344.マイスタークラス開始前

 マイスタークラス当日の朝、は目を覚ます。

 今日から二日間、武闘大会のマイスタークラスが始まるんだ。

 早いところログインして最終調整したいところだけど、練習相手のトワはいないらしいし、そんなに急いでも仕方がないかな。

 なので、顔を洗って歯を磨いたら、まずは朝食の準備を始めたよ。

 朝食と言っても、味噌汁を作るとか難しいことはせずに、トーストを焼いて、付け合わせの目玉焼きとベーコンを焼いて、ミルクを追加、っていう感じの平凡な食卓だ。

 でも、料理はそんなに得意じゃないし、シンプルイズベストだよ、きっと。

 朝食を食べているとお姉ちゃんもリビングにやってきて、朝食の準備を始めた。

 私と同じものを。

 やっぱり手抜きをしたい朝はこうなるよね!


「立華、今日はなにかあるのかな?」

「うん。UWで武闘大会があるよ」


 少し急ぎ気味に朝食を食べてる私を見て、お姉ちゃんが聞いてくる。

 同じゲームをやってるわけじゃないから、今日の予定は伝えていないんだよね。


「そうなんだね。立華が参加するの?」

「参加するよー。お姉ちゃんも応援に来る?」


 もし応援に来てくれるなら嬉しいんだけどなー。


「ボクはアカウントがないから無理なんだよ」

「春に誘ったときのライセンスがまだ残ってるから、急いでキャラメイクしてくれたら間に合うよー?」

「そこまでしたくはないんだよ。それに、ボクはボクでやることがあるんだよ」


 予想通りの答えが返ってきてちょっと残念。

 ライセンスはあるから、キャラメイクだけでいいんだけどなー。


「そっかー。それじゃあ、仕方がないねー」

「立華も頑張ってくるんだよ」

「うん、ありがとうお姉ちゃん」


 ゲームでは無理だけど、応援はしてもらえたよ。

 そして、朝食を食べ終わったら、早速ゲームにログインして最終調整。

 装備を一新したから動きも少し変わる。

 今日はいろいろ頑張らないと!



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



「あら、イリス。今日は随分と早いのね」


 ログインして準備をしていたら、柚月がやってきたよ。

 普段からすると、確かに早めのログイン時間かなー。


「柚月、おはよー。やっぱり本格的な対人戦は初めてだからねー、準備はしっかりしておかなくちゃ」

「確かに、その通りかもしれないわね。トワの場合、そのあたりは気にしてなかった気がするけど」


 うん、トワは対人戦とか気にしてなかったよね。

 なんでも、武術の経験があるから今更気にすることでもないと言っていたけど、僕には無理かなー。


「トワは特別だよー。リアルでも武術をやってるんでしょー。ボクみたいに、リアルはそんなに運動をしない人にはきついよー」

「対人戦は難しいらしいわね。でも、トワと練習はしてたんでしょ?」

「うん。できる限りの練習はしたよー」


 トワとの対人戦練習はとってもためになった。

 トワはβ時代にアーチャーだっただけに、かなりトリッキーな動きも教えてもらえたからね。


「それなら、その練習を信じて頑張るしかないわよね」

「だねー。それじゃあ、ボクはしばらく練習してるよー」

「ええ、頑張ってね」


 柚月と別れたら、訓練所に行って対人戦のおさらいだよ。

 トワに教えてもらった動きを一通りなぞってみて、イメージをしっかり固めてみる。

 一通りなぞってみたら、そこから先は通常攻撃やスキル回しの練習を試してみる。

 スキルは攻撃前と攻撃後の隙が少ない物を中心に、いろいろとコンボをやってみた。

 普段は威力が高いものを中心にスキルを使ってるけど、対人戦は隙が少ないものを中心に使わないといけないから大変だ。

 でも、遠距離スキルって必ず攻撃前の準備時間が発生するから、使いにくいんだよね。

 トワみたいに、【格闘】を中心に近距離戦をメインにできればかなり違うんだけど。


「はろー。イリス、頑張ってるー?」

「あ、曼珠沙華。はろー」


 しばらく訓練所で復習をしていたら、今度は曼珠沙華がやってきた。

 柚月は談話室ですれ違っただけだから、曼珠沙華はわざわざやってきてくれたみたいだねー。


「その様子だと、頑張ってるみたいだねー。お姉さんは嬉しいよ」

「せっかく出場するんだから、決勝トーナメントくらいはいきたいからねー。そのためには、予選のバトルロイヤルをクリアしなくちゃいけないから大変だよー」


 そう、予選はバトルロイヤルなんだよねー。

 バトルロイヤルではどうしても乱戦になりがちだから、遠距離職には不利になってしまう。


「バトルロイヤルかー。遠距離職は大変そうだよねー」

「うん、大変だねー。トワは近距離戦も強いから、真似できないし難しいねー」

「トワっちは動きがおかしいからね。至近距離から相手の頭を撃ち抜いたりとか、昔の武闘大会はやりたい放題だったものね」


 昔のトワは、弓が頭に触れるくらいの距離から相手の頭を射抜いたり、弓を使わずに矢を手に持って突き刺したりしてたからね。

 接近戦も遠距離戦もこなせて、なおかつ【格闘】スキルで縦横無尽に動き回ってたから、対戦相手はペースをつかみにくかったの。

 気がついたら、いつの間にか相手を倒してたなんてこともあったなー。


「だよねー。練習してもらったけど、トワも銃なのに近距離戦メインだったからね」

「相変わらず、トワっちは至近距離戦かー。銃を使った格闘戦とかよくできるよね」


 銃を使った格闘戦、見せてもらったけど結構かっこいいんだよ。

 弓を使って近距離戦をする場合は、手が塞がってるからキックメインでやるといいって教わったけど、どこまで使いこなせるかなー?


「だねー。できないことはできないって諦めなくちゃいけないんだけど」

「真似できれば楽なんだろうけどね」


 やっぱり、曼珠沙華から見てもトワの動きは変だったんだろうね。


「それで、イリスの仕上がり具合はどう? もうすぐお昼だし、お昼が終わったらすぐに予選だけど」

「うわ、もうそんな時間だったんだ。急いでお昼を食べてこなくちゃ」

「気付いてなかったんだ。早くご飯を食べてきたほうがいいよ」

「うん。ありがとうね、曼珠沙華」


 時間を見てみたら、本当にお昼目前だった。

 急いでお昼を食べて戻ってこないと、予選が始まっちゃうよ。

 前準備はこれくらいにして、お昼を食べに行ってこよう。

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