322.ハロウィンパーティ 2

「うわぁ、大きな門だね、トワくん」

「ああ、そうだな」


 馬車で辿り着いたのは、城門前。

 そこには城の大きさに見合った立派な門が待ち構えていた。

 門の前では、一人の住人NPCが俺達の到着を待っていたみたいだ。


「ようこそ、ハロウィンパーティへ。パーティ会場までご案内させていただきます」

「ああ、よろしく」

「はい。まずは持ち込み品の確認をさせていただきます。こちらで確認をしていただけますか」

「わかった。そうさせてもらうよ」


 案内された場所では、持ち込み装備品の選択が行われた。

 防具関係は、今装備している服で固定。

 武器は所持している武器の中から二種類を選択することになった。

 俺の場合は、使う武器の数が多いからどれを選ぶか悩むところだが……


「まあ、この組み合わせが妥当か」


 選んだ武器は、イニアスナイプと建御雷。

 建御雷を二刀流できないのは少し痛いが、状況に応じた対応を考えるならライフルを持っていかないわけにもいかない。

 結局、落ち着くべきところに落ち着いた感じの武器選択ではあったが、特に問題なく終了。

 他のみんなも、武器選択を終えて俺を待っていた。


「悪い、待たせたか?」

「ううん、大丈夫だよ」

「そうじゃの。トワは使う武器の数が多いのじゃし、選ぶのに時間がかかるのも仕方があるまい」

「うんうん。むしろ、考えてたより早く終わったねー」

「結局、汎用性を考えた選択になったからな。特定状況だけで使える装備より、なにが起こるかわからない以上、汎用性を持たせないわけにもいかないだろうから」

「ということは、ライフルと聖霊武器といったところかしら」

「そうなるな。みんなはどうしたんだ?」

「おじさんは盾とハンドガンだねぇ。盾も武器扱いみたいだから、他の選択肢がなかったとも言うけどね」

「私は普通に魔法用の杖を二つね」

「わしも接近戦用の武器を二つじゃのう」

「ボクは聖霊武器と魔導弓だよー」

「私も聖霊武器と普通の薙刀ですね」

「私は接近戦用のレイピアと遠距離戦用のライフルが一つずつね」


 へえ、曼珠沙華もライフルを使うのか。

 少し意外だな。


「曼珠沙華がレイピアを使うのはβの頃からだったけど、ライフルも使うようになったんだな」

「まあね。最初は扱いにくかったけど、スキルが育ってきてアシスト補正が上昇したら、便利なサブウェポンになったわ。ライフルで先手を取って、近づいてきたら魔法やレイピアで攻撃ね」

「わかりやすい、ライフルの使い方だな」

「戦闘はシンプルが一番よ。難しいのは生産だけで十分」

「まあ、生産職はそんなものだろうな」


 ともかく、なにかあったときの遠距離攻撃要員が一人増えたわけだ。

 戦闘イベントが発生したら、その腕前を見せてもらおう。


「準備はできましたでしょうか」

「ええ、待たせたわね。こっちの準備は大丈夫よ」

「かしこまりました。それでは会場までご案内いたしますので、こちらへ」


 住人の先導に従い、城の中へと入っていき、城の廊下を歩く。

 廊下はしっかりと作り込まれており、調度品の類いも備え付けられていた。


「ふーん、こんなイベントでしか通らないような廊下も、しっかり作り込まれているのね」

「確かに。他のイベントで使う機会も滅多にないだろうに、しっかりしてるな」

「トワくん、それを言い出したら、私達は陰陽連の一番偉い人の部屋まで行けるよ」

「……そういえば、そこまで続く通路もしっかり作り込まれていたな。そう考えると、別のイベントでも使う機会があるのかな?」

「どうだろうねぇ。そもそも、このお城がどこのお城かわからないからねぇ」

「少なくとも、王都にあるお城じゃない事は確かじゃのう」

「そうね。遠目にしか見たことがないけど、このお城とは外見が異なってたわね」

「そうなるとボク達が行ったことのない国のお城かなー?」

「どうだろう? 聞いてみればわかるんだろうか」


 案内役の住人なら、この城がどこにあるか知っていてもおかしくはないな。

 もっとも、答えてくれるかどうかはわからないけど。


「それじゃあ、私が聞いてあげよう。……すみません、このお城ってどこの国のお城なんですか?」

「この城でございますか。この城はセイルガーデンの中にある古城でございます。今回のようなパーティなどで使うため、整備されている城でございますよ」

「なるほど。ありがとうございました」

「セイルガーデンの中ってことは、スタートの国のどこかってことよね」

「イベントでしか近寄れないエリア、というのも考えられるのう」

「ボク達も全てのマップを踏破したわけじゃないしねー」

「こんなお城があったなんて、驚きですね」

「そうだねぇ。おじさんも、こんなお城があるなんて聞いたことがないなぁ」


 ここがセイルガーデンだということに驚いてしまったが、まあ、ドワンが言ったように、イベント専用エリアの可能性もあるか。

 この辺、教授達なら後から調べそうな気がする。


「この中庭が本日のパーティ会場となっております。パーティの開始までもう少し時間がありますので、今しばらくお待ちください」

「ああ、案内ありがとう」

「では、ごゆっくりお過ごしくださいませ」


 案内してくれた住人が廊下の奥へと歩いて行き、俺達は案内された中庭へと足を踏み入れる。

 中庭に入った瞬間、転移と同じ感覚が体を走り抜け、先程まで無人だった中庭にたくさんのプレイヤーが現れた。


「トワくん、これってどうなっているのかな」

「おそらく、中庭に入るまでがユーザーなりパーティなりの専用エリアなんだろう。中庭に入ったら、そこからは他のプレイヤーとの共通エリアってことだろうな」

「おそらくそうでしょうね。……それにしても、仮装衣装のプレイヤーが多いわね」

「衣装を作れるプレイヤーの数がそれだけ少なかったってことじゃないの? 私もしっかり作ったけど、なかなか難易度の高い装備品だったわよ?」

「それは使った素材の品質が高いからじゃないかしら? 低い品質で作れば、それなりの難易度しかないはずよ」

「低ランクの装備品なんて、今更作っても面白くないじゃない?」

「……まあ、考え方は人それぞれよね」

「そういうこと。さて、それじゃあ、パーティを楽しもう!」


 曼珠沙華はパーティ会場の方へと駆け足で去っていった。

 相変わらずのお祭り好きだな。


「……私達も行きましょうか」

「そうじゃの。適当にパーティを楽しむとしようかの」

「うん。こういうパーティって初めてだから、楽しんでこよー」

「おじさんも適度に楽しませてもらうことにするよ」

「それじゃあ、ここで解散ですね」

「そうするか。まあ、なにかあったら、その時はまた集まろう」

「了解。それじゃ、また後で」


 曼珠沙華以外のメンバーも、それぞれ思い思いにパーティ会場へと向かっていく。

 この場に残ったのは俺とユキだけになった。


「それじゃあ、私達も行こう、トワくん」

「そうだな。せっかくのパーティだし楽しむとするか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る