233.【2日目】上級戦闘職への道

 さて、王都のガンナーギルドにやってきたわけだが、受付で3次職への転職方法について説明を求めると、なぜかギルドマスターの部屋へと通された。

 そこにいるのはもちろんギルドマスターであるアリシアさんだ。


「さて、今日は3次職への転職についてだったわね」

「ええ。でも、わざわざギルドマスターが出てくるような案件なんですか?」

「普通の3次職に就きたいのなら私の出番ではないのだけど。念のために聞いてみるけど、どの3次職になろうとしてるのかしら?」

「今のところマスターガンナーですかね。魔弾も悪くないとは思うんですけど」

「どちらにしても超級職ね。それなら私の管轄になるわ。特殊3次職だから1つクエストをクリアしてもらう事になるけど大丈夫かしら?」

「わかりました。とりあえず受けてみることにします」

「わかったわ。それではクエストだけど、これらの中から1つ選んでもらえるかしら?」


 アリシアさんからはいくつかのクエストが提示された。

 ボスを倒して素材を集めるものや高レベルダンジョンのクリアと言った内容が並んでいる。

 その中で気になったのは『レイドクエストのクリア』だった。


「アリシアさん、『レイドクエストのクリア』というクエストがありますが、これの達成条件ってどうなりますか?」

「一定以上のレベルのレイドクエストクリアが条件になるわ。具体的にどのレベルのクエストクリアなのかは教えられないけど」

「そうですか。とりあえず、これを受けておいていいですか?」

「ええ、構わないわよ。もし他のクエストに乗り換えるのならまたきてもらえるかしら」

「わかりました。それではこれで失礼します」


 クエストの選択が終わった俺はガンナーギルドを後にする。

 さて、後はこのクエストが『妖精郷の封印鬼』クリアで達成になるかが問題だな。

 今週の土曜日にはまたレイドがあるんだしその時にクリアできたか確認すれば問題ないか。


 さて、もう少しでお昼の時間だし、クランホームに戻ってからログアウトするとしよう。


〈クエスト『3次職開放-3』を受注しました〉

 ―――――――――――――――――――――――


『3次職開放-3』


 クエスト目標:

  一定以上のレベルのレイドクエストをクリアする

   0/1

 クエスト報酬:

  特殊3次職の開放


 ―――――――――――――――――――――――



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「それじゃあ、お兄ちゃんも特殊3次職の開放クエスト受けたんだ」


 ログアウトして昼食を食べながら、遥華と3次職開放クエストについて話をしてみることにした。

 戦闘系のクエストに関しては遥華の方が断然詳しいからな。


「遥華は特殊3次職のクエストをクリアしてないのか?」

「うん? 私はもうクリア済みだよ。3次職だってとっくになってるからね」

「クリアしたクエストってなんだったんだ?」

「レイドクエストのクリアかな。『妖精郷の封印鬼』でクリアになればラッキー程度で受けてたんだけど、大丈夫だったから」

「そうか、それなら俺の方も大丈夫かな。ちなみに、遥華の今のジョブってなんなんだ?」

「わたしのジョブは『魔剣姫』かな。魔法剣士系女性専用の超級3次職」

「素直に魔法剣士系の3次職に就いてたんだな」

「私のプレイスタイルとぴったり合うからね。転職のために特殊スキルが必要だったけど、そっちはゴールドスキルチケットで手に入ったから何とかなったし」

「プラチナスキルチケットじゃなくても大丈夫だったのか?」

「うん、大丈夫だったよ。代わりにゴールドスキルチケットを2枚消費することになったけどね」

「それはまた違った意味で大変だったな。スキルチケット以外の入手方法はなかったのか?」

「うーん、攻略サイトとか掲示板は探してみたけどほしい情報がなかったんだよね。だから、多分まだ未発見なんじゃないかな」

「まあそう言うスキルもかなりあるみたいだからな。俺の持ってる【ホークアイ】だってまだ未発見らしいし」

「ああ、あれね。覚える方法がわかればセツちゃんが覚えたいって言ってたけど」

「俺はプラチナスキルチケットで覚えたからなぁ。普通に覚える方法まではわからないな」

「だよね。多分、ガンナーギルドかアーチャーギルド関係だとは思うんだけど」

「どちらにしても、まだ未発見だしどうしようもないな」

「そうだね。教授にも情報がないか聞いてるし、何かわかればすぐに教えてくれると思うんだけど」

「こればっかりは見つからないとどうにもならないからな。見つかればいろんなプレイヤーが覚えようとすると思うんだが」

「だよね。遠距離攻撃の射程を伸ばすスキルとか、ものすごいアドバンテージになるもんね。その分、覚えるのも大変そうだけど」

「まあ、強力なスキルな分、覚えるのも大変だろうさ。さて、そっちは午後からはどうするんだ?」

「わたし? 皆と一緒にイベントサーバーに行って素材集めかな。なんだか簡単に上位素材が手に入るらしいし今から集めておこうと思って。薬草類メインで集めてくるから、集め終わったら調合お願いね」

「はいはい。わかったからとりあえず素材を集めてきてくれ。話はそれからだ」

「はーい。それじゃあ、ごちそうさまでした。後片付けは任せて構わないよね?」

「ああ、俺がやっておく。あまり無理はしない程度にな」

「わかってるって。それじゃまたねー」


 昼食を食べ終えて自分の部屋に戻っていく遥華を見送り、俺は食器の後片付けをすることにした。

 遥華の方で大丈夫だったのなら俺の方のクエストも多分大丈夫だろう。

 同じクエストなのかはわからないが、基準が違うという事も無いだろうし。

 ……『妖精郷の封印鬼』でダメだったら他のクエストに乗り換えることも考えておくか。


 昼食の後片付けを終えたら、俺もログインしてこの後どうするか考えるとしよう。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 昼食後のログインもクランホーム側でログインする。

 他のクランメンバーは全員ログアウト状態になってるし、まずは師匠のところから薬草を仕入れてきて店の在庫も含めてポーション作りをするとしましょうか。


 その後、仕入れてきた薬草と売れていたポーションの補充を終えたが、まだ誰もログインしてきていない。

 流石に、イベントサーバーにソロで行っても出来る事はたかが知れてるし、イベントサーバーに滞在できる時間を無駄遣いすることになりそうだから、イベントサーバーには行かないでおこう。

 となると、急ぎの仕事もないし、暇になってしまうわけだが……さて、どうしたものか。

 ……時間もできたし、ジパンの屋敷でセイメイ殿から受け取った巻物の解読作業でも続けることにしようか。


 クランホームのホームポータルから、ジパンの屋敷へと転移して屋敷の中に入っていく。

 解読作業自体はどの部屋でもできるし、居間でやることにしようか。

 巻物を屋敷の収納の中から取りだして、前回の続きの部分から読み解いていく。

 スキルとしての全体像はつかめてきたけれど、これはあくまでもゲームの世界。

 この巻物を完全に読み解かないとスキルを覚える事は出来ないだろう。


 スキルの傾向としては今まで読み解いた中に書かれており、基本的には高火力高消費型の一撃必殺スキルのようだ。

 使うスキルによって広範囲攻撃だったり単体攻撃だったり様々なようだが、基本的には大火力スキルと見て間違いないだろう。

 それから、使うスキルによって攻撃力の参照元となるステータスが異なるらしく、INTやDEXを参照元にするスキルなら高火力が望めるが、STRやVITを参照元にするスキルだった場合、俺だとあまり火力がでないだろう。

 STRやVITの成長率が悪い狐獣人としては育成方針を間違っているわけではないが、やっぱりこう言う面で不得手とする部分が出てきてしまうのは仕方がない。

 すっぱり切り捨てているのだから、それらを参照するスキルを使わなければいいのだけれども……STRやVITを参照するスキルが物理属性の高威力スキルのようだからもったいないんだよな。

 ともかく、今は巻物の解読に集中して、早いところスキルを覚えられるように頑張ろう。

 できれば防衛戦前に覚えてしまいたいところだけど、結構ギリギリかな?


「あ、トワくん。今日も巻物の解読作業なの?」


 巻物の解読作業を始めて2時間ばかり経過した頃だろうか。

 ユキがログインしてきたようだ。


「ん、ユキか。早いところスキルを覚えたいからな」

「早くスキルを覚えたいのはわかるけど、休憩はちゃんと取らないとダメだよ。トワくんは集中すると誰かが止めるまでずっと続けるんだから」

「ああ、わかってるって。ある程度目処が立ったら休むつもりではあったんだ」

「本当かな……? とりあえずおやつを用意するから一度休憩にしよう」

「ああ、わかった。今日は何を作ったんだ?」

「んー、大福とかをいくつか作ったよ。今日はイチゴ大福にしよう」

「わかった。それじゃ、巻物を片付けるとしますか」

「うん、お願い。……それで、どれくらいまで解読進んだの?」

「んー、65%くらいか? あと、10時間もかからずに解読が終わりそうではあるんだが……」

「10時間もかかるんだったらしばらく休憩ね。はい、大福とお茶」

「……わかりました。それじゃ、いただきます」

「はい、どうぞ。……そう言えば、イベントサーバーには行った?」

「いいや。一人で行っても出来る事が思いつかないしな。まだ行ってない。この後にでも行こうかとは考えてたんだけど」

「そうなんだ。あ、リクから伝言なんだけど、薬草を集めておくからポーション作成をお願いだって」

「了解。ハルにも頼まれてるし、俺が一番貢献できるのはポーション作成だろうからな。そっちは素材が集まり次第対応するよ」

「うん、私の方も食材が集まりそうだったら頑張るね」

「……食材は集めるの大変そうだからな」

「昨日のウサギ乱獲でウサギ肉だけは沢山手に入ったけどね。それだけだと串焼きにしかならないから、他の食材も手に入れたいところだよ」

「確かになあ。イベントサーバーで他の食材って手に入ってるのかな?」

「どうなんだろうね。私も調べてないし、よくわからないや」

「あとで、教授にでも聞いてみるか。何か知ってるかもしれないし」

「そうだね。……そう言えば、トワくんはメインジョブの3次職転職クエストって受けてる?」

「ああ、午前中に受けてきた。一応、レイドクエストクリアのクエストを受けてきたけど」

「やっぱりそれにしたんだ。私も同じのを受けてきたから、土曜日にレイドクエストをクリアしたときに完了になってればいいんだけどね」

「まあ、そうだな。今週の土曜日は封印鬼に挑むだろうし、その時にクエストクリアになれば一番楽だろうな」

「クエストクリアにならなかったらどうしようか?」

「別のクエストに乗り換えるのが一番じゃないか? 俺達じゃレイドクエストを受けるのは一苦労だし」

「そうだよね。クエストクリアになるといいね」

「ハルがクエストクリアになったらしいから、あまり不安には思ってないけどな。……さて、ごちそうさま。それじゃ、巻物の解読を続けさせてもらおうかな」

「お粗末様でした。私は台所に行って料理をしてくるね」


 改めて巻物を取り出して解読を始めようとしたとき、フレチャが届いた。


『トワ、今暇かしら? と言うか急ぎの作業をしてないならクランホームに来てほしいんだけど』

「うん? 柚月か? 何かあったのか?」

『とりあえずクランホームに来て頂戴。あと、ユキもいるなら連れてきて。よろしくね』


 要件を伝え終わるとすぐにフレチャは切れてしまった。

 何があったのやら。


「トワくん、柚月さんから連絡? 何かあったの?」

「わからん。急いでクランホームに来てほしいそうだから、とりあえずクランホームに向かうぞ」

「うん、わかったよ」


 このタイミングでの緊急の呼び出しとか止めてほしいんだけどな。

 あまりいい予感はしないぞ、本当に。

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