297.ゴーレムの魔核集め 2

 翌日、教授と合流した俺達は【マナファウンテン】から北に向かう街道を走っていた。


「教授、プロトタイプゴーレムγってどんなボスなんだ?」

「一言で言ってしまえば物理特化型のボスであるな。攻撃も防御も物理がメインである。従って弱点は魔法攻撃全般ということになるのであるよ」

「なるほど。物理攻撃は効かないタイプか」

「そうである。それで気をつけなければいけない点は1つ。魔法アタッカーがタンクよりもヘイトを稼ぎやすいのである。その手加減ができるかどうかで難易度は大きく変わってくるのであるよ」

「つまり、タンクのヘイトコントロールを越えない範囲でそれだけダメージを重ねられるか、と」

「わかりやすくいえばそうである。ユキ君は何か質問はあるかね?」

「ええと……バフの種類なんですけど、魔法攻撃力上昇は使わない方がいいでしょうか?」

「そうであるな。魔法攻撃力上昇は、魔法ダメージを上げすぎる恐れがあるので使わない方が良さそうである。もっとも、周回する事になって、周回スピードを上げるのであれば必要になるであろうが」

「じゃあ最初は使わない方がいいですね」

「そうであるな。初回は様子見で使わない方がいいであろう」

「わかりました。そうします」

「……さて、ボスエリアに到着である。準備は大丈夫であるか?」


 いつの間にかボスエリアまで走ってきていたようだ。

 ここのボスエリアも、破壊されて廃棄された研究所のように見えなくもない。


「準備できたぞ」

「私も大丈夫です」

「では始めるのである」


 ボス戦を開始すると、空から一体のロボットが降ってきた。

 どうやらこいつがプロトタイプゴーレムγらしい。


 見た目は動物系のゴーレムだが、体高3メートル近くありそうな巨体はやはり圧巻である。

 俺達が指示を出す前に、プロキオンが飛びかかり動きを封じようとする。

 だが。プロトタイプゴーレムγもその意図を読み取ったのか、大きく飛下がってプロキオンの攻撃を躱した。


「プロちゃん、攻撃よりも注意を惹きつける事に集中して!」

「ウォフ」

「俺達はプロキオンよりもヘイトを稼がないように注意しながら攻撃だな」

「了解了解。そこのところの加減は任せてよ」

「……イマイチ信用できないんだが、まあ、うまくやってくれることを信じてるよ」

「大丈夫だって。心配性だなぁ」

「トワ君。こちらもデバフの準備完了である」

「オッケー、それでは総攻撃タイムといこうか!」


 プロトタイプゴーレムγの意識がプロキオンに集中している隙に、俺達残りのメンバーが攻撃を仕掛ける。

 まずは教授のデバフを複数付与し、その隙に俺とエアリルでプロトタイプゴーレムγに大打撃を与えた。

 ある程度ダメージを与えたら戦線を離脱し、プロキオンが十分に敵を惹きつけるのを待つ。


 この繰り返しを行うこと10分あまり、遂にプロトタイプゴーレムγの最終形態まで辿り着いた。


「こいつの最終形態では攻撃目標がランダムになるのであるよ。後衛陣が狙われたらターゲットが切り替わるまで逃げ回るのが推奨である」

「了解。さて、最初は誰を狙ってくるのかな……」


 最終形態に移行する準備なのか、プロトタイプゴーレムγは地に伏せて動かない。

 動かないことをいいことに魔法を連続で加えていると、不意に立ち上がりこちらに向かって駆けてきた!


「さすがに遊びすぎたか!?」

「いや、それはないのである。最初のターゲットがそちらにいったと言うだけであるよ」

「ちょっとちょっとー! わたし、大ピンチ!! ヘルプ!!」


 そう、狙われたのは俺じゃなくてエアリルだったのだ。


「助けたくてもターゲットを奪えないからな。目標が変わるまで逃げ切ってくれ」

「そんなー」

「さてこの隙にデバフを重ねがけしておくのであるな」


 エアリルという犠牲を無駄にせず、俺と教授、教授の精霊は着実にダメージを重ねていく。

 次のターゲット変更は、運がいいことにプロキオン狙いだった。


「プロキオン狙いなら問題はないだろうな。一気に決めてしまおう!」

「そうであるな、残りHP1割弱。十分に削りきれるはずであるよ」

「何でもいいから早く倒そうよ。疲れちゃったよ……」


 プロトタイプゴーレムγに追い回されて疲労困憊と言った様子のエアリルは置いておいて、俺と教授は決めの準備を行う。

 止めは教授のバフ全開からの天雷魔術だ。


「それでは行くのであるよ! アビスブラスト!」


 アビスブラストは全ての能力を下げることができるデバフ魔術らしい。

 その代わり、消費MPも高いし成功率もイマイチとは聞いてるけど。

 今回は1回で成功したようで、残りのデバフを付与していっている。


「トワ君、十分であるよ!」

「それでは遠慮なく。カムイカズチ!」


 派手な

 エフェクトとともに現れた雷球がプロトタイプゴーレムγを飲み込み、やがては消え去る。

 プロトタイプゴーレムγのHPも0になっているし、もう大丈夫だろう。


〈エリアボス『プロトタイプゴーレムγ』を初めて撃破しました。ボーナスSP6ポイントが与えられます〉


 さて、肝心のボスドロップ抽選だが……


「俺はハズレだな」

「私は今回当たったよ」

「私も当たったのである。これはしまっておくのであるよ」


 俺にはドロップしなかったけど、ユキと教授にドロップしたようだ。

 それならば、次に向かった方がいいというものだろう。


「教授、次はガーディアンゴーレムだったと思うけど、このまま【工業都市】に向かえばいい?」

「うむ、それで問題ないはずである。早いところ移動するのであるよ」

「わかりました。行こう、2人とも」


 それぞれが騎獣に乗って移動を始め、ボス戦から30分ほどで【工業都市】に辿り着くことができた。

 さて、ここからはどう移動するんだ?

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