308.ショットガン量産

「やあ、トワ君。おじさんのショットガンだけど、もう作る準備が出来たって本当かい?」

「ああ、準備は出来たぞ。後はどういう特性を持たせるかだけど」


 白狼さんから大量の魔石をもらった翌日の昼過ぎ。

 珍しく日中にログインする時間が取れたのでログインしてみるとおっさんがいた。

 会ったついでなので、おっさんに渡すショットガンの詳細を決める事にする。

 幸い、白狼さんから大量の魔石をもらったので、作成する分には問題が無くなった。

 後はおっさんがどういう武器が欲しいかによる。


「どういう特性って、どんな特性を持たせることができるのかな?」

「そうだな。アダマンタイトで作れば普通に攻撃力の高いショットガンができる。ヒヒイロカネで作った場合、武器に属性をつけることができるな」

「ほほう。属性付きの武器か。面白そうだねぇ。それならヒヒイロカネで作ってもらいたいな」

「了解。それで、つける属性はどうする?」

「そうだねぇ。おじさんの場合、魔法攻撃はほとんどしないからどの属性をつけてもらっても一緒なんだけど……どの属性が選べるのかな?」

「基本的にはどの属性でもいけるぞ。光属性だけ無いけど」

「そうなんだね。……そうだねぇ、状況に応じて使い分けできるように複数をお願いする事ってできるのかな?」

「まあ、不可能じゃないけど、少し時間がかかるぞ。ヒヒイロカネの数が足りてないから」

「それは理解してるよ。そうだね、まずは神聖と死滅でお願いできるかな?」

「神聖と死滅か。それなら、こんな感じになるけど、大丈夫か?」


 俺は昨日作っていた試作品を見せてみる。


「使っている魔石が通常モンスターの魔石だから攻撃力は低いけど、大体こんな感じになるぞ」

「ふむ、なるほど。問題ないよ。こういった感じで作ってもらいたいねぇ」

「わかった。それからロングバレルの方はどうする?」

「そちらは威力重視で作ってほしいからアダマンタイト製がいいかな」

「了解。ドワンにアダマンタイトのロングバレルを発注しておくよ」

「悪いけど頼んだよ。それじゃあ、おじさんは自分の作業に行くね」

「ああ、わかった。ちなみに、アクセサリーってどれくらいまで作れるようになったんだ?」

「★11ができる割合が4割といったところだね。スキルレベルの関係だと思うけど、まだ★11が安定して作れるようにはなってないよ」

「そうか、わかった。そっちも頑張ってくれよ」

「わかってるよ。じゃあ、おじさんは行くね」


 談話室からおっさんが去っていった後、ドワンにメールでアダマンタイトのロングバレル銃身を依頼しておく。

 今はログイン状態じゃないからな。

 ……まあ、休日とはいえ昼間にログインできてる俺の方が珍しいんだけど。


「……さて、ポーション作りを終わらせたらおっさんのショットガンを作るか」


 いつものように高ランクポーションの材料を仕入れに行き、帰ってきたところに柚月からフレチャで連絡が入った。


『トワ、今どこにいるのかしら?』

「薬草の仕入れが終わってクランホームに戻ってきたところだけど、何かあったのか?」

『それならちょうどいいわ。お店の方にきて頂戴』

「うん? わかった」


 店の方に呼び出されるという事は何かあったのかな?

 廊下を抜けて店舗部分まで行くと、柚月と顔見知りの人物が一人話をしていた。


「ああ、トワ、来たわね」

「こんにちは、トワさん」

「何かと思えばロックンロールが来てたのか。……という事は銃の発注か?」

「ああ、やっぱりわかりますか」

「それはそうだろ。このタイミングだしな。それで、何が欲しいんだ?」

「ショートバレルショットガンを10丁ほど作ってもらいたいんです。うちのクランでもシールドガンナー用に作っておこうって話になって」

「構わないけど、そっちのクランにも錬金術士がいたんじゃないのか?」

「そうなんですが、まだ★7までしか作れないんですよ。それで、皆で話し合って『ライブラリ』に依頼しようという事になりまして」

「そういうことなら構わないけどさ。店売りしてる分じゃダメなのか?」

「ダメという事は無いのですが、やっぱりカスタムガンが欲しくて」

「まあ、そう言う訳らしいわよ。いい機会だから店売りにもカスタムガンを置いてみたらどうかしら?」

「カスタムガンは攻撃力が高いからな。そんなの並べたらすぐに売れて転売の対象になるだろ」

「……まあ、それもそうね。それで、この依頼は引き受けるのかしら?」

「……そうだな、別に構わないぞ。ただ、あまり値引きはしないけど」

「お金なら大丈夫です。クランで集めた資金を預かってきてますから」

「ちなみにどれくらい集めてきたんだ?」

「ええと……10Mですね。この範囲で10丁作ってもらうことは可能ですか?」


 10Mか。

 それで10丁って事はさすがに★12を渡すわけにはいかないだろうな。

 あと、素材的にもメテオライトを使うのは微妙なラインだし。


「ミスリル製の★11でよければ10丁作れるぞ。それで構わないか?」

「はい、それで十分です。支払いは先払いの方がいいですか?」

「いや、完成した後で構わない。作るのに……そうだな、他にも依頼が入ってるから明日は難しいし……水曜くらいの納品で構わないか?」

「はい、構いません。それではよろしくお願いいたします」

「ああ、できたら連絡するから取りに来てくれ」

「わかりました。それではお願いします」


 注文を終えたロックンロールは足早に店から出て行った。

 ……やっぱり需要があるんだな、ショットガン。


「今回の依頼、随分あっさりと引き受けたわね」

「うん? ああ、引き受けなくてもどうせショットガンは増産することになるんだろうし、それなら引き受けてしまった方が早いかなと思って」

「なるほどね。でも、知らない相手だったら引き受けないんじゃないの?」

「まあ、そうかもな。ロックンロールあいつは知らない訳でもないし、たまにはこういう依頼も引き受けた方がいいかなと思って」

「その調子で依頼は色々と引き受けてくれるとありがたいんだけどね」

「やだよ、めんどくさい。製造クリティカルを狙って出せる生産者が少ない以上、あまり俺が引き受けるとそれ以外の生産者に仕事が回らなくなるだろうが」

「……そんな事は無いと思うけどね。最近だと、市場に並ぶ品の中にも★9の物が増えてきたし、一般的な生産職の技術もかなり向上してきているみたいよ」

「なるほどな。……それでも、製造クリティカルを狙って出せるっていうアドバンテージは変わらないだろ」

「それはそうだけどね。……そもそも、うちに依頼にくるプレイヤーはそれなりにお金を持っているから変わらないとも思うけど」

「その辺はやってみないとわからないだろうがな。ともかく、この依頼が終わるまでは、オーダーメイドはストップな」

「わかったわ。……ちなみに、他に受けている依頼ってどこからの依頼?」

「おっさんのショットガンと『白夜』からの依頼だ。『白夜』からは素材も提供してもらってるから可能な限り早く納品しないとな」

「なるほどね。了解したわ。とりあえず、これ以上注文が入るようなら来週後半以降になるって伝えておくわ」

「そこは任せた。……さて、それじゃあ俺はこれで行くぞ」

「ええ。また夜にね」

「ああ、また夜に」


 柚月との会話を終えたら工房に戻ってポーション作りだ。

 早いところメガポーションとハイカラーポーションも★12で作りたいところなんだけど、まだかかりそうなんだよな。


 ポーション作りで悪戦苦闘した後はショットガン作りだ。

 まずはおっさんのショートバレルショットガンを作ってしまうことにしよう。

 魔石はこれとこれでいいから、後は作成時に失敗しないように気をつけなくちゃだな。


 ―――――――――――――――――――――――


 緋緋色ショートバレルショットガン(聖滅) ★12


 ヒヒイロカネの銃身とカースドロードの魔石からできたショートバレルショットガン

 添加剤として緋緋色の亡霊武者の魔石が使われている

 ヒヒイロカネの特性により、攻撃時に属性効果が発生する


 装備ボーナスDEX+130

      DEX+60

 攻撃属性:物理・神聖・死滅


 ATK+604 DEX+190

 耐久値:200/200

 装弾数:4


 ―――――――――――――――――――――――


 うん、できた。

 ……それにしても攻撃力600超えか。

 距離による減衰が激しいとは言え、至近距離での戦闘だとメチャクチャな威力を発揮するんじゃなかろうか。

 というか、俺のライフルも強化すれば攻撃力600に届くのかも知れないが……まあ、止めておこう。

 最近だと、イニアスナイプを筆頭に竜帝ライフルしか使ってないし。


 さて、おっさんのショットガン、一つ目は無事完成した訳だが。

 この後は量産品のショットガンでも作ろうかね。

 幸い、量産用の部品は多めに作ってもらってる訳だし。

 後は魔石さえ用意すれば店売り用ショットガンの量産は可能なわけだ。

 マーケットボードから適当な魔石を購入してショットガンの量産といこう。


 こうして、昼間の残り時間は店売り用のショットガンを大量生産することとなった。

 なお、このときそれなり以上にまとまった数のショットガンを作成したのだが、この日作った分は月曜の夜までには完売していたと言っておこう。


 便利な武器ができたのは認めるけど、需要がありすぎじゃないかな?

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