312.次なる依頼

「忙しいところ、時間を取ってもらって申し訳ない」

「別にかまいはしないさ。それで、早速だけど本題に入ろうか」


 次元弐はショットガンが欲しくて俺を訪ねてきたらしい。

 まあ、知らない仲でもないし、引き受けても構わないかな。


「依頼は聞いていると思うが、ショットガンを用意してもらいたい」

「了解。ショートバレルショットガンとロングバレルショットガン、どちらが欲しいんだ?」

「できれば両方だ。それをアダマンタイトで作ってほしい」

「なるほど。ちなみに、今ならこういう金属もあるけど?」


 俺は試作品のショットガンをいくつか取り出して見せてみる。

 その性能を見て、次元弐の雰囲気が変わったな。

 さすがに効果覿面といったところか。


「トワさん、これは?」

「ある金属でできた銃身を使ったショットガンだ。見ての通り属性を2つまでならつけることができる」

「……その金属って我々でも調達できるか?」

「難しいんじゃないかな? 採掘場所の情報は独占しているし、公開するつもりもあまりないから」

「そうですか。……ちなみに、属性はどんな組み合わせでも可能か?」

「一応可能だな。ただし、属性の組み合わせによっては銃の攻撃力が若干下がるけど」

「……わかりました。ちなみに、アダマンタイトで作った場合はどの程度の攻撃力になるんだ?」

「ああ、それは試してなかったから何とも言えないところだな。多分、ショートバレルショットガンなら600は越えるはずだけど」

「それでしたら、今回は威力重視という事でアダマンタイト製のショットガンを2種類お願いしたい」

「アダマンタイトな。了解した」


 アダマンタイト製の銃身は在庫があったはずだから、作るには問題ないだろう。

 後は価格交渉だけど……


「さて、問題はショットガンの値段だな」

「ああ、話には聞いてるが相当高いんだろう?」

「高いな。その銃には高レベルボスモンスターの魔石が4つ使われてるからな」

「……っていうことは15Mくらいか?」

「アダマンタイト製にするなら魔石の数を減らせるから……12Mから15Mくらいになるかな。使う魔石の値段によってだいぶ変わってくる」

「……さすがに最高級装備を手に入れようと思うとかなり高いよな」

「まあ、今回ばかりは仕入れ値も高いからあまり値引きもできないんだ。そこは諦めてくれ」

「わかった。予算は30Mでショットガンの作成をお願いしたい」


 さすが、トップクランの人材。

 金払いがいいねえ。


「了解だ。納期は……大体、金曜日になるけど大丈夫か?」

「ああ、問題ない。それからもう一つ頼みたいことがあるんだが、大丈夫だろうか?」

「内容にもよるな。頼みたい事って?」

「ライフルの強化をお願いしたい。純粋な攻撃力強化と、強化結晶による強化だ」

「ライフルの強化は引き受けるけど、強化結晶による強化は他を当たった方がいいぞ? 『ライブラリ』の相場はかなり高いから」

「高い代わりに強化結晶の数値を予測できるとも聞いている。できれば強化値が高い結晶を使って欲しいからな」

「……それなら引き受けるが。ライフルの強化は……魔石を取り替えるだけでいけるから、10Mってところかな。それに強化結晶による強化は1個につき40万だ」

「わかった。その程度なら支払える。ライフルの強化はいつ可能だ?」

「現物があるならすぐにでも対応可能だぞ。工房まで一緒に来てくれ」

「わかった。よろしく頼む」


 俺は次元弐を伴って、工房へと戻ってきた。

 ……ユキはまだいないようだな。


「どうかしたのか? トワさん」

「ああ、いや。何でもない。それじゃあ、ライフルを出してくれ。早速強化に移る」

「わかった。……これが今使っているライフルだ。とは言っても、武闘大会の時に作ってもらったものを今でも使っているだけだが」

「あれから、テコ入れになるような素材が全然出回ってないからな。あの時点で最高傑作に近い装備を持ってたら、強化なんて考えないだろうさ」

「そう言ってもらえると助かる。それで、強化はできそうか?」

「ああ。これなら品質の上昇と魔石のパワーアップで600超えのライフルができそうだ」

「……いきなり攻撃力が2倍近くなるのは不安なんだが」

「それだけの金額はもらっているから気にするな。さて、それじゃあ、強化を始めるぞ」


 まずはこのライフルに使う魔石を選択する。

 魔石を選んだら強化を施して製造クリティカルを発生するようにする。

 そうして、強化された魔石を使ってライフルを強化。


 ……うん、やってることだけを抜き出したらすごい簡単な事しかしていないように見えるな。

 実際には魔石の調整で10分くらい使っているのだけど。


 ともかく、完成したライフルの攻撃力は621。

 さすが、レベル60台ボスといったところか。


「ライフル本体の強化はできたぞ。後は結晶強化だが……」

「強化結晶は持ってきてあるから、その中から選んで使って欲しい」

「わかった。それじゃあ、そこのテーブルの上に持ってきた結晶を出してくれ」


 次元弐に持ってきた結晶を出してもらうように指示し、俺の方では次元弐が取り出した結晶を鑑定して選別する。


「属性強化結晶がないけど、属性強化はしなくていいのか?」

「ステータスアップ重視でお願いしたい。大丈夫だろうか」

「そっちがそれでいいっていうなら構わないけど。……DEXメインで上げるならこの3つかな」


 どこで拾ってドロップしてきたのかはわからないけど、★7の強化結晶がいくつか混ざっていた。

 2種類強化の結晶はなかったけど、★7なら強化結晶としては十分効果的だろう。


「わかった。それで強化してもらえるか」

「了解。こっちはすぐに終わるから待っていてくれ」


 強化結晶による強化はサクサク終わるのですぐに終わらせてしまう。

 強化枠3つ使って、合計強化値がDEX+102か。

 まあまあかな。


「できたぞ。これが改造済みライフルだ」

「……今まで使ってたライフルの数倍強くなってる気がするが」

「まあ、今まで使ってたのが★10だったからな。それが★12まで上がって、魔石も強化されたとなれば大分違うさ」

「そうか、助かった。最近だと、ライフルでも攻撃力に悩んでいたからな」

「それはよかった。ちなみにハンドガンは大丈夫か?」

「……ハンドガンまで強化してもらうお金がな」

「ああ、なるほど。了解したよ。お金が貯まったらまた来てくれ」

「わかった。それで、このライフルの強化には、いくら払えばいいんだ?」

「キリのいいところで11Mって事にしておこう」

「わかった。……これで大丈夫か?」

「うん、11Mキッチリもらったよ。あとはショットガンだが、そっちは金曜日を楽しみに待っていてくれ」

「わかった。それではよろしく頼む」


 銃の発注作業を終えた次元弐は、俺の工房から出て行った。

 さて、これでまたショットガンの作成依頼が舞い込んできたな。

 ……ドワンにメールでアダマンタイト製の銃身も少し補充しておいてもらうか。


「トワくん、こんばんは。何をしてるの?」

「ああ、ユキか。こんばんは。ショットガンの銃身をドワンに発注しているところだ」

「そうなんだ。そういえば、白狼さんのショットガンってできたの?」

「ああ、そっちも問題なく納品済みだよ」

「そっか。それならよかった。トワくんの今日の予定は?」

「そうだな。もう少し店売り用のショットガンを作ったら、依頼が入っているショットガンを作成かな。納品日は明後日だけど余裕は持たせておきたいから」

「わかったよ。それじゃあ、私はカボチャ料理を色々と作ってみるね」

「ああ、了解した。頑張ってくれ」

「うん。上手くできたら味見をお願いね」


 この日の残りの時間は、ほとんどを店売りショットガンの作成に当てることになった。

 昨日あたりからショートバレルショットガンだけでなく、ロングバレルショットガンもぼちぼち売れるようになってきているので、そちらも補充しておく。

 ロックンロール達に納める分の装備を作れるのは明日になりそうだな。


 なお、作成途中で何回かカボチャ料理の試食をする事になった。

 本人が自信を持ってできたものばかりを口にしたから、どれもおいしかったよ。

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