223.【1日目】都市防衛の招待状
「予想はしていたけど、やっぱり都市ゼロに割り当てられたか」
運営から届いたメールの内容を確認してため息を漏らす。
夏休みが始まった頃にあった生放送内で説明のあった最高難易度都市。
自慢じゃないけど俺が参加するならここだろうなと言う予測はしていた。
だが実際に割り当てられてみるとため息しか出ない。
最高難易度って事は手を抜くわけにもいかないんだろうなぁ……
「トワくんも都市ゼロなの? 私と一緒だね」
「俺が都市ゼロならユキも都市ゼロだろうな」
基本的に俺とユキは生産活動以外だと一緒に行動することが多い。
そう考えると、どちらか一方だけが選ばれるという事も無いだろう。
実際、ユキが作る料理の一部では俺が中間生産物を作っている訳だし。
「他の皆はどうなのかな?」
「あー、おっさん以外は全員都市ゼロじゃないかな。間違いなく俺達は生産トップ組の中に入ってるだろうから」
「そうだよね。私達の場合、生産能力の面を評価されての配置だよね」
「だろうな。装備は超一流でもキャラクターレベル的には微妙なラインだから、戦闘面での評価というわけではないと思うぞ」
「だよね。それじゃ、トワくんはこのまま都市ゼロで参加する?」
「……そう言えば都市ゼロへの参加は辞退もできるんだったか。別に断る理由もないし、別サーバーに割り振られた場合、ユキや皆と一緒になれるかどうか怪しいからこのまま都市ゼロでいいんじゃないかな」
「了解だよ。それじゃあ、私もこのまま都市ゼロに参加することにするね」
とりあえ俺とユキについては都市ゼロ行きで確定だな。
後の皆はどうするかだけど、そっちは改めて聞いてみるしかないか。
運営からのメールには参加するかどうかを返信してほしい、と言うか『参加』か『拒否』かのボタンがついていたので『参加』ボタンを押して正式に都市ゼロ行きを確定させる。
ユキの方でも同じような操作をしているから、あっちも同じ事をしたのだろう。
「トワ、ユキ、いるかしら?」
運営メールを閉じたところで柚月が談話室に入ってきた。
「柚月、どうかしたか?」
「運営から都市防衛戦イベントのメールが来てたでしょう? あなたたちはどこになったの?」
「私とトワくんは都市ゼロでした。もう参加申請も済んでますので確定だと思います」
「やっぱりあなたたちも都市ゼロだった訳ね。私も都市ゼロよ。この様子だとドワンにイリスも都市ゼロかしら」
「おそらくはな。俺達の生産能力なら最高難易度でも仕方が無いだろう」
「……まあ、そうよね。それじゃ、私も都市ゼロで参加申請をしておくわ。……後はおじさんだけど」
「おっさんは無理だろう。生産能力的にもレベル的にも最高難易度だと無理があるだろうし。一般サーバーのどこかに割り振られるんじゃないか?」
「きっとそうよね。流石に同じクランだからと言って、全員が同じサーバーに割り振られるなんて事は無いわよね」
「それを言いだしたら『白夜』とか『百鬼夜行』とかがすごい事になるだろ。大規模クランだとクラン内でも実力差が激しいだろうから、それぞれの実力にあわせたサーバーに割り振られるだろうよ」
「それもそうよね。……さて、参加都市も確定させたし私は生産に戻るわ。都市ゼロだけど今日は行ってみるの?」
「そうだな……昼食後にでも行ってみようかな」
「それじゃ、時間を合わせて行くことにしましょう。午後1時ぐらいで大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「私も平気です」
「それじゃあその予定でドワンとイリスにもメールしておくわね」
「なんじゃ、わしらに用じゃったのかの?」
「なになに、どうしたのー?」
「おや、これで全員揃ったみたいだね」
俺達3人で予定を組んでたら、ドワンにイリス、それからおっさんも談話室へとやってきた。
「3人揃ってやってくるなんて珍しいな。何かあったのか?」
「特に何もないのう。たまたま一緒になっただけじゃ」
「そうだねー。ログインしてメッセージボード確認してたら2人が来たんだよね」
「うんうん。偶然ログインのタイミングが重なったみたいだねぇ」
「そうか。3人は都市防衛戦イベントの参加都市どこになっているんだ?」
「わしとイリスは都市ゼロじゃった。おっさんは別の都市だがの」
「おじさんは流石に最高難易度都市には行きたくないかなぁ。まだまだ種族レベル40しかないからね」
「トワ達はどうだったのー? やっぱり都市ゼロ?」
「ああ、俺達3人は都市ゼロだったよ」
「ついでに言えば参加申請も済んでるわね。ドワンとイリスはどうするの?」
「お主らが参加するのであれば都市ゼロに行くしかあるまい」
「そうだねー。やっぱり予想通りボクらは都市ゼロだったねー」
「おじさんも都市ゼロに行けるくらい強ければ良かったんだけどねぇ。まだまだスキルレベルも足りてないから別都市で頑張ってくるよ」
これで、おっさんを除く『ライブラリ』メンバー全員が都市ゼロに行く事が決まった。
全員が揃ったので、現地の様子見に行く時間を午後1時という事で決定する。
一日あたりの接続可能時間が限られているわけだし、初日の間にどんな状況なのかは確認しておかないとな。
全員で集まって午後の予定を立てていると、教授からメールが届いた。
問題がなければこれからこちらに来るらしい。
柚月のところにも同様のメールが送られていたようなので、俺の方で問題ないという事を返信しておく。
メールの返信をして少しすると教授がやってきた。
白狼さんと一緒に。
「お邪魔するのであるよ」
「いきなり押しかけて済まないね」
「いえ、構いませんけど……教授、白狼さんと一緒だったのか?」
「うむ、白狼君
「他にも数名ね。それで、教授。一体何の用かしら?」
「まずは確認である。おじさん以外は都市ゼロに参加であるかな?」
「ああ、その通りだ。俺達はおっさん以外全員都市ゼロに参加することにしたよ」
「うむ、結構なのである。これで都市ゼロを避けられていた場合はどうしようか悩むところだったのである」
「……その様子だと、教授も都市ゼロだった訳か」
「うむ、そうである。私以外にも『インデックス』から数名参加するのである」
「白狼さんは……聞かなくても都市ゼロでしょうね」
「そうだね。僕も都市ゼロかな。他にも『白夜』からは20人ちょっとが都市ゼロに選ばれているよ」
「他にも『百鬼夜行』の仁王君や鉄鬼君なども都市ゼロであるな。他にも有名どころのクランの上位勢は都市ゼロに選出されているのである」
俺達が選ばれているんだから鉄鬼も都市ゼロだとは思っていたが、やっぱりあいつも都市ゼロか。
あいつの場合だと、戦闘力で選ばれたのか生産力で選ばれたのかわからないけど。
「それでここに来たのは他でもない、都市ゼロに参加するクランの代表同士で顔合わせと最初期の行動方針を決めておきたいのである。そのための打ち合わせを今日の午後3時頃から行いたいのであるが、『ライブラリ』の都合はつくのであるか?」
「午後3時か。特に問題はないと思うけど、誰が参加すればいいんだ?」
「参加者は2~3人程度にしてほしいのである。あまり多くても参加者が多すぎて打ち合わせにならないのであるよ」
「それもそうだな。……『ライブラリ』からは俺と柚月の2人でいいか?」
「私の方は問題ないわ」
「わしはそう言う会議には向かんからのう」
「ボクもパスかな」
「えーと、私が行ってもしょうがないと思うのでトワくん達に任せます」
「おじさんはそもそも都市ゼロじゃないからね。頑張ってきてほしいね」
「今日の打ち合わせはそんなに頑張るような内容ではないのであるがな。基本的には有名どころでぶつかり合いにならないようにするための打ち合わせであるよ」
「まあ、俺達は零細クランらしく細々と活動するつもりなんだがな」
「……それができればいいんだけどね」
「おそらくそう言う訳にはいかないのである。
「……俺達が本気ってかなりろくでもないことになると思うのだけど?」
「事実、ろくでもない調整がされているというのが我々の見解である。……念のため聞くのであるが、輝竜装備を作ったのは『ライブラリ』で間違いないのであるな?」
「今更だな。先週にも話した気がするが、輝竜装備を作ったのは俺達だよ」
「了解である。念を押した理由としては、都市ゼロの難易度が
「……イベント装備って事は★12装備か」
「そうであるな。1つの都市サーバーに集められるプレイヤー数は最大800人との発表である。それらのプレイヤーが最低でも★11、基本的に★12で装備を固めたプレイヤー800人で対応する。それくらいの難易度調整がされていても不思議ではないのである」
「……それはまた、大胆な予想だねぇ。おじさんじゃついて行けない世界だよ」
「あくまで現段階での予想である。であるが、輝竜以外の五竜帝装備を作成したクラン、その全てが都市ゼロに招集されていることを考えれば、装備の最低レベルが★11であったとしても不思議ではないのであるよ」
「そう言う訳だから、イベント期間中は全力で協力してほしいんだけどどうかな? もちろん僕達に出来る事は協力するよ」
「……とりあえずある程度の状況を確認出来てからだな。それに装備の品質を★11以上に揃えると言っても発注側にそれだけの資金力はあるのか? 技術の安売りはしないつもりだぞ?」
「そこも含めて打ち合わせで決めたいのであるよ。有名生産系クランが一堂に会する訳であるが、それでも800人分の装備となると厳しいのである。主に素材面でという訳であるが」
「ミスリル程度で★12を作ってもたかが知れてるからなぁ」
「そう言う訳で素材を集めるところについても話し合いである。すまないのであるが協力してほしいのである」
「……とりあえず話は聞きましょうか。実際に協力できるかどうかは別だけどね」
「助かるのである。それでは私は他のクランにも顔を出してくるのである。集合場所については後でメールを送るので確認してほしいのである」
「僕もこれで失礼するよ。クラン内でどう動くのか話し合わないといけないからね。それじゃあまた後で」
教授と白狼さんはホームポータルから去っていった。
おそらく教授を含めた情報系クランがメインで打ち合わせの調整をしてるんだろうなぁ……
「……さて、教授からのお誘いがあったわけだけど。私達の予定としては特に変更無しという事で構わないわよね?」
「そうだな。俺と柚月が午後3時から打ち合わせにでるって言うこと以外は予定の変更は無しでいいと思うぞ」
「そうと決まれば午前中の用事は早いところ済ませるとするかの。在庫の確認だけじゃが」
「ボクも在庫の確認を済ませたら落ちることにするよー。お昼ご飯、早めに食べちゃわないとだね」
「おじさんは1人だから適当に行動することにするよ。それじゃ、何か用事があったら呼んでほしいかな」
「私もキリのいいところまで生産したら落ちることにするわ。トワ達はどうするの?」
「俺達は在庫補充が済んだばかりだからな。特にやることもないし、俺は一度落ちることにするよ」
「私もお昼の準備がありますから一度落ちますね。……リクもログインしてるはずだからお昼ご飯のこと連絡しておかないと」
「……ああ、うちもハルがログイン中だな。落ちる前にメールしておかないとな」
「わかったわ。それじゃあ午後1時にここでいいわよね?」
「ああ、そうしよう。それじゃ、解散だ」
俺達も打ち合わせを終え、それぞれが自分のすべきことをするために散らばっていく。
俺もハルに昼食の時間を伝えるためのメールを送ったら落ちないと。
さて、昼食は何にしようかな。
……簡単にパスタか素麺でいいか。
ハルにどちらがいいかメールしてと。
メールの返信はログアウトしても確認出来るから、とりあえずこれで準備は完了かな。
「それじゃあ、トワくん。また後でね」
「ああ、また午後にな」
ログアウトするユキを見送った後、俺もログアウトする。
っと、ハルから返信が届いた。
ふむ、素麺の方がいいか、じゃあ素麺を茹でる準備をしておくか。
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