後日談その3 SSS
SSS1.日常の一コマ
本日より書籍版発売記念のSSストーリーを連日公開します
目標:一話2000文字程度
こっちではあまり宣伝してなかったけど、書籍版《Unlimited World》第一巻明後日12月21日頃発売です。
本屋やAmazonとかで買えるからよろしくね!
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「やっぱり安定の輝竜装備だろ!」
「いや、継続ダメージのでかい樹竜だろうが」
「その辺はいままでも狩り続けてるだろ! ここは新しい素材にも目を向けようぜ!」
目の前では、クランメンバーたちが
議題はどの竜帝を狩りに行くかなんだけど……もう、わけがわからないレベルだ。
確かに、輝竜と樹竜は何回も倒してるから素材も集まってるけど、希望しているメンバーの分は全然足りていない。
……それ以前に、うちのクランの錬金術士いわく、もう少しスキルレベルを上げてから竜帝装備を作りたい、らしいので、装備の数は圧倒的に足りてないんだけどな!
「よう、クラマス。あの議論、止めなくてもいいのか?」
「おっす、ターフ。いや、いま止めても仕方がないかなと思って……」
「あそこまで白熱しているとそうなるか。……ただ、さっさと結論を出して狩りに行かないと、竜帝二戦は厳しいぞ?」
「……そこなんだよなぁ。いや、春休みイベントは嬉しいけど、竜帝戦を二回って考えると時間が……」
「俺らの攻撃力じゃ結構厳しいよな。素材は集めたいが、毎日二戦戦うには戦力や補給能力が厳しいというジレンマ」
「だな。消耗品は数を集められたけど、戦闘時間まで考えるとなぁ……」
相互協力関係にあるクランから、お互いにアイテムを融通しあって消耗品だけは揃ったんだよ。
でも、レイドボスを周回するには、攻撃力も必須でして……。
「……そういえば、上位クランってどうしてるんだろうな?」
「聞いた話だと、メンバーを割り振って狩りたい竜帝に行ってるらしいぞ? 上位クランだと普通の竜帝装備ってそろそろ型落ちらしいから、適当にしかやってないんだと」
「なにそれうらやましい」
「いや、そうじゃなきゃおかしいだろ。俺らとは台所事情も違うんだからよ」
「……そっかぁ。とりあえず、どうするべなぁ」
「俺らのクランじゃ、二部隊も作れないわけだし。まずは、目の前の話し合いを終結させてこいよ、クラマス」
「うぃ。じゃあ、いってくるか」
なにをしようにも、目標が決まらなきゃなにもできないからなぁ。
できるところから、やってかなきゃならん。
あ、俺、このクランのマスターをやってる、ロックンロールです。
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「疲れた。装備的にもしんどいけど、精神的にしんどい」
「……誰だよ、竜帝二周連チャンしようって言ってたの」
「お前だよ。俺もだけど」
「くっ……俺たちじゃ効率的な竜帝周回はできないのか!」
「いや、無理だろ。『百鬼夜行』みたいな一戦30分の高速周回とか俺らにゃできん」
「せめて、一時間! 現実は二時間……」
「でも、今日の努力が明日の希望につながるんだ……」
うん、竜帝戦を二回やってきたけど、ボロボロだな!
まずはお試しということで、一番戦い慣れてる輝竜を二回やってきた。
……結果はお察しの通りだったけど。
春休みの一周年記念イベントのひとつで、竜帝戦を毎日二回勝利するまでできるけど、時間的に無理。
俺らはガチ戦闘クランじゃないんだから、一回二時間のレイドバトルを毎日二回とか無理だって。
「なあ、クラマス。明日以降に向けて戦力を整えないか?」
「なに、びふー? なんか思いつくことでもあんの?」
「とりあえず、今の状況で毎日二周とか無理っしょ。で、私に考えがある」
「……なに、その不安になる言い方」
びふーはターフと同じように、『シューティングスター』結成のころから中心メンバーとして活動してくれている。
ただ、今回の提案、めっちゃ怪しいんだけど。
「前提条件として、俺らにゃ一戦二時間を二回もこなすのは無理ゲーなわけだ」
「そうだな。一週間に一回とかならまだしも、毎日二戦とか無理だわな」
「春休みとはいえ、社会人とかは夜しか接続できないしな。で、これを根本的に解決するには、攻撃力不足をなんとかしなくちゃいけない」
「その通り。防御力は十分に足りてるっぽいから、あとは攻撃力だよな」
「つまり、武器を強化できれば万事解決ってことだよな」
……そうなる、のか?
でも、攻撃力不足になってる最大の原因は、武器の性能が上がってないことだし。
間違ってはいない、はずだ。
「で、その問題を解決するプランがある」
「なに、そんなプランがあるの?」
「ああ、ついさっき仕入れた情報だ」
ほう、なんだかすごい話が飛び出しそう。
「まずは、最上位の装備生産者で噂になっている『刻印装備』ってものがあるらしい」
「なにそれ?」
「なんでも、耐久値と引き換えに攻撃力や防御力を引き上げてくれるんだと。俺も詳しくはわからんけど」
「……せめて、詳しく調べてくれよ」
「俺だってようやくつかめた情報なんだよ! 最上位生産者って掲示板もパスワードを知らなきゃ閲覧すらできない、非公開掲示板で情報共有してるらしいし」
「情報屋関係は?」
「いまはまだ話せないとさ。調査不足もあるけど、刻印装備を作れる生産者っていうのがほとんどいないから、負担が偏らないようにもうしばらくは公開しないって」
情報屋が公開していない情報か……それはすごそう。
「でだ、もうひとつの情報だが。イリスちゃんに聞いてきたけど、トワさんがそろそろ装備受注を再開するってさ」
「え、それマジ?」
トワさん……生産クラン『ライブラリ』の錬金術士が受注を再開するのか。
それは嬉しい情報だな!
詳しくは知らないけど、冬休み前から受注できなくなって装備やポーションも出回らなくなったから、一時は引退説も出回ってたけど……そうか、再開するのか。
「それは嬉しいな!」
「まあな。俺ら、なんだかんだと世話になってるしなぁ」
「それじゃ、トワさんに装備作りを依頼すればいいのか?」
「それが手っ取り早いんじゃね? 受けてくれるかどうかはわからんけど」
トワさん、結構受注を絞ってるから……。
なにはともあれ、復帰したなら挨拶にはいくべきだよな。
「よし、とりあえず挨拶だけでも行ってくるよ」
「いてらー。ついでに、受注できるかどうかも聞いといてくれ。明日以降の竜帝レイドについては、こっちで話し合いしておくから」
「任せた。じゃあよろしく!」
さて、受注してくれるかはわからんけど、とりあえずダメ元で行ってみますか。
トワさん、機嫌がいいといいなぁ……。
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~あとがきのあとがき~
というわけで、SSS(シューティングスターストーリー)開幕です。
個人的には5話程度書きたいところ。
書籍版もよろしくね!
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