305.カボチャ料理

 ユキとカボチャ狩りに行った次の日、いつも通りの時間にログインする。

 まずはポーション作りのために薬草を仕入れてこなくちゃな。

 ポータルから移動するため談話室に行くと、ドワンとイリスがいた。

 2人とも休憩中みたいだな。


「こんばんは、2人とも。休憩中か?」

「あ、こんばんはー。そんな感じかなー」

「うむ。ひとまず引き受けていた装備の作成が一段落ついたので、休憩中じゃよ」

「そっか。そういえば、昨日頼んでおいたショットガンのパーツってできてるか?」

「もちろんできてるよー」

「いつも通りクランの倉庫に入れてある。そちらから取り出してつかうといい」

「了解、ありがとな。それじゃ、俺は薬草を仕入れてくるから」

「うん、気をつけてねー」

「またパーツが足りなくなったら教えるのじゃぞ」

「あいよ。またな」


 クランホームのポータルから、薬草を売っている各地へと移動しポーション素材を可能な限り集める。

 素材の購入が終わってクランホームに戻ってみると、談話室にはもう誰もいなかった。

 ついでなのでマーケットボードで住人から買ってきた薬草が市場に流れてないか確認してみたが、やはり売ってなかった。

 住人NPC専売という事もないだろうから、おそらくはまだ誰も辿り着いていないダンジョンか、普段人が近づかないような場所に生息しているか、その辺りが原因だと思うけど自分で探しに行くのも大変なので、今ある数だけで我慢することにしよう。


 ポーション作りの準備が整ったので自分の工房に戻ってみると、ユキが料理をしている最中だった。

 作業台の上に乗っている食材は昨日取ってきたマジカルパンプキンとワイルドパンプキンだ。


「あ、トワくん、こんばんは。トワくんもこれから生産?」

「ああ、その予定だ。とりあえずはポーション作りからだけどな」

「とりあえずって事はその後も何か作るの?」

「その後はショットガンの試作だな。製作難易度的にはそんなに高くないから、あまり苦労はしないだろうけど」

「そうなんだね。私は見ての通りカボチャ料理に苦戦してるよ」

「そうなのか? そこまで苦労しているようには見えないんだが……」

「うーん、試作品を食べてもらえばわかるかな。とりあえずこれをどうぞ」


 渡されたのは2種類の煮物。

 片方がマジカルパンプキンで、もう片方はワイルドパンプキンだろう。

 だが、なんというか見た目が……


「料理する前はどちらも普通のカボチャなのに、煮ると色が変わるのか……」


 料理前はどちらも緑色の皮だったはずなのに、マジカルパンプキンは茶色、ワイルドパンプキンに至っては紫色になっている。


「そうなんだよね。とりあえず食べてみて」

「ああ、わかった」


 イマイチ食べたいと思わないが勧められている以上断るわけにもいかず、とりあえず食べてみることに。

 まずはマジカルパンプキンだが……


「……なんだろう、カボチャって元々甘めな食材だと思ってたけど、これはすごく甘いな」

「うん。マジカルパンプキンの料理ってすごく甘くなるんだよね」

「煮物でこれだと、他の料理にしたときが大変そうだな」

「カボチャサラダも作ってあるよ。……甘さ加減でいうとデザートに近いけど」


 なるほど、これだけ甘いと加減が難しいのか。

 たしかに、この甘さならデザート系にしか使えないだろうな。


 さて、次はワイルドパンプキンだが、こちらはどんな味になっているのやら。


「……渋い」


 ワイルドパンプキンの煮物は渋かった。

 なんというか、他に表現ができない程度には渋い。


「そうなんだよね。ワイルドパンプキンって、皮を取り除かずに料理しちゃうとすごく渋いんだよね」

「……これって皮を取り除けば大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫だったよ。ちなみに、皮を取り除いた煮物はこっちだよ」


 ユキから次の煮物を渡されてそれを口にしてみる。

 するとその味は、カボチャの甘さは感じずに何故か香ばしさを感じる味だった。


「……渋くはないけど、これはカボチャの味じゃないよな」

「うん、そうだよね。どちらかというと香辛料とかハーブに近い味かも」

「……見た目は普通のカボチャなのにな」

「だよね。とりあえずワイルドパンプキンの方は、ハーブの代わりに使えないか検討中だよ。試しにカボチャグラタンを作って見たけど、カボチャグラタンじゃなくてハーブグラタンになったし……」

「ちなみに、この皮を取り除くのってどのタイミングでやらなくちゃいけないんだ?」

「火を通す前かな。だからワイルドパンプキンの料理をするときは、まず皮を剥かなくちゃだね」

「……それって結構な重労働だよな」

「そうでもないよ。ドワンさんによく切れるピーラーを作ってもらってあるから、それを使って剥くだけだから」

「よく切れるピーラーね。素材が何でできているのやら」

「余り物のアダマンタイトで作ったって言ってたよ」

「……随分豪華なピーラーだな」

「ピーラー以外にも、キッチンナイフとか包丁とかも作ってもらってるよ」

「……ドワンも色々と作る奴だな」

「おかげで色々と助かってるけどね」

「とりあえず進捗具合はわかったよ。それで、料理としての効果はどうなんだ?」

「マジカルパンプキンを使った料理はINTとMNDが上乗せされるみたい。ワイルドパンプキンの方はSTRとVITかな」

「それって普通に作った料理の効果にさらに上乗せって事か?」

「うん、そうだよ。だからうまく作れば、4種類以上のステータスが上がったり、特定のステータスだけがとっても上昇したりっていう料理が作れるよ」

「さすがイベント食材だな」

「だよね。そういうわけだから、また今度カボチャ集めを手伝ってね」

「ああ、わかった。……ところで昨日もらってた槍ってどうなったんだ?」

「もう聖霊武器と融合させたよ。バフの効果量がわずかだけど上乗せされるようになったよ」

「そっか。バフ強化の槍だったのか。これで、バフとデバフ両方の強化ができる武器になったのか」

「そうだね。だから、この先も聖霊武器メインで戦っていけるかな。ちょっと耐久力が不安だけど」

「耐久力はこまめに回復させるしかないだろうな。魔石はいくらでも用意できるから、足りなくなったら教えてくれ」

「うん、わかった。それじゃあ、そろそろ料理の続きに戻るね」

「ああ、手を止めさせて悪かったな」


 ユキは作業台の方に戻っていき、再びカボチャ料理を試すようだった。

 さて、どんな料理が完成してくるのやら。


 俺の方も早いところポーション作りを終わらせてショットガン作りに入るとしよう。

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