324.ハロウィンパーティ 4

《特殊イベント『ハロウィンパーティ攻防戦』が開始されました。このイベント中は戦闘制限が解除されます》

《モンスターを一定数撃破する、または一定時間耐えきればプレイヤー側の勝利、城が一定以上のダメージを受けるとプレイヤー側の敗北となります》


「トワくん、これって……」

「ああ、やっぱり戦闘イベントを仕込んであったのか」

「そうみたいだね。私達はどうするの?」

「イベント自体は強制参加みたいだしな……とりあえず、みんなと合流することを優先しよう」

「うん、わかった」


 俺達はクランチャットでお互いの位置を確認しあう。

 その結果、ステージ前にいたイリスのところが集まりやすいだろう、ということになり全員そこに集合することになった。

 集合自体は数分で集合できたし、まあ、まずまずだろう。


「さて、強制イベントが開始されたわけだけど。このイベントに参加したくない人間はいないわよね?」

「そうじゃの。この場で断っても、後々攻め込まれたら変わりはないんじゃし、自分達から防衛戦に参加したいのう」

「ボクもオッケー。せっかくのイベントなんだし楽しまなくちゃねー」

「おじさんも構わないよ。ただ、武器と防具の制限がかかったままなのが不安だけどねぇ」


 みんなで集まってすぐ、装備を切り替えられるか試してみた。

 だが、最初に持ち込み申請をした武器以外の装備変更はできなかったのだ。

 タンク職であるおっさんが不安になるのも無理はないだろう。


「その問題についてはだいじょーぶ! 曼珠沙華さん特別製の布装備はそこらの金属装備よりも頑丈なんだからね!」

「確かに、普通の布装備に比べれば遥かに頑丈だけどねぇ。おじさん、普段はドワン君の鎧を使っているからねぇ……」

「うぅ、さすがにドワンが作る金属装備にはかなわないわ」

「なに当たり前のことで話をしてるのよ。それよりも、かなり混乱しているみたいだけど、どうするの?」

「どうすると言われてもな。俺達じゃまとめられないだろ。鉄鬼がきてたことだし多分……」


『聞いてくれ、みんな! 俺はクラン『百鬼夜行』の仁王だ! このまま、バラバラに行動してもどうしようもない! 一時的にでも俺達の指揮下に入ってくれる者は中庭内噴水前に集合してくれ!』


 ちょうどいいタイミングで鉄鬼の所属するクラン『百鬼夜行』のリーダー、仁王が全プレイヤーに呼びかけを行った。

 さて、後はこれに続くプレイヤーがどれだけいるかだが……


『クラン『オリハルコンハンマー』だ。『オリハルコンハンマー』は『百鬼夜行』の要請に従い、その指揮下に入る』


「あれ、『オリハルコンハンマー』のメンバーもこの会場だったのか」

「あなたは食べ歩きしかしてなかったみたいだから気付かなかったでしょうけど、同じイベント会場にいたわよ」

「そうじゃの。他にも中堅どころのクランがいくつもきているようじゃの」


『オリハルコンハンマー』の宣言に続き、いくつかのクランが『百鬼夜行』の指揮下に入ることを宣言する。

 これにより、大部分のプレイヤーは状況的に『百鬼夜行』の指揮下に入ろうとする……だろう。


「それよりも、トワっち。私達はどうするの?」

「ああ、そうだったな」


 俺達もそこそこ有名なクランだし、宣言しておくか。


『クラン『ライブラリ』、『百鬼夜行』の要請に従い、このイベント中は指揮下に入る』


 さて、俺達も宣言が終わったし、噴水前まで移動しよう。

 俺達のような有名クランの協力宣言で、ほとんどのプレイヤーは『百鬼夜行』の指揮下に入ることを選んだようだ。

 大手や中堅どころのクランが集まっている分、集団で行動した方が実入りがいいという判断だろう。

 逆に、個人あるいはパーティ、クラン単位で別行動した方がいいと判断したプレイヤー達は、既に中庭を出て行っている。


「お、きたな、『ライブラリ』の。俺の提案に乗ってくれてありがとよ」

「気にするな、仁王。そもそも、俺達は戦闘系クランじゃないんだ。こういう場面でどう動けばいいかなんてわからないし」

「まあ、それもそうだろうな。それに、『ライブラリ』が俺達の指揮下に入ってくれたことで、戦術の幅が広がるってもんだ」

「……【神楽舞】か?」

「ああ、そうだ。この間のイベントで効果を見せてもらったが、あれだけ強力なバフ・デバフスキルを使わない手はないからな」

「……ユキ、問題ないか?」

「うん、大丈夫だよ」

「それで、敵はもう攻めてきてるんだ。作戦はどうする?」

「俺達『百鬼夜行』の先遣隊が、戦場になっている地域まで到達している。報告では、まとまって攻撃してきているというより、バラバラに仕掛けてきているらしいな」

「ふむ、それで?」

「他のクランとも話をしていたが、各クランでパーティやレイドチームを組んでもらい、各個撃破する。それが一番ってところだな。なにせ、夏休みイベントの時みたいに準備期間がないからな。あの時みたいに、連携して動くのは難しかろうよ」

「……それもそうか。それで、俺達の役目は?」

「前線まではでなくてもいいから、例のスキル、【神楽舞】だったか? あれで、デバフをまいてくれ。レイドチームが機能しない状況なら、バフで少ない人数を強化するよりも、デバフで広範囲の敵を弱体化させた方が有効だろう」

「……その作戦だと、敵視に反応するタイプのモンスターは、こちらに殺到することになるぞ? 『ライブラリ』の戦力だけで、ユキを守り切ることはできないと思うが」

「そこは気にするな。『百鬼夜行』から第二パーティと第三パーティを護衛にだす。それだけの護衛がいれば、いけるだろ?」

「……やってみなくちゃわからないけどな。そういうことなら、守備チームは借りるぞ」

「ああ、頼んだ。さて、他のプレイヤーはさっき決めたとおり、モンスターの撃退に向かってくれ! 襲ってきているモンスターのレベルもバラバラらしいから、戦う前に【看破】で敵のレベルを確認、無理そうなら他のパーティに救援を要請すること! いいな!」

「おう!」

「せっかくのイベントだ! やってやるぜ!!」

「ここで負けたらイベント中止なんて、たまったものじゃないわ」

「攻撃を仕掛けてきたモンスターをしっかりと倒してやりましょう!」


 どうやら、ここに集っているプレイヤー達の士気は非常に高いようだ。

 準備ができたパーティやクランごとに、中庭を出発して戦場へと向かっている。


「さて、『ライブラリ』の。そちらの準備は大丈夫か?」

「ちょっと待ってくれ。パーティを分けるから」


 曼珠沙華が加わったことで、俺達の人数は七人になった、

 つまり、一パーティでは入りきらないわけで。

 そうなると、パーティをどのように分散させて戦力を整えるかが問題なのだが……


「あ、トワくん。眷属の召喚も解禁されているみたいだよ」

「そうか、それならパーティ分けも悩まなくてすむな」

「そうね。眷属が召喚できるなら、そこまで悩まなくてもいいわね。トワとユキ、それからイリスで一パーティ、残りの四人で一パーティにしましょう」

「そうだな、それがいいか。そっちのパーティは、眷属枠、大丈夫か?」

「実戦で使える戦力は柚月の精霊しかおらんのでの。パーティ枠を圧迫することはないぞい」

「それなら、俺とユキはフェンリルをだしても大丈夫だな」

「ボクも精霊をだすよー。そうすれば、パーティ枠が埋まるからねー」


 イリスの精霊か。

 イリスはあまり魔法を使ってない印象だから、そこまで強いイメージはなかったのだが。


「それなり以上に激戦になりかねないけど、精霊の強さは十分か?」

「近距離戦にならない限りは大丈夫だよー。ボクの魔法関係はあまり強くないけど、精霊のレベルは十分に上がってるからね」

「それなら、その方針で行こう。念のため、レイドチームも組んでおくぞ」

「了解。……こちらのパーティは準備完了よ」

「こちらも準備完了だ。眷属は移動中に召喚するとしよう」

「わかったわ。お互い、頑張りましょう」

「ああ。……仁王、準備完了だ。いつでもいけるぞ」

「おう! それじゃあ、俺達と一緒にきてくれ。まずは、前線が押し込まれている部分を立て直すからな」

「了解。【神楽舞】のサポートはその時から必要か?」

「いや、まずはサポートなしでいく。サポートなしでも十分に戦えるだろうからな」

「わかった。それなら、俺達も攻撃に参加する」


 ユキを守る必要がないなら、援護射撃程度はできるだろう。

 ライフルを持ち込んでいて正解だったな。


「よし、それでは準備完了。『百鬼夜行』本隊、出陣だ!」

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