相手に試し撃ちをしているはずじゃ。気になるなら行ってみるといい」

「あー、俺が行って邪魔にならないですかね?」

「まあ大丈夫じゃろう。挨拶がてら行ってくるといいぞい。わしから教えられたと言えばそこまで邪険にされぬじゃろう」

「……だといいんですが。とりあえず行ってみますね」

「うむ。それではまたのう」

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