264.クラン内会議
連絡を入れてから10分ほどで全員が揃う。
揃った後、教授から先程と同じ説明を全員の前で行ってもらった。
「ふむ、つまり私達でその『精霊魔術』と『原初魔術』とやらを調べればいいのね?」
「早い話、そうであるな。私が動くことも出来るのであるが、私のスキル取得は検証時まで取っておきたいのである」
「ふーむ、生産系コンテンツの情報がもらえるのはありがたいがのう。わしらとしては、直接的な利益がほぼないのう」
「そうだねぇ。おじさんも魔法系スキルはあまり覚えてないから、上位スキルを覚えても意味がないね」
「うーん、ボクも似たような感じだけど興味はあるかな? まあ、魔法系の上級スキルも揃ってないから覚えられないと思うけどー」
「私としては覚えておきたいところね。一応、魔術士な訳だしスキルとして情報を入手しておくだけでもかなり違うからね。あとは、ユキだけどあなたはどうなの?」
「私ですか? うーん、私はどちらでもいいというか。あまり戦闘系のイベントに加わらないなら覚えても意味がないかなって思います」
「そこなのよねぇ……。トワ、あなたはどうする気なの?」
「俺としても難しいところだなって思うよ。生産系コンテンツの情報は欲しいけど、自力で情報を集めても問題ないわけだし。でも、やっぱり情報を集めるなら情報系クランを頼った方が早いとも思うし」
「そうよね……。教授、クラン全体で動かないで興味がある人間だけの検証でも構わないかしら?」
「ふむ、落としどころはそこであろうなぁ。ジパンに行ってもらったときのようにただ行ってもらうだけではなく、スキル取得の検証をしてもらわなければいけないとなると手間もかかるであろうし」
「それでいいなら私は調査に協力してもいいわよ。移動にかかる時間が短縮されてるなら生産の方にも影響は出ないだろうし」
「うーん、ボクもとりあえずフォレスタニアまでは一緒に行こうかなー。弓の流派スキルって言うのも興味があるし」
「わしは不参加じゃのう。魔法系スキルはほぼ育ってないので、調査対象としても難しいじゃろう」
「出来れば参加してもらいたいものである。サンプルとして魔法系スキルが育ってないプレイヤーの情報も欲しいのであるよ」
「うーむ、わしとしてはドワーフの国に興味があるのじゃがな。そちらにも竜車とやらは出ているのじゃろう?」
「竜車はあるのであるな。まあ、そう言うことなら仕方がないのであるよ」
「おじさんも不参加かなぁ。魔法系スキルはまだ、上級スキルにすらなってないからねぇ。先週のレイドで精霊ももらえたけど、そっちもまだ成長してないからね」
「ふむ、2人は不参加であるか。トワ君達はどうするのであるかな?」
「あー、そうだな。一応参加しようかな。上位スキルに興味がないわけじゃないし、ここ2週間くらい生産ばかりで出歩いてないからな」
「トワくんが参加なら私も参加しますね。上級魔法スキルで育ってるのは【神聖魔術】くらいしかないですが」
「十分であるよ。それでは、フォレスタニアには4人で向かってもらうという事でいいのであるか?」
「ええ、そうなるわね。……ちなみにフォレスタニアの入国管理ってどうなの?」
「そちらについてはあまり心配しなくてもいいのであるよ。妖精、あるいは精霊を連れたプレイヤーに関してはかなり審査が甘くなると言う話なのである」
「そう言うものなの?」
「そう言うものである。ちなみに、ケットシーでも大丈夫であるな」
「それって、どういう理屈なんだ?」
「基本的に、妖精や精霊、ケットシーは善良な人間にしか契約出来ないという話らしいのである。一応身分証の提示は求められるのであるが、先に述べた眷属がいれば身分証さえしっかりしてれば審査は通るのであるよ」
「話だけ聞くとなんだか雑だな」
「まあ、そう言うものと考えておくのである。魔法王国についてはそちらに向かうときにまた情報を渡すのである」
「了解。それじゃあ、とりあえず解散か」
「であるな。フォレスタニアでどこに向かえばいいかは、明日にでもメールで送っておくのであるよ」
「わかったわ。それと竜車乗り場について教えてもらえるかしら」
「そういえば、その情報も必要であるな。フォレスタニア行きは【第2の街】、ドワーフの国アイアンギウス行きは【第3の街】、魔法王国行きは王都、それぞれの街にある竜車発着場に向かえばいいのである」
「了解、それじゃあ、これで解散にしても大丈夫ね」
「うむ、わからない事があればメールなりチャットなりで問い合わせてほしいのである。こちらが把握している情報であれば渡すのであるよ」
「わかった。それじゃあ、その時は頼むよ教授」
「うむ。それではこれで失礼するのである」
説明を終えた教授は『ライブラリ』から去っていく。
さて、後は俺達の方の調整かな。
「それで、俺とユキ、柚月、イリスの4人で向かうのはいいとして、いつ出発するんだ?」
「あまり時間をかけたくないわね。早速だけど、今日のうちに竜車に乗るところまでは済ませてしまいましょう」
「そうだねー。今日のうちに竜車に乗っていれば明日にはフォレスタニアに入れるかなー?」
「竜車がどれくらいの時間で移動できるかわからないからね。それも含めて、急ぎで移動しましょう」
「そうだな。……3人は生産作業の方は大丈夫なのか?」
「私は大丈夫だよ。私の場合は消耗品だけだから、作った分だけでいいし」
「ユキはそうよね。私の方も大丈夫よ。とりあえず、日曜日までの作業はあるけど、国境には必ずポータルがあるって聞いてるから帰ってくる分には心配しなくても大丈夫だしね」
「ボクも平気だよー。急ぎの仕事は入ってないからねー」
「ふむ、それならわしもアイアンギウスだったか、そこに向かうとしようかのう」
「おじさんもアイアンギウスに向かおうかな。確か、鍛冶や細工が盛んな国だって話だしね」
「それじゃあ、私達4人はフォレスタニア、ドワンとおじさんはアイアンギウス、それぞれ移動となるわね」
「そのようだな。まあ、誰もいなくても問題ないだろう」
「まあ、困ることもないと思うわ。それじゃあ、出発の準備をしましょうか」
「準備? ……ああ、各ギルドに顔を出して何かイベントがないかの確認か」
「そう言うこと。さあ、そうと決まれば行動しましょう」
「うむ、では行くとするかのう」
「おー、がんばろー」
その場は解散ということになり、それぞれ自分が所属しているギルドに顔を出すことに。
俺の場合、ガンナーギルド、錬金術ギルド、調合ギルドの3つだな。
ガンナーギルドと錬金術ギルドでは特にイベントと呼べるものはなかったけど、調合ギルドでフォレスタニアの首都にある調合ギルド宛ての紹介状を書いてもらうこととなった。
なんでも、フォレスタニア内でしかあまり流通しない薬草と調合レシピを買えるようにしてもらえるとか。
一部で話が出てる、ハイポーション以上の回復力があるポーションのレシピかな?
なんにしても紹介状はありがたいのでもらっておく。
これで、フォレスタニアの首都に顔を出す理由が出来たな。
クランチャットで他の皆の状況を聞いたが、俺が一番最後だったらしい。
他のメンバーに比べて所属ギルドが1つ多いのだから仕方がないけど。
フォレスタニア向けの竜車発着場は【第2の街】の西側にあると言うことなのでそこに向かう。
俺が竜車発着場に着いたときには既に3人とも揃っていた。
「悪い、遅くなった」
「時間が決まっていたわけじゃないし大丈夫よ。時間がかかったって事は、どこかのギルドで紹介状をもらえたのかしら」
「調合ギルドでもらえたな。皆はどうなんだ?」
「私は魔術士ギルドと裁縫ギルド両方でもらえたわね。魔術士ギルドは予想してたけど、裁縫ギルドでももらえるとは思ってなかったわ」
「ボクもアーチャーギルドと木工ギルド両方でもらえたよー」
「私はランサーギルドと料理ギルド、どちらももらえませんでしたね。どちらもフォレスタニアとはあまり関係が深くないみたいです」
「その辺は色々よね。ともかく、フォレスタニアの首都までは行く理由が出来たって訳ね」
「そうだな。……そう言えばフォレスタニアの首都ってなんて名前なんだ?」
「『ブリーズウッド』って名前らしいわよ。まあ、向こうに行けば首都で通じると思うけど」
「……それもそうか。とりあえず竜車に乗るか」
「そうね。そうしましょう」
竜車発着場に入って受付で竜車についての説明を聞く。
竜車って名前だけど、実際にはワイバーンを使った航空便らしい。
お値段はかなりなものだが、かなり短時間で、なおかつログアウト中でも目的地まで運んでくれるらしい。
ログアウト中に目的地まで着いた場合、次のログイン時には竜車発着場の待合室になるとか。
「ふむ、わかりやすいシステムね」
「だな。ログアウト中でも移動できるのはありがたい」
「そうじゃないと、確か国境付近まで1日近くかかるらしいからね。さすがにそれは厳しいわ」
「国の広さを表現するのも善し悪しだな。……さて、それじゃあ竜車に乗るか」
「そうね。そうしましょう」
フォレスタニア行きの竜車の値段は1人100万Eとなかなかいいお値段であるが、お金で時間を買えると思えばそんなものだろう。
全員が乗車手続きを済ませて、竜車に乗りこむ。
竜車に乗った時点でメッセージが表示されて、竜車に乗車中ログアウトしても自動で目的地まで運んでくれると改めて説明がでた。
ちなみに、今乗り込んでる竜車の発車まではもう少し時間がかかるわけだが、もうログアウトしても問題ないらしい。
なお、フォレスタニアの国境まではゲーム内時間で6時間だそうな。
「……さて、後は出発を待つだけだけど、この後はどうする?」
「うーん、私はもうログアウトしようかしら。やることもないし、出発まで20分ほどあるらしいしね」
「ボクは出発まで待ってることにするよー。普段、空から地上を眺める機会なんてないからねー」
「私ももうしばらく残っていることにします。景色も興味がありますし」
「それなら俺も、もうしばらく残るかな」
「……そう言うことなら私ももうしばらく待ってみようかしら。確かに、空から地上を見渡すのは滅多にできない経験だしね」
結局、全員が出発時刻までログインしたまま待つことになった。
4人で適当に時間を潰して待っていると出発時刻になり、乗っていた竜車が浮き上がり始める。
竜車の窓から外を眺めていると、ゆっくりと地上から浮かび上がっていくのが見えた。
やがて、ある程度の高度まで上昇すると、今度は国境方面に向けて移動を始めた。
そこまで見届けるとあとは目的地である、フォレスタニア国境付近まで飛び続けるだけなのでこれで解散と言う事になった。
明日は土曜日で休みなので、午後から時間を合わせてログインしフォレスタニアに入国することにする。
とりあえず、今日のところは出来る事も無いし、皆に挨拶をしてからログアウトして終了だな。
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