281.緋緋色の亡霊武者
「さて、ボス戦に挑むわけだけど、ユキさんのバフはどうしようか?」
確かに、初見のボスであるわけだし神楽舞によるバフとデバフは大事だよな。
「無難に、物理攻撃力上昇、物理防御力上昇、魔法防御力上昇、移動速度上昇、この4つでいいんじゃないですか?」
「とりあえず様子見としてはこれで問題ないしね。ユキさん、お願いできるかな?」
「はい、わかりました。任せてください」
「ガイスはタンクとして亡霊武者の攻撃を受け止めてくれ。他のメンバーは隙を見ながら攻撃。初見だからどんな攻撃パターンかもわからないから、十分に注意してくれ」
「わかりました。それでは開戦と行きましょうか」
「そうだね。ガイス、最初のターゲットは任せたよ」
「了解です。シールドブーメラン!」
ガイスさんの攻撃から一気に戦闘が開始される。
緋緋色の亡霊武者はHPバーが一本しかないようだが、だからと言って弱いとは限らない。
さて、どういった攻め方をしてみるか……
「ガードブレイクスラッシュ! ……うん、どうやらデバフの類いは効かないのかな?」
「亡霊武者ですし、物理攻撃には耐性があるという事でしょう。そうなると必然的に、トワさんの負担が増しますが大丈夫ですか?」
「あー、多分大丈夫だと思いますよ。とりあえず、朱雀、行け!」
前もって詠唱してあった十二天将・朱雀を緋緋色の亡霊武者に向かって飛ばす。
亡霊武者の背後から直撃はしたが、与えたダメージ量は5%程度しかなかった。
「……朱雀でもあの程度のダメージしかあたらないのですか。これは骨が折れそうですね」
「確かにね。攻撃自体は単体攻撃しかないみたいだから、今のところそこまで脅威じゃないけど、この先、攻撃パターンが変わった時にどうなるかが心配だね」
「後の心配も大事じゃが、今は目の前の問題をクリアする方が先ではないかの?」
「ああ、それもそうだね。僕達も全力で攻撃を仕掛けようか」
白狼さんに十夜さん、ドワンも戦列に加わり、亡霊武者に攻撃を仕掛けていく。
亡霊武者の身長は3メートル弱と言ったところなので、攻撃する分には申し分ない大きさがある。
最初のうちはターゲットをとり続けているガイスさんにばかり攻撃を仕掛けていたが、周囲から攻撃されるのを嫌がったのか、周りにいた3人を吹き飛ばすような攻撃を繰り出してきた。
ダメージ自体はさほど大きなものでもなかったが、弾き飛ばされて距離が開いたのはちょっとめんどくさいかな。
「やれやれ、一筋縄では行かん相手じゃわい。ここは火力を上げて対処するしかないのう」
「そうですね。これだけ攻撃しても、まだ、7割以上残ってますから物理耐性くらいは持っているのでしょう」
「今はともかく、攻撃あるのみかな。物理攻撃もまったく効いてないわけじゃないし、諦めずに削っていこう」
前衛3人はひたすら殴ってHPを削る作戦に出たようだ。
俺としては、十二天将で弱点を見つけられれば儲けもの、程度の感覚で攻撃の手を緩めない。
今まで使った魔法の中では、やはり朱雀が一番効果があった。
元々の攻撃力が高いのもあるが、おそらくは弱点属性に上手くあたったのだろう。
朱雀が弱点という事は、火属性か神聖属性が弱点という事になるが……
色々と考えている間にリキャストタイムが終わっていたようなので、今度は白虎を叩きこんでみる。
すると、白虎のダメージはおおよそ3%程度しか与えることはできなかった。
となると、朱雀が弱点属性を攻撃しているのは間違いないだろう。
あとは、神聖魔術か炎魔術かという話になるが……
まずは、関係ない雷鳴魔術でも当ててみるか。
「いけ、サンダージャベリン!」
「グギャァァ!」
おや、雷鳴魔術も効果が高いのかな?
スキルランクが違うから一概には言えないが、1%程度のダメージを与えることに成功したし、それなり以上には有効属性だったらしい。
何よりも、行動を一瞬だけ阻害できるようなので上手く当てることができれば、前衛陣のサポートにもなるな。
「トワ君、今のは?」
「普通のサンダージャベリンですよ。亡霊なんで効果は薄いかと思いましたけど、意外にも効果はてきめんだったようですね」
「そのようだね。次からは、撃つときに合図がほしいかな。そうすれば一斉攻撃もできるだろうし」
「そうですね。次からはサンダージャベリンを使う前に声をかけるとします。……という訳で、次のジャベリンの用意はできました」
「わかったよ、僕もすぐに配置に戻ってスタンバイするよ」
「お願いしますね」
白狼さんが亡霊武者を囲むような位置取りになったところで、ジャベリンの発射合図が来たのでサンダージャベリンを撃ちこむ。
亡霊武者は先程と同じように一瞬だけ動きを止めて無防備になる。
そこをすかさず『白夜』のメンバーとドワンが攻撃を仕掛けて、一気にダメージを与えていく。
どうやら、この硬直の直後は物理攻撃に対する耐性も下がるようだ。
試しに、硬直がとけてすぐにサンダージャベリンを撃ちこんでみたが、今度は硬直を取れなかった。
硬直を取るにはある程度の時間を空けないといけないらしい。
サンダージャベリンの隙間の時間には、朱雀やホーリージャベリンなどの神聖属性スキルで攻め立てていった。
このボスにも強化形態が搭載されていて、HPが20%を切ると腕が6本に増殖して攻撃するようになってきた。
そこからはかなり綱渡りの戦闘になってしまったが、無事にボスを倒しきることに成功した。
〈ダンジョンボス『緋緋色の亡霊武者』のワールド初撃破です。ボーナスSP10ポイント、シルバースキルチケットが与えられます〉
本当にダンジョンボス攻略なのにボーナスSPとスキルチケットがもらえたな。
ダンジョンボスは攻略報酬無しだと思ってたんだけど。
「トワ君、どうしたんだい、不思議そうな顔をして?」
「ああ、白狼さん。いや、本当にダンジョンボス攻略なのにクリア報酬があるんだなと思って」
「ああ、それか。ダンジョンによってはクリア報酬もあるんだよ。基本的にはクリアする必要のない高難易度ダンジョンだけだけどね」
「なるほど。つまり、ここもそう言ったダンジョンに含まれていたと」
「そういうことだね。報酬はもらって困るものじゃないし、気にせずにもらっておけばいいと思うよ」
そう言うことなら、気にせずにもらっておくか。
想定外だったけどクリア報酬が入ったので、後はドロップアイテムの分配だ。
とは言え、緋緋色の亡霊武者からドロップしたアイテムは、全てヒヒイロカネ鉱だったのだが。
「ヒヒイロカネ鉱が18個か。これは途中の採掘次第では鍵が手に入るか微妙なラインだね」
「確かにそうかもしれませんね。。それで、他のクランメンバーにはここの情報を送ったんですか?」
「ああ、送信済みだよ。……とりあえず、今回の報酬のヒヒイロカネ鉱は全て受け取っておいてくれ。残りの2パーティの報酬で鍵を作ってもらう事にするよ」
「わかりました。それでは、まだ何かありましたら呼んでください」
「ああ、その時はよろしくね」
ヒヒイロカネの坑道をクリアした俺達『ライブラリ』メンバーは、ポータルからクランホームに戻り解散となった。
途中で採掘出来ていたものも含めて大量のヒヒイロカネが手に入ったドワンは、早速何か作ってみるらしい。
ユキも、夕飯のためにログアウトしていったし、俺もログアウトするとしよう。
今日の夜は教授の依頼の続きか。
簡単に終われればいいんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます