SSS2.新装備を求めて
書籍版、明日発売予定!
首都圏とか早売りする地域ではもう出回ってる気がする。
(作者は北海道在住)
Twitterとかで購入報告してくれると、作者は喜ぶのよ?
(Twitter以外のSNSはやってないのであしからず)
**********
竜帝戦を手軽に行えるようにするため、新装備を発注しに『ライブラリ』までやってきた。
『ライブラリ』の店舗部分って、いつ来てもお客さんがいるよなぁ……。
取り扱っている商品も、初心者向けの安目のものから上級者向けの強くて高価なものまで一通り揃ってる感じ。
前に来たときに売り切れ状態だった銃や錬金アクセサリーが補充されているってことは、トワさん本当に復帰したようでよかった。
銃の発注云々を抜いても、多少とはいえ知っているプレイヤーが早々に引退とか寂しいもんな。
さて、依頼をするのにトワさんに会いたいんだけど、いるかな……?
「あ、ドワンさん。こんばんはっす」
「うん? ……確か、シューティングスターのロックンロールじゃったか?」
「はい。銃を作ってもらうときはお世話になってます」
「かまわんよ。正当な対価をもらっている限りは、お客じゃからの」
今日の店番はドワンさんか。
ドワンさんは鍛冶担当のプレイヤーで、銃を作るときは銃身を作ってくれているはず。
でも、ドワンさんが店番なんて珍しい。
普段はイリスちゃんか姐御がしているのに。
「今日はドワンさんが店番なんですね」
「うむ。特に依頼も入っておらんかったからのう。イリスと柚月は依頼が入っておるので、わしが店番をしておるんじゃよ」
なるほど。
でも、鍛冶担当のドワンさんが依頼なしっていうのも珍しいような?
「ドワンさんが忙しくないって、珍しくないですか?」
「まあのう。急ぎの品はすべて作り終えていて、依頼人が取りに来るのを待つだけじゃし、それ以外はまだまだ納期が先なのでな」
なるほど、急ぎの仕事がないからここにいるってわけか。
それじゃあ、銃の依頼について相談に乗ってもらおうかな。
「ドワンさん、俺たちのクランで銃を依頼したいんですが、話を聞いてもらえますか?」
「ふむ、よかろう。じゃが、銃ならばトワのほうが詳しいぞい?」
「あー、勿論トワさんにも相談しますけど、その前にある程度形を決めておいたほうがいいかなと思いまして」
「確かにの。トワはその辺、おおざっぱじゃからなぁ」
やっぱり、クラン内でもトワさんってそういう認識なんだ。
それじゃ、早速話しをするとしよう。
「ここで立ち話をするのもなんじゃ。奥で話を聞くぞ」
「あれ? 店番はいいんですか?」
「店番が必要なわけではないからの。店番をするのは個人の趣味じゃわい」
そうなのか。
てっきり、常に誰かがいるものだと思ってた。
「そもそも、深夜や早朝は誰もインしておらんぞ?」
「あ。それもそっすね」
言われてみれば、その通りだ。
なら、店番をしていなくてもいいのかな。
「遠慮しておらんで中に入れ。茶ぐらいは出すのでな」
「はい、お邪魔します」
さて、ドワンさん、今回の依頼を引き受けてくれるかな?
―――――――――――――――――――――――――――――――
「ふむ。竜帝レイドを楽にするために、竜帝装備を大量発注したいというわけか」
「そうなんです。いまの攻撃力じゃ、一戦二時間くらいかかってて、とってもじゃないですけど二戦は厳しいんで……」
「四時間もレイドをやっていれば疲れるじゃろうな。わしらはそもそもレイドに行くことは稀じゃが」
生産者がレイドに行くなんて滅多にないよな。
……あれ、でも?
「『妖精郷の封印鬼』って毎週通ってたって聞きましたけど?」
「まあの。冬くらいから行かなくなったが、それまでは毎週行っておったな」
「それって疲れなかったんですか?」
「最初の頃は疲れたが、装備とスキルが揃ったあとは大したことはなかったのう。トワやイリスだけでクリアできるようなものじゃったし」
「……さすがですよね、あのふたりは」
「さすがじゃのう」
トワさんが強いのは、βテストのころから周知の事実だったみたいだけど、イリスちゃんも強いんだよな。
秋の武闘大会であんなに活躍できるとは思ってなかったよ。
「さて、話を本題に戻すぞい。先に結論から言えば、量産は可能じゃな。素材はたんまりと持っておるのじゃろ?」
「はい。自分たちでは生産できないので、素材だけは豊富に揃ってます」
「ならば、素材的な問題はクリアじゃな。あとは、費用と納品までの期間、それから……」
「それから?」
「トワの気分じゃな」
「ああ、やっぱり」
トワさん、同じものを大量に作るみたいな単純作業って、請け負ってくれそうにないからなぁ。
できれば、トワさんにも楽しんでもらえるような依頼にしたいけど、俺らじゃ最前線素材とかを用意できないから……。
「トワの奴はいま出かけておっての。とりあえず、チャットで連絡をとってみるから暫し待つのじゃ」
「はい。よろしくお願いします」
それから、ドワンさんは耳に手を当て、どこかと話をし始めた。
フレチャとかだと、話の内容は目の前にいてもわからないからな。
口元も動かないから読唇術とかもできないし。
……いや、俺にはそんな高等技術ないけどさ。
「……待たせたのう。トワと話がついたぞい」
数分程度経ったところで、ドワンさんから返事をもらえた。
その結果は、なんとOKだったようだ。
「……俺が言うのもなんですけど、本当に受けてもらえるんですか?」
「うむ。トワも、いま面倒な依頼を受けておってのう。息抜きにはちょうどいいと言っておった」
「……でも、同じものをひたすら作るとか、面倒って言われそうな……」
「同じものをひたすら作れなければ、ポーション作りなぞやっておれんぞ?」
あ、そうだった。
トワさんって、銃だけじゃなくてポーション類も作ってるんだった。
「トワから提示された条件はひとつ、品質にばらつきがでても不問にすることじゃな」
「それくらいなら大丈夫っす。俺らで作ったら、そもそも★8すら怪しいので……」
「了解じゃ。それでは、詳しい内容に移るとするかの」
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