241.【6日目】マスターガンナー
「クエストクリアを確認したわ。これで3次職への転職を開放します」
夕食前の短い時間、その時間を利用して俺はガンナーギルドにクエスト完了の報告にきていた。
報告自体はすぐに済むわけだからなんの問題もないしな。
「さて、これで転職可能になったわけだけど早速転職していくのかしら?」
「そうですね。職業レベルも足りてますし、条件も満たしているはずなので転職をしていきます」
「わかったわ。転職希望の職業は『マスターガンナー』で間違いないわね」
「はい。それでお願いします」
「それじゃあ、転職のための書類を用意するから少し待っていて頂戴」
アリシアさんがデスクの引き出しの中から何かを取り出そうと探し始めた。
手伝えることはないのでしばらく待っていると、お目当ての物が見つかったらしく書類を手に持って戻ってきた。
「マスターガンナーになる人が現れるなんて珍しいなんて事じゃないからね。転職用の書類を探すのに手間取ってしまったわ」
「構いませんよ。それで、その書類が転職用の物ですか?」
「ええ、そうよ。特殊な魔法紙で作られた特注製ね。超級職への転職はこれを使わないといけない事になっているのよ」
「なるほど。それで、この先はどうすればいいんでしょうか?」
「基本的には最初に2次職に転職したときと同じ手順になるわ。この書類に問題がないか確認してもらって、問題がないならサインをしてもらう事になる。その時、転職の条件を満たしていれば、無事転職完了よ」
「もし、万が一転職条件を満たせていなかった場合は?」
「その時は転職条件を満たせるようになるまでお預けね。ともかく、3次職への転職は色々と重要な事だから慎重にね」
「わかりました。それじゃあ、中身を確認させてもらいます」
渡された書類を読み進めていくが、基本的に3次職に転職した場合の制限が色々と書かれていた。
一度3次職に転職した場合、2次職には転職出来ない事、3次職になってしまうと別の職業系メインジョブに転職できなくなる事、3次職になるとジョブレベルが上がる時に手に入るSPが3ポイントになる事などだ。
他にも細かい制限などが書かれていたが、それらは特に気にしなくても大丈夫だろう。
一番大きな制約は別系列のジョブに転職出来ない事だが、普通3次職に至るまで鍛えた職業を変えたいと思う者の方が稀だろう。
内容を一通り確認し終わった俺は、早速最後の署名部分に署名をしてしまう。
署名が終わると書類が光り輝き、やがて消えてしまった。
〈3次職『マスターガンナー』に転職しました。以降、転職が一部制限されます〉
システムメッセージも流れた事だし、無事3次職に転職出来たのだろう。
ちょっとステータスでも確認しておくか。
――――――――――――――――――――――
名前:トワ 種族:狐獣人 種族Lv.58
職業:メイン:マスターガンナーLv.1
サブ:上級魔法錬金薬士Lv.1
HP:403/403 MP:686/686 ST:489/489
STR:18 VIT: 48 DEX:78
AGI:48 INT:103 MND:62
――――――――――――――――――――――
うわ、ステータスが一気に上昇したよ、
特にHPの伸びがすごいな。
今までどれだけ低かったのかがよくわかる。
「さて、これであなたも晴れてマスターガンナーになった訳だけど。これから先はどうするつもりなのかしら?」
「これから先とは?」
「ガンナーギルドとして導いてあげられるのは、これが限界といったところかしら。ここから先の領域に進むにはあなた自身の修練に頼るしかないわ」
ふむ、つまりギルドとしては3次職までしかサポートできなくて、これ以上になろうとすると別の方法を探さなきゃいけないのか。
「とりあえず、しばらくはこのままの生活を続けますよ。かなり特殊なジョブに就いたのは理解していますが、だからと言ってこれまでの生き方を変えなきゃいけないものでもないでしょうし」
「そう、わかったわ。もし何かあったら、ギルドにまたきて頂戴。出来る範囲でのサポートは約束してあげるわ」
「ありがとうございます。それではこれで失礼します」
「ええ、頑張って頂戴」
ガンナーギルドを後にした俺は、一度クランホームに帰還してメッセージボードを確認しておく。
特に急ぎの作業とかは増えていないようだ。
それじゃあ、夕飯の支度もしなきゃいけないしこれでログアウトするとしようか。
――――――――――――――――――――――――――――――
「それじゃあ、お兄ちゃんも遂に3次職になったんだ。おめでとう」
夕食を食べ終わった後に遥華と話をしている中で、俺が3次職になった事を話したらお祝いの言葉をかけられた。
妹様はいつの間にか3次職になってたしなぁ。
「ありがとう。とは言っても特にやる事は変わらないんだがな」
「えー、せっかく超級職に就いたのにもったいない。もう少し戦闘の比重を増やすとか考えないの?」
「今はそれどころじゃないしな。それ以外の事で時間が完全に潰れているのに、これ以上作業を増やす事はできないよ」
「そういうものかな? まあ、お兄ちゃんの戦闘能力が上がっただけでも良しとしよう」
「それはどうも。実際のところ、どれだけ強くなったのかはやって見ないとわからないけどな」
「それならこの後にでも少し戦ってみれば? 実戦で経験してみるのが一番だと思うよ?」
「そうは言われてもな。その少しの時間を確保するのも難しい状況だからなぁ」
「生産職も大変だね。戦闘職は戦闘職で慌ただしくなってきたんだけど」
「何かあったのか?」
「今日のお昼ぐらいから『デーモンスカウト』って言うモンスターがいろんなところで出現するようになってきたって言う話なんだよね。『スカウト』って事は斥候だろうし、見かけ次第倒すようにしているみたいなんだけど、遂に本格的な戦闘が始まるのかって話になってるみたい」
「なるほどな。……まあ、俺はポーション作りしかできないんだけどな」
「それはしょうがないよね。さて、それじゃあ、寝る支度をして少し勉強をしたらログインしようかな」
「俺もそうさせてもらうか。それじゃ、あまり夜更かししすぎないようにな」
「わかってるよ。それじゃ、お兄ちゃんおやすみー」
遥華を見送った後、俺も自分の部屋に戻って少し勉強をしておく。
夏休みイベント期間中くらいはサボっても問題はなさそうだが、いつもの習慣なのでそこは変えないでおく事に。
その後で寝る準備まで整えたらゲームにログイン。
銃の製造数もそろそろ届いているだろうし、今日はやる事が多そうだ。
もっとも、時間は短いから時間が足りないんだろうけどな。
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