282.魔術スキルの継続調査
夕飯も食べ終わりいつものログイン時間。
今日は昼間もそれなりにログインしていたが、ここからが本番である。
本番であるが、談話室でユキと柚月を待っている間にドワンが顔を出した。
「トワか。これから教授からの調査依頼の続きかの?」
「ああ、その予定だよ。ドワンはどうしたんだ?」
「ヒヒイロカネを精製してインゴットを作ったのじゃが、ここから先なにを作るか迷っておってのう」
「ドワンの好きなものを作ればいいんじゃないか?」
「うむ、そうなのじゃが。どうにもインゴットの数が中途半端でのう。初めて作る以上、最高品質は無理じゃろうし、何を作ったものかと思ってな」
「それこそ好きなものでいいと思うんだけどなぁ」
「そうじゃのう……。ふむ、せっかくトワが情報を持ってきてくれたのじゃし、お主用に打刀でも作るとするか」
「打刀? 構わないけど、輝龍刀のオリジン武器がある以上、死蔵品になる可能性が高いぞ?」
「構わんよ。習作じゃしの、飾り代わりにでも使っておくれ」
「それでいいなら作ってもらっても構わないけど、いくら?」
「金はいらんよ。習作を押し付けるんじゃ、代金までもらうわけにもいくまい。できればまた今度ヒヒイロカネを掘りに行くときに手伝ってもらいたいところじゃがな」
「……さすがにレベル60台後半のモンスターがいるダンジョンを案内するのはきついんだけどな」
「そこは何とかしてもらいたいものじゃな。さて、それではわしは打刀を作ってくるとしよう。明日には完成しているじゃろうから、時間があるときに渡そう」
「ああ、そこは任せるよ」
「うむ、それではな」
作るものが決まったドワンは、意気揚々と談話室を後にしていった。
……それにしても武器か。
夏休みイベント後半戦で手に入ったオリジン武器の交換チケットがまだ余ってるんだよな。
それも3枚。
2枚は最終日のザコモンスター部門ダメージランキング1位の賞品。
残りの1枚は、サポートランキング上位者に配られた賞品だ。
はっきり言って、サポートランキング上位者は生産職ばかりなのでオリジン武器をもらっても困ると思うんだが。
ともかく、俺の手元にはオリジン武器の交換チケットが3枚残されている。
交換期限は9月いっぱいなので、そろそろ何をもらうか決めないといけないな。
……無難に、残りのオリジンライフル3種類で構わない気がするけど。
「あら、トワ。今日も早いのね。何かあったかしら?」
「ああ、柚月か。特に何もないが。ま、早くログインできただけだな」
「そう。それじゃあ、ユキが来たら調査再開ね。……と言ってもどこから当たればいいか見当が付かないんだけど」
「そうだよなぁ。とりあえず、『精霊魔術研究所』に行ってみようと思うんだが」
「そこから調べ直すのが妥当なところよね。何か収穫があればいいんだけど」
「そもそも両方を覚えようと思って行動しているプレイヤーが他にいないとは思えないんだがな」
「そこも謎なところよね。他のプレイヤー達はどうしてるのかしらね」
「まったくわからないところが困るよな。……教授が何も教えてくれないって事は、掲示板とかでも情報がないって事だろうし」
「でしょうね。まったく、とんだ大仕事になってきたわ」
「まあ、引き受けたものは仕方がないさ。報酬の装備強化の情報に期待するとしよう」
「それもそうね。……あ、ユキも来たみたいね」
「こんばんは。お待たせしましたか?」
「まだ集合時間前だし大丈夫よ。それじゃあ、まずは『精霊魔術研究所』に向かってみましょうか」
「はい、わかりました」
「何かあるといいんだがなぁ」
俺達3人はポータルから移動して『精霊魔術研究所』へと足を運ぶ。
『精霊魔術研究所』に着いたら、研究員のガレウスと面会を希望した。
だが、今はガレウスは研究所に不在らしく、ガレウスの上司と面会することとなった。
「ようこそ、異邦人諸君。ガレウスと会いたかったようだが、用件は何かね?」
「前にガレウスとあったときに『原初魔術』にも興味を示していた様子でしたからね。何かそちらでわかったことがあるのではないかと思い、改めて聞きに来たんですが……」
「……なるほど。ガレウスが『原初魔術』の研究がしたいと言ってマナリーフ王国に向かったのは、君達の影響という訳か」
「マナリーフ王国に? それはまたアグレッシブというか、えらい行動が早いというか」
「ここは『精霊魔術』を研究する研究所だからな。『原初魔術』の資料はほとんど存在しない。ガレウスはそのわずかな資料では満足できずにマナリーフ王国へと向かうことを決めたようだ」
「……なるほど。でも、それって大丈夫なんですか?」
「我々としても『原初魔術』の解析は有用な情報となる。それを考えれば、ガレウスの行動はいささか性急過ぎるが我々にとってはプラスに働くだろうからな。マナリーフ王国行きを許可した次第だ」
「……という事は、ガレウスに会いたければマナリーフ王国に向かう必要があると」
「そうなる。目的地は『原初魔術研究所』だといっていたな。ここの所長から書状を受け取って向かったから、無下な扱いはされていないだろう」
「それじゃあ、『原初魔術研究所』に向かった方が良さそうですね」
「『精霊魔術』と『原初魔術』の関わりを聞きに来たんだろう? 私がここで答えられることよりも、ガレウスを追ってあいつから聞き出した方がいいだろう」
「でも、ガレウスがまだ『原初魔術研究所』に辿り着いてない可能性は?」
「それはないな。竜車を乗り継いで向かうと言っていたから、最低でも『原初魔術研究所』には辿り着いているはずだ」
「という事は、俺達も『原初魔術研究所』に向かった方が良さそうですね」
「そうなる。手数をかけるが『精霊魔術』と『原初魔術』の繋がりについて調べたいのであればあちらに向かってくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
「ああ、気にしなくていい。我々としても新たな研究分野が見つかって喜ばしいことだからな。それでは、失礼するよ」
対応してくれた上司を見送り、俺達は『原初魔術研究所』へと向かう事にした。
『原初魔術研究所』もポータル転移を使えばすぐにたどり着けるからそんなに苦労はしないんだけどな。
ポータル転移で『原初魔術研究所』にたどり着いたわけだが、いきなりガレウスが来ているかどうかを尋ねるのもどうかと思い、こちらの研究員だったリバウトとの面会を希望した。
応接間に通されはしたが、ここでもリバウトではなく彼の上司だという男と話をすることになった。
「リバウトも今は『原初魔術研究所』にいないんですか?」
「ああ、『精霊魔術研究所』からやってきた研究員と意気投合してな。『原初魔術』と『精霊魔術』の繋がりについて調べると言ってここを飛び出していったよ」
「……ここを飛び出していったって。ここ以上に『原初魔術』の情報が揃っている場所はないんじゃないの?」
「確かに、『原初魔術』の研究であれば『
「学術都市ですか。それってここから遠いんですか?」
「馬を走らせて4時間程だな。研究都市が『原初魔術』の研究に特化しているのに対し、学術都市はそれ以外の魔法の研究を幅広く行っている都市だ。『原初魔術』と『精霊魔術』の繋がりを調べるにはこちらよりもいいという判断だろうな」
「わかりました。2人に会いたければ学術都市に向かえばいいんですね」
「そういうことだ。ただ、会いに行ったとしてもすぐに会えるかどうかはわからないがな。……一応、私の方から紹介状を認めておいた。これがあれば多少は話がスムーズに進むだろう」
「ありがとうございます。それじゃあ、学術都市に向かいますね」
「ああ、気をつけてな」
こうして、俺達は研究都市から学術都市に向かうことになった。
教授に情報を聞いてみたが、研究都市と学術都市の間ではエリアボスがいないそうだ。
どうやらこの2つの都市は同じエリアに存在している扱いのようだな。
ボスもいない道を4時間走るのも手間ではあったが、騎獣を飛ばして学術都市まで辿り着いた。
学術都市は、研究都市をさらに一回り大きくしたような都市である。
……さて、ガレウスとリバウトはどこで研究をしているのやら。
「トワ、どうやら街の中央部に色々な研究についてどこで行われているか調べられる施設があるそうよ」
「じゃあ、そこに行って話を聞いてみればいいんだな」
「そのようね。まずはそこに向かいましょう」
「そうですね。闇雲に探し回っても見つかるかわかりませんし、そこに向かいましょう」
「だな。それじゃあ、急ぐとするか」
俺達はその案内所のような施設まで足を運ぶ。
個人の研究まで管理しているかどうかは怪しいところだが、他に当てはない以上、そこに行くしかないわけだ。
その施設は本当に街の中心部に建っており、見つけるのは容易だった。
施設の中に入って受付で話をしてみると、確かにあの2人が研究するために滞在していることがわかった。
ただ、あくまで個人的な研究の域を出ないという事で内容は非公開だったのだが、『原初魔術研究所』でもらってきた紹介状のおかげでどこで研究活動をしているかの情報をもらう事ができた。
居場所がわかれば後はそこに行くだけである。
2人が研究場所として滞在している研究所に足を運び、2人への面会を求めるとすんなりと面会することができた。
「やあ、3人とも。予想通り来てくれたね」
「ああ、呼び出すあてがなかったからそちらから尋ねてきてくれるのを待つしかなかったが、思った以上に早く来てくれたな」
「まさか2人が一緒になって研究してるだなんて思いもしなかったよ。それで、俺達を待っていたっていう事は何か進展があったんだな?」
「まあ、そういうことだね。とりあえず今の進捗を話すから、適当に椅子に座ってよ」
「そうだな。そう長くなるわけではないが、落ち着いて話がしたいところだからな」
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