272.【精霊魔術】アンロック

 3人揃って『精霊魔術研究所』へと戻り、毎度おなじみになってきた応接間へと案内される。

 そこで待つこと暫し、毎度おなじみとなった研究員がやってきた。


「やあ、予想通りと言ってはなんだけど、早かったね」

「そうね。敵の攻撃を受け続けるだけでいい訳だもの、そんなに苦労はしなかったわね」

「普通だと魔術士は接近戦になれてないから、そんなに簡単にはいかないものだけどね。この辺も、異邦人ならではの慣れなのかな」

「そこまではわからないわ。それで、これでスキル修練は終わりなのかしら?」

「うん、これで終わりだよ。まずは指輪を回収させてもらおうかな」


 研究員は俺達から指輪を受け取っていく。

 3人全員の指輪を受け取ったあと、指輪を眺めて嬉しそうに微笑んでいた。


「いやー、これで僕らの研究も捗るよ。最近だと、こういったサンプルを集めるのも大変でね」

「……そう言えば、その指輪は何に使うんだ?」

「ああ、これかい? 『精霊魔術』の基礎理論を調べるためのサンプルになるのさ。『精霊魔術』の素養がある人間に使ってもらうことで、『精霊魔術』が発動するときの魔力の流れを記録しておく。僕らはそれを解析して、より効率よく『精霊魔術』が発動できるように研究をしていくわけさ」

「……難しいことはわからないけど、そっちにも利益がある事だって事はよくわかったよ」

「難しい理論なんてわからなくてもしょうがないさ。僕らだって普通の『魔術』と『精霊魔術』の差は研究中なんだ。それをいきなり理解されてしまうと立つ瀬がないと言うものだよ」

「そんなものかね」

「そう言うものだよ。……さて、それじゃあ、これで君達は『精霊魔術』が覚えられるようになっているはずだ。実際に覚えるかどうかは任せるけど、もし覚えるのであれば有意義に使っておくれよ」


〈チェーンクエスト『精霊魔術の取得Ⅲ』をクリアしました。スキル【精霊魔術】が取得可能になりました〉


 システムメッセージも受け取ったし、これで『精霊魔術』についての調査は完了だろう。

 さて、そうなると、今度は『原初魔術』について調べなきゃいけないんだけど……


「なあ、『原初魔術』については何か知らないか?」

「え? ああ、そうだね……。僕はあまり詳しくないけど、まず『精霊魔術』とは反発しあうって言う話を聞いたことがあるよ。そのせいで、『精霊魔術』と『原初魔術』の両方を覚える事ができないんだとか」

「……他に知っていることは?」

「うーん……『精霊魔術』は数百年の歴史があるんだけど、『原初魔術』はここ最近、数十年で完成した技術らしいね。別の国で研究されてる技術だから、あまり詳しいことは伝わってこないんだよ。済まないね」

「いや、こちらこそ変なことを聞いて悪かったよ」

「……そうだね、色々と聞かれると『原初魔術』についても調べてみたくなってきたよ。……そういえば、名乗ってなかったよね。僕の名前はガレウス。君達の名前は?」

「ああ、そう言えばお互い名乗ってなかったな。俺はトワ」

「私は柚月よ」

「ユキっていいます」

「トワに柚月、ユキか。よし、覚えたよ。『原初魔術』について出来る範囲で調べさせてもらうよ。そっちも何かわかったら、教えてもらえるかな?」

「ああ、わかった。それじゃあよろしく頼むよ、ガレウス」

「うん、よろしく。できれば、『原初魔術』を調べることで何かいい発見があると嬉しいんだけどね。それじゃあ、今日はこれで失礼するよ」


 軽く挨拶を済ませるとガレウスは立ち去っていった。

 ……クエスト通知も出ないし、これ自体が何かのフラグという事はないのか?


「……さて、研究員さんは帰ってしまったけど。トワ、これからどうするの?」

「そうだな……。一旦帰って、教授に報告してみよう。何か変わったことがあるかもしれない」

「そうですね。進行具合がよくわかりませんし、教授さんに聞いてみましょう」

「結局、それが一番ね。わかったわ、戻りましょう」


 俺達も研究所を出てクランホームへと帰還する。

 クランホームに帰ってきた後、教授に連絡するが今は忙しいらしく、話は夜に聞きたいそうだ。


「……さて半端に時間が余ったわね。どうしようかしら」

「とりあえず解散でいいんじゃないか? それぞれやることもあるだろうし」

「それもそうよね。それじゃ、解散という事で。私は工房で装備作りでもしてくるわ」

「私も料理に取りかかりますね。トワくんはどうするの?」

「俺も生産かな。フォレスタニアでハイポーションより上位のポーションのレシピを入手したからその作成練習だな」

「もし売るんだったら、先に一度見せてね。値段を決めなくちゃいけないんだし」

「わかってるよ。……さすがにしばらくは売り物になるほどのモノはできないと思うけどな」

「まあ、新しいレシピだとそうなるわね。それじゃあ、頑張ってね」


 俺達3人はパーティを解散してそれぞれ別行動を取ることになった。

 俺はメガポーションの作成だけど、さすがにいきなり高品質品は作れないだろうな。


 一旦、フォレスタニアの首都ブリーズウッドまでいって素材を購入して戻ってくる。

 メガポーション用の薬草もこれまでは見たことがない種類の薬草だな。

 フォレスタニアに行かないと入手出来ない種類なのかな?

 素材の購入が終わったら、早速作って見るけどやっぱり上手く行かず、★6が限界だった。

 その品質でさえ安定していないんだから、高品質で安定させるまではかなりかかりそうだな。

 ……もっとも、その★6品でさえ、ハイポーションの★12とほとんど同じ回復量な訳だけど。


 ひとまずメガポーションの作成については今後の課題として、それ以外のポーションも作っておく。

 そうして、生産活動で時間を潰しているうちにログアウトする時間になったため、作業を切り上げてログアウト。

 教授との打ち合わせ前に夕飯などを済ませることとなった。

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