303.カボチャ狩りの季節

 ゲームからログアウトすると、すぐにキッチンへと向かう。

 そこでは夕飯をほぼ作り終えた遥華が待っていた。


「遅いよ、お兄ちゃん。今日の夕飯当番はわたしだけどさ」

「悪い。すぐ終わるだろうと思っていたイベントが少し長引いてな」

「むう、それって今日追加されたアップデートの話?」

「ああ。早速、ショットガンのレシピを手に入れてきた」

「ショットガンかー。なんていうかロマンがあるよね」

「……その辺はよくわからんが。とにかく、銃身とグリップのレシピを渡せば量産体制は整うかな」

「おー。お兄ちゃん、量産体制が整ったらわたしにも1つ売って」

「……構わないけど、今更銃を使うのか?」

「そこはロマン! 実戦でどれくらい使えるかはわからないけど」

「お前も適当だな。まあ、いいか。それじゃあ、ある程度、使い勝手の検証が終わったら教えるよ」

「ありがとー。お金は準備しておくからよろしくー」

「ああ。じゃあまずは、夕飯から食べてしまおうか」

「そうだね、わたしが盛り付けるから、お兄ちゃんテーブルまで持っていって」

「ああ、わかった」


 2人で夕食を取った後は今後の予定について話し合った。

 遥華達はフェンリル入手に挑んでみるらしい。

 今日のメンテナンスで調整が入ったことは、リリースノートで確認済みらしく『今度こそ倒す』と意気まいていた。

 俺の方は、まずドワンとイリスに適当な素材でショットガンのパーツを作ってもらって、ショットガンのテストだな。


 こうして、お互いにやることを抱えた状態でそれぞれゲームへとログインしていった。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――




 ゲームにログインしてすぐ、他のメンバーのログイン状態を確認してみる。

 すると、『ライブラリ』のメンバーは既に全員ログインしていた。

 どこにいるかまではわからないので、とりあえず談話室に向かって見る。

 するとそこに全員集まっているところだった。


「あら、トワ。あなたもログインしたのね」

「こんばんは、トワくん」

「これで全員集結じゃの」

「そうだねー。どこか出かける?」

「おじさんはどちらでも構わないよ」

「皆でどこかに出かける相談でもしてたのか?」

「いいえ、そんな事はないわ。ただ、ここにフリーで全員揃うのも珍しいからね」

「なるほど。……ドワンとイリスに仕事を頼みたいんだが、いいか?」

「うん、なんじゃ?」

「いいよー」

「実はさっき、ショットガンのレシピセットを入手してきたんだが、ショットガンを作って動作確認したいんだよ」

「ほう、もう手に入れてきたか。入手方法はどうなっていたのじゃ?」

「ギルドランク12があれば普通に買えるらしい。だから、入手には上位のガンナーが必要かな」

「なるほどー。それじゃあ、レシピをもらえる?」

「ああ、わかった。……とは言っても、イリスのレシピはライフルのグリップと共有なんだがな」

「……ホントだね。これなら作り直す必要はないかなー」

「となると、わしの方が作成のメインになるのか。トワよ、検証用にどれくらい作ればいい?」

「そうだな……耐久試験もしたいし、普通の鉄、魔鉄、ミスリル、メテオライト、アダマンタイトでそれぞれ5つ、それをショートバレルとロングバレルで1セットずつ作ってほしい」

「わかった。その程度ならば明日にはできるじゃろう。とりあえず、待っておれ」

「わかったよ。イリスはどうだ?」

「試作品用って事はモンスター素材を使う必要ないんだよね? だったら、すぐに用意できるよー」

「それじゃ、そっちも明日にもらうか」

「おっけー」


 さて、これで必要な発注は完了したな。

 後はどうするかな。


「トワくん、今時間あるの?」

「うん? そうだな、特にやることはないから暇かな」

「それじゃあ、私とハロウィンイベントを見て歩かない?」

「ハロウィンイベントか。結局、どんなことをやってるんだ?」

「私もよくわからないかな。お知らせは読み直してみたけど、特別なカボチャが手に入るくらいしかわからなかったから」

「ああ、付け加えておくなら、その特別なカボチャで仮装衣装が手に入るそうよ。それで、30日と31日は仮装パーティをするみたい」

「その時に仮装衣装を持ってないと参加出来ないとか?」

「そんな事もないらしいわ。全員参加可能ですって」

「つまり衣装は雰囲気作りのためか」

「身も蓋もない言い方をするとね。でも、集めたカボチャは食材にもなるらしいし行ってみたらどう?」


 断る理由もないし、今日はユキに付き合ってカボチャ狩りと行くか。


「わかった。それじゃあカボチャ集めに行くとしよう」

「うん、行こう。それじゃあ、皆さん、また」

「ええ、楽しんでらっしゃい」

「気をつけるのじゃぞ」

「ばいばーい」

「またね、2人とも」


 俺達はポータルを使わずに、そのままクランホームから外に出る。

【第2の街】も色々と飾り付けされてハロウィン一色だ。


「それで、どうやったらカボチャは手に入るんだっけ?」

「街中のミニゲームとかで集めたり、モンスターを倒して集めたりだよ」

「なるほど。それじゃ、今日はとりあえず街中のミニゲームとやらを探してみるか」

「うん、そうしよう」


 ユキと一緒に街中を色々ふらふらしてみる。

 すると色々なミニゲームが追加されてるのがわかる。

 ……まあ、ミニゲームというよりお祭りの屋台と言った方がわかりやすいけど。


「ヨーヨーすくいに射的、輪投げ、くじ引き……なんだかお祭りの屋台だね」

「だな。もう少し変わった出し物があるかと思ったんだが」

「……あ、あそこ、住人さんと試合して勝てたらカボチャがもらえるんだって」

「……へえ、スキルの類いは全て封印されるから実力勝負か。面白そうだな」

「やってみようか」

「そうだな、やってみるか」


 俺達は受付で参加費を支払うと、模造品の武器の前に案内された。

 好きな武器を選んでいいという事なので俺は刀を、ユキは薙刀を選択した。


「次の挑戦者はお前か。なかなか見事な構えかたじゃないか」

「それはどうも。油断しないでくださいよ。一瞬で勝負がついても面白くないですし」

「なかなか大口を叩くじゃないか。いいだろう、受けて立とう」


 お互いが舞台の上で一定距離を離れて立つ。

 そして、審判の開始の合図とともに互いに斬りかかった。


「でぇぇえい!」

「なかなかの迫力だな! でもそれだけなら!」


 俺は対戦相手の攻撃を横から叩いて弾き飛ばし、そのまま相手に切りつけた。


「勝負あり! 勝者、挑戦者!」


 相手の手からは剣が弾き飛ばされており、こちらの刀は相手の首筋をかすめたんだ。

 こちらの勝ちになって当然だな。


「いや、予想より遥かに強かったな。それ、これが景品のマジカルパンプキンだ。受け取れ」

「ありがとう。これって連戦できるのか?」

「連戦は勘弁してくれ。一日一回だけだよ」

「了解。明日もカボチャが必要になったらくるよ」

「ああ、それならば受けて立とう」


 無事、景品のカボチャも受け取って、次のユキの試合を見学するだけだ。

 ……しかし、マジカルパンプキンって他に名前はなかったものか。


 さて、ユキの試合だが、こちらも特に問題なく終了した。

 出方を窺う相手に対して一気に斬りかかり、まずは持っている武器を弾き飛ばしてから、喉元に刃を向けるといった方法で勝っていた。

 これで、無事にカボチャは2つになった訳だ。


 その後も、各ミニゲームを回ってカボチャを集めてきた。

 初日としてはまずまずの量が集まったんじゃないかな?

 他の街まで足を運べば、もっと手に入るんだろうけど。


「トワくん、この後はどうしよう?」

「カボチャをイベントアイテムに交換してくれる住人NPCのところに行ってみよう。何にどれだけのカボチャがいるのか調べておきたい」

「うん、わかった」


 交換担当の住人は各街にいるらしいので、ここにもいるだろう。

 ミニゲームの担当者に居場所を聞けば、すぐに教えてもらえたのでそちらに向かう事にする。

 どんなアイテムが交換対象になってるんだろうな。

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