304.イベントカボチャ交換

 街中のイベントである程度のカボチャを集めた俺達は、一路アイテム交換をしてくれる住人NPCの元へと向かう。

 交換係の住人は複数いて、それぞれの窓口で対応してくれているみたいだ。

 少しの間、ユキと並んでいるとすぐに俺達の番が回ってきた。


「ようこそ景品交換所へ。本日はどのようなご用でしょうか?」

「カボチャと交換出来るアイテムの一覧を見せてほしいんだけど」

「交換アイテムの一覧ですね。かしこまりました。少々お待ちを」


 受付の住人は二枚の紙を差し出してきた。


「こちらがマジカルパンプキンの交換アイテムの一覧。こちらがワイルドパンプキンの交換アイテムの一覧になっております」

「えっと、マジカルパンプキンは持っていますが、ワイルドパンプキンはどこで手に入るのでしょうか?」

「ワイルドパンプキンはパンプキンモンスターを倒したときに手に入りますね。パンプキンモンスターは普通のモンスターに比べて、多少弱めなのでさほど苦労しないでしょう」

「わかりました。それで、ワイルドパンプキンの方には品質制限がついていますがこれは一体何でしょう?」

「ワイルドパンプキンは倒したモンスターのレベルによって品質が異なります。そのために納品時の品質制限をつけさせてもらっております」

「……どうしようかトワくん。まだまだマジカルパンプキンも少ないし、今日は交換アイテムの一覧だけ見て帰る?」

「そうだな。それが良さそうだ」

「かしこまりました。それではまず、こちらがマジカルパンプキンの交換品一覧です」


 そう言って差し出された交換品目録には、主に見た目重視のアバター装備が揃っている。

 比較的入手が簡単なマジカルパンプキンで、ハロウィンの仮装を楽しんでほしいと言うことだろう。

 個人的に気になる衣装は……あまりないかな?


「ユキ、何か気になる衣装はあったか?」

「うーん、あまりないかな? でも、この『プリンセスドレス』っていうのは着てみたいかも」

「なるほどな。それじゃあ、マジカルパンプキンが集まったら交換してみるか」

「え、いいの?」

「あっても困る物じゃないしな。その程度のプレゼントならいくらでもするさ」

「ありがとう、トワくん」

「さて、マジカルパンプキンの一覧は見せてもらったけど、ワイルドパンプキンの一覧はどうなっているんだ?」

「はい、ただいま用意いたします。……これがワイルドパンプキンの交換品目録ですね」


 ワイルドパンプキンの交換品目録の中には多数の強力な武器が用意されていた。

 もっとも、これらの装備を交換するには上位のワイルドパンプキンが多数必要ではあるが。


「ワイルドパンプキンで交換出来るアイテムって、実用品がほとんどだね」

「そうだな。……ああ、でも、遊び心がくわえられているアイテムも中にはあるな」

「そうなの? 例えばどれ?」

「これだ。『天女の羽衣』っていうアイテムだが、これを装備すると空中に浮かび上がることができるらしい」

「それって便利なのかな?」

「どうだろうな。近接攻撃だと踏ん張りが利かないだろうし、浮いてる間は常にMPを消費し続けるみたいだから、相当腕がいいプレイヤーじゃないとネタ装備扱いになりそうだぞ」

「そうなんだね。こっちの『破壊の魔刃斧』は?」

「攻撃力はかなり高めだが、与えたダメージの一部を自分も受けるっていうデメリットもある装備だな。ヒーラーとの連携がしっかり取れてるなら十分に強い武器だが、連携が崩れた状態で調子に乗ってると反射ダメージだけで死にそうだ」

「……なかなか装備選択も難しいんだね」

「それはな。どうにもワイルドパンプキンと交換出来るアイテムがピーキーな気がするんだがな」

「……確かにそうかもね。あ、バフとデバフの効果が上がる代わりに、自分自身に対するポーションの効果が減るっていうアイテムもあるよ」

「……本当に需要が極端に偏ってるアイテムが揃っているな。ユキはこのアイテム、ほしいか?」

「いらないかな。神楽舞を使用しているとMPもSTもすごい勢いで減っていくから、ポーションの回復量が減るとかなり大変かも」

「なるほど。それならこのアイテムは見送りだな」

「うん、そうだね。他には……スキル使用時の消費が倍になる代わりに、スキル倍率を上げる、なんてアイテムもあるね」

「それは時と場合によっては役立つかもな。……ただ、装備可能レベル制限がレベル70以上か」

「レベル70じゃ、私達はしばらく使えそうにないね」

「そうだな。……ハルやリク、白狼さん達にメールで送っておくか」

「そっか、皆なら有効活用できるかもね」


 俺は早速3人に向けてメールを送った。

 メールの内容的に返信はないだろうと思っていたが、3人とも即返信を返してきた。

 どうやら、3人とも交換に来るようだな。

 これからワイルドパンプキンを乱獲に行くそうな。

 ……尊いワイルドパンプキンモンスターの冥福を祈るよ。


「トワくん、私達が扱う上で便利そうなアイテムってないかな?」

「うーん、俺達の場合、武器や防具はもちろんアクセサリーまで★12で揃えてるからな。いまさら、他の装備が割り込む隙があまりないというか……」

「だよね。それじゃあ、消耗品で何かいいアイテムはないかな?」

「消耗品ねぇ……あまり期待は持てないが」


 受付の人に頼んで消耗品や素材の交換リストも持ってきてもらう。

 素材の交換リストには、現時点で最上位クラスの素材も揃っていて交換品目としては悪くない。

 消耗品は……はっきり言ってかなり微妙だな。


「消耗品って、使いどころに困るアイテムがたくさん揃ってるね」

「確かにな。強力な範囲攻撃魔法を封じた、使い捨てのマジックジェムとか使いどころに困る」

「きっと戦闘系のクランならうまいこと使ってくれる気がするけどね」

「まあ、確かにな。とは言え、俺達じゃ扱いきれないんだから諦めるしかないだろう」

「それもそうだね。……とりあえず、私は聖霊武器の強化用に新しい槍をもらう事を目指すことにするね」

「そうだな、その方がいいだろう。俺は……今回は見送りかな」

「見送りはいいけどトワくんの強化はいいの?」

「正直、この場所でしかできない強化はないからな」

「そうなんだね。それなら安心かな」

「という訳で大将、この槍を予約しておきたいんだけど大丈夫か?」


 今まで対応してくれていた受付から変えて、装備品の交換係の住人に声をかけてみる。

 装備品の交換係の住人は、見た目からなんとも鍛冶屋のオヤジといったイメージの住人だった。


「うん? その槍なら構わんぞ。かなり長い間売れ残ってた奴だからな。引き取り手がいるなら万々歳だ。なんだったら少し値引きもしてやるよ」

「うわぁ、ありがとうございます」

「いいって事よ。それで、この槍を引き取りに来られるのは何日後くらいだ?」

「そうだな、遅くとも2日後には来られると思う」

「わかった。……まあ、期日を過ぎてもしばらくは保管しておいてやるよ」

「ありがとうございます。トワくん、早速モンスターを倒しに行こう!」

「そうだな。なるべく早めに終わらせた方がいいか。品質重視で行くと、火や風の魔法・魔術は禁止だからな」

「はーい。それじゃあ、早速モンスター退治に行こう!」


 珍しく素材集めだというのに、ユキのテンションが妙に高いな。

 何か悪い事でもなければいいんだけど。


 必要なワイルドパンプキンを集めるために、一路レベル60台の敵が待っているエリアへと向かう。

 そこは、かなりの乱戦状態になっていた。


「うーん、やっぱり考えることは皆一緒か」

「納得している場合じゃないよ。私達も速くカボチャ狩りに参加しよう!」

「そうだな。……機動性重視という事でシリウスに頑張ってもらうか」

「私はプロキオンだね。よーし、片っ端からモンスターを倒していこう!」


 気合十分なユキがハイテンションにワイルドパンプキンをドロップするモンスターを駆逐していく。

 同じ場所で固まって狩っていると効率が悪くなるので、人混みを避けながらなんども狩り場を移動しながら、着実にカボチャを収集していく。


 やがて、カボチャが規定数集まった。


「やった! カボチャが予定数揃った!」

「それはよかったな。それじゃあ、街まで戻ってアイテムを交換したら解散かな」

「え、もうこんな時間なんだ。それじゃあ、ログアウトして寝るしかないよね」

「そういうことだ。そら、早く交換所に行くぞ」

「うん、わかってるよ」


 戦闘を切り上げて俺達は、景品交換所へと向かう。


「おや、随分と早かったね。もう数日はかかると思っていたんだが」

「それはもう、頑張りましたから。それで、取り置きしてもらっていた槍はどうなりましたか?」

「しっかりとここに用意させてもらっているよ。それじゃあ、集めてきたワイルドパンプキンと交換だ」

「はい、これがワイルドパンプキンです」

「……確かに、品質、数ともに問題ないな。それではこの槍を渡すよ。今後も何かほしいアイテムがあったら積極的に集めてくれよ」

「わかりました。……ちなみに、マジカルパンプキンやワイルドパンプキンっておいしいんですか?」

「調理方法によるがかなりおいしい料理に化けるぞ、試してみる価値はあると思う」

「それを聞いて次の目標が決まりました。ありがとうございます」

「……まあ、頑張って」


 どうやら次はカボチャ料理に手を出すみたいだな。

 槍の効果も気になるし、帰ったら効果を聞いてみよう。


「それじゃあ用事も終わったし、クランホームに戻ろう、トワくん」

「そうだな。戻るとするか。それで今日は解散だな」

「うん、そうだね」

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