173.レイドアタック 5~リザルト 1~

今回からリザルト回

初攻略チームという事でリザルトも山盛りです


**********


《レイドチーム名『妖精郷探索隊』によってレイドクエスト『妖精郷の封印鬼』が初攻略されました》

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』のワールド初攻略チームです。入口のモノリスにチーム全員の名前が刻まれます〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』のワールド初攻略チームボーナスとしてボーナスBP20ポイント、ボーナスSP20ポイントが与えられます〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』のワールド初攻略チームボーナスとして称号【妖精郷の解放者】が与えられます〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』のワールド初攻略パーティボーナスとしてプラチナスキルチケット1枚、ゴールドスキルチケット5枚が各パーティリーダーに授与されます。レイドクエスト離脱までに各パーティ内での配布を完了してください。クエスト離脱後は譲渡不可になります〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』レイドチームMVPはプレイヤー『白狼』です。白狼にMVP報酬が授与されます〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』レイドパーティMVPはプレイヤー『ユキ』です。ユキにMVP報酬が授与されます〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』をクリアしました。クリアボーナス経験値が与えられます〉

〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』をクリアしました。クリア報酬をパーティ用臨時インベントリに格納しました。初クリアボーナスとしてクリア報酬が増加しています。レイドクエスト離脱までに臨時インベントリより取り出してください。クエスト離脱までに取り出さなかった場合、対象アイテムは消滅します〉



 待て待て!!

 いきなりシステムメッセージが多すぎるわ!!


「その様子だと大分混乱してるようだね、トワ君」

「……レイドの初攻略ってこんな感じなんですか、白狼さん?」

「まあ、こんな感じかな。システムメッセージが一気にきて大変だよね?」


 苦笑を浮かべながらも白狼さんには余裕がある。

 ……これが初めてのレイド初攻略って訳ではなさそうだな。


 とりあえず、初めのメッセージから整理してみよう。


 最初のメッセージはワールドアナウンスだ。

 レイドクエストがどこかのチームによって攻略された場合、無条件でアナウンスが流れる。

 これは事前に聞いていたし問題ないな。


 次に2つ目のメッセージ。

 これは初攻略者の名前が入口の石碑モノリスに残されるという訳で……


「白狼さん、石碑モノリスに名前を残されるのを回避する方法ってなかったんですか?」

「残念ながらないね。でも、普通は初攻略者っていうのは名誉な事だよ?」

「生産職が初攻略者とか何を言われるか……」

「トワ君の場合、それこそ何を今更って感じだと思うけどね?」


 とりあえず消す方法はないらしい。

 恥ずかしいとかはないが、無駄に目立つのは避けたかったんだけどな……


 3つ目のメッセージはBPとSPの入手メッセージだ。

 レイドクエストの初攻略ボーナスってこんなのもあるんだな……


「白狼さん、BPとSPが手に入りましたけどこれって普通なんですか?」

「初攻略者だけだけど普通だね。でも、レベル60レイドでもらったときはどちらも10だったから、このレイドクエストのボーナスは相当多いよ?」


 とりあえず、これはエリアボスのボーナスと似たようなものだからよしとしよう。


 次、称号が増えた。

 称号の内容は……なんだこれ?


 ―――――――――――――――――――――――


【妖精郷の解放者】

 妖精郷を最初に開放した者の証

 妖精達からの信頼を得やすくなるだろう


 眷属:妖精または眷属:精霊の好感度上昇にボーナス

 眷属:妖精または眷属:精霊の自発行動率増加


 ―――――――――――――――――――――――


 眷属、妖精に精霊?

 そんな眷属がいるなんて情報なかったぞ?

 称号効果の中に訳のわからない内容の物もあるし……どうしたものかな。


 さらに次、これは初攻略レイドチームのパーティ単位で配られる物なのかな?


「白狼さん、スキルチケットって……」

「はっきり言ってここまで豪華だとは思わなかったね。よくてゴールド1のシルバー5だと思っていたんだけど」

「……初攻略で配られるのは確定ですか?」

「基本、確定だね。どの種類が配られるかはクリアしないとわからないけどね。それからスキルチケットはエリアボスの初討伐者ボーナスとかでも配られるよ。エリアボスだとブロンズチケットがほとんどだけどね」


 とりあえずチケットの配布については後で考えよう。


 その次ともう1つ先はレイドチームMVPとパーティ内MVPだな。

 レイドチームMVPは白狼さん、俺達のパーティ内MVPはユキという事なのだろう。

 白狼さんは指揮に攻撃に防御にと八面六臂の活躍だったわけだし当然だろう。

 そしてパーティ内MVPだが、ユキも攻撃・回復・バフと活躍していた訳だから妥当だな。


「白狼さん、MVPボーナスってなにがもらえるものなんですか?」

「うーん、説明しにくいんだけど、アイテムカタログみたいな物が手に入ってその中から選ぶ形かな。スキルチケットのアイテム版と思えば大丈夫かな?」

「何となくはわかりました。パーティMVPも一緒ですかね?」

「手に入るアイテムのランクは違うけど似たようなもののはずだよ。僕達のパーティはレイドチームMVPがいるからパーティMVPはいないんだけどね。ああ、そうそう。MVP表示以降は初クリアボーナスじゃないから2番手以降のクリアチームでも同じ表示がされるよ」


 どうやら初攻略ボーナスはスキルチケットまでだったようだ。

 MVPボーナスについては……あとで好きなように使うようユキに言っておくか。

 そうしないと遠慮して押し付けてきそうだ。


 最後から2つはクリア経験値とクリア報酬アイテムらしい。

 経験値は……普通に種族レベルが2上がってるな。

 50からは上がりにくいと聞いていたんだけど……経験値量が多かったのかな?


 クリア報酬アイテムは……封印鬼素材各種に『封印鬼の財宝』が12個、それからスキルブックが2つ入っていた。


 まずは封印鬼素材だが、これは封印鬼の皮や鎧の残骸、金棒の破片など様々な物が入っていた。

 品質はどれも★12だし、多分雷獣や氷鬼素材の上位互換かな?

 これらはまとめて柚月やドワンに渡した方がいいな。


『封印鬼の財宝』は単純な換金アイテムだ。

 1個あたり100万Eになると書かれているから、合計で1,200万Eになるらしい。

 まあ、これも後で山分けかな。


 最後、スキルブックだが……これはなんだ?


「トワ、話と確認は終わったかしら?」

「ああ、柚月か。今、リザルトアイテムを確認してたところ。とりあえず素材系は錬金術でも調合でも使えそうにないから、そっちで持っていってもらえると助かる」

「わかったわ。……これはまた、豪華な素材アイテムね。私達の腕じゃまだ持て余しそう……」

「へえ、柚月さんでもそんな弱気な発言をするんですね?」

「白狼さん、いくら私でも自分の腕ぐらいはしっかり把握してるわよ? これ、どう考えても雷獣や氷鬼の上位素材じゃない。さすがに、今の私じゃまだ扱えないわ。もう少しスキル修練しないと」

「ふむ、つまり使えるようになる目処はついているんですね?」

「目処だけはね。いつぐらいになるかまではわからないわよ?」

「そうか、残念。出来れば装備のグレードアップを頼みたかったんだけど」

「さすがに今はまだ受けられないわね。もうしばらくしてからにして頂戴」

「わかりました。引き受けてもらえるようになったら教えてください」

「わかったわ。そのときは引き受けてあげるわ」

「それはよかった。……さて、それじゃあ僕は自分のパーティのところへ戻るよ。報酬の分配を考えないといけないからね。特にプラチナチケットはね」


 それだけ言い残して白狼さんは自分のパーティの元に戻っていった。

 確かにプラチナチケットは考えないといけないよなぁ……


「……さて、私達もあっちでアイテム分配を考えるわよ。スキルチケットは私達もしっかり考えないといけないからね」

「……そうだな。行こうか」


 広場の一角でユキやドワン、イリスが休んでいた。

 どうやら俺と白狼さんの話が終わるのを待っていたようだな。


「お疲れ様だよ、トワくん」

「本当に疲れたのう」

「1時間ちょっと戦闘していたからねー。こんな長く戦い続けた事なんてないものねー」

「まあ、疲れているのは私もだけど……まずはスキルチケットの配布を考えるわよ」

「そうだな。まあ、考えると言っても誰がプラチナを使うかだけでいいんだが」

「んーボクはパスかな。プラチナスキルなんてボクには荷が重いよー」

「そう言うことならわしもパスじゃの。わしは戦闘職でもないしゴールドチケットで十分じゃろう」

「私もいらないわね。話に聞いた限り、生産に必要なスキルはゴールドチケットで揃うって話だし」


 イリス、ドワン、柚月が次々とプラチナスキルチケットを辞退する。

 確かに前にプラチナスキルチケットを使ったときは、戦闘職用のスキルしかなかったわけだしな。


「あのそれじゃあ私も……」

「それじゃあ、俺も辞退するから。このプラチナスキルチケットはユキにプレゼントだな」


 辞退しようとするユキの言葉を遮り、俺も辞退することを告げる。


「トワくん、私が使うよりトワくんが使った方がいいよ」

「俺のほしいスキルはもうないからな。前にプラチナスキルチケットを使った限りだと、これ以上プラチナクラスのスキルは必要ない。だから、ユキがプラチナスキルチケットだな」

「でも……」

「まずはほしいスキルがないか試しに使ってみてから決めてもいいんじゃない? 私達はそれも必要ないけど」

「そうじゃの。押し付けあっても仕方があるまい。まずはスキル検索をしてみるがよい」

「そうだねー。ボク達はいらないから2人で決めてねー。ボク達は素材の振り分けをしておくよー」

「ああ、わかった。それじゃあ先にゴールドスキルチケットを渡しておくな」


 柚月、ドワン、イリスの3人にゴールドスキルチケットを配布してしまう。

 後はあちらで自分のほしいスキルを選んで覚える事だろう。


「さて、そういう訳だしスキルチケットの一覧を見てどちらが使うか決めようか」

「うーん、わかったよ」


 押し問答を続けても仕方が無い事はユキにもわかるのだろう。

 ここは素直に折れてくれる。


 さてプラチナスキルチケットを使い、スキル一覧を表示させる。

 相変わらずのスキル量の中から『プラチナ以上』・『ガンナー・錬金術士』で絞り込みをかける。

 出てきた一覧は……うん、前に使ったときと変わりがなさそうだ。

 SSスクリーンショットはとっていないが出てきたスキルには見覚えがある物ばかりだから変わっていないだろう。


「俺の方でとりたいスキルはないな」

「えーと、それじゃあ次は私用?」

「そうなるな。職業条件を『ランサー・料理人』に変更してと……」


 職業条件を変更して一覧を表示させる。

 ……こっちもかなり数は絞られてるけど、まだそれなりの数があるな。

 料理人用のスキルは……うん、なさそうだ。


「ユキ、この『千槍の心得』とかはどうだ? 槍種全ての攻撃倍率が上がるらしいけど」

「それと同じようなスキル、ガンナー用でもあったよね、トワくん」


 ……やっぱりそう簡単には折れてくれないか。

 俺としてはパーティMVPだったユキに使ってもらいたいんだがな。


 その後、数分間話し合いを続けたがいいスキルはこの条件では見つからなかった。

 視点を変えるため、職業条件を削除して別条件、スキル傾向で絞り込みをかけてみることにした。


 攻撃用スキル、該当なし。

 防御用スキル、該当なし。

 生産用スキル、そもそも選択肢に出てこない。

 支援用スキル……


「あっ……」

「うん、何か気になるものでもあったのか?」

「うん、えっと、これなんだけど……」


 ユキが指さしたスキルのスキル名は『神楽舞かぐらまい』。

 スキル詳細を開くが、効果は『レイドチーム全体またはパーティ全体または半径50メートル以内の全敵性対象に効果のあるバフ・デバフスキル』らしい。

 レイドチーム全体って……これ、完全に全体支援スキルだよな。


「ふむ、ユキはこれが気になったのか?」

「えと、最近だとタンクはプロちゃん頼みだし、プロちゃんがいなくてもドワンさんがタンク役をやってくれるよね? だから私の役割ってイマイチ中途半端になってて……これならまた皆の役に立てるかなって」


 そう、ここ最近はドワンもタンクを始めたのだ。

 ドワン自身はHP的にもそれなりに高いドワーフであり、装備とBPの振り直しでタンク役を十分にこなせるポテンシャルは持っていた。

 俺やユキと離れてダンジョンに向かうことが多くなった3人だが、タンク不在という問題に直面した。

 そこで元より重装備気味だったドワンがBPのパターン登録が出来る課金アイテム【スタイルチェンジ】を使いタンクパターンのBP振り分けを行い、タンク用のスキルを覚えてタンクを始めたというわけだ。

 ユキが回避盾だったのに対してドワンは基本に忠実な耐える盾。

 そう言う訳でパーティ内での役割かぶりが発生していた。

 ユキも来月には【スタイルチェンジ】を覚える予定らしいのだが、それでもアタッカーとしては器用貧乏感が否めないのだろう。

 それならいっそバッファーになってしまおうという訳か。

 ……【呪魔法】も覚えてる事だし、バフ・デバフの専門に乗り換えるのも手か。


「いい選択なんじゃないか? 支援スキル専門になるのも」

「……そう? 私そこまで上手くないと思うよ?」

「最初は誰だって似たようなものだって。慣れれば次第に上手くなるものだよ」

「……それじゃあ、私、それを覚えるね。ありがと、トワくん」


 俺はプラチナスキルチケットをユキに渡し、ユキは受け取ったスキルチケットをすぐに使いスキルを覚えた。


「さて、プラチナスキルチケットは終わったな。それじゃあ、これ。ユキの分のゴールドスキルチケットな」

「え? ゴールドスキルチケットまでもらったら悪いよ」

「俺達のパーティは5人だからどうせ1枚余るんだ。だったらユキが使えばいい。ゴールドスキルチケットなら【生産製造数増加】や【料理の極意】があるはずだからそれを覚えればいい」

「えっと、断ってもダメだよね……うん、わかったよ。それじゃあこれも貰うね」


 遠慮がちにゴールドスキルチケットを受け取るユキ。

 さて、これで俺達のパーティはスキルチケット配布完了だな。


「それから、MVP報酬もちゃんともらっておけよ。あっちは2回目以降のクリアでももらえるみたいだし」

「うん、わかったよ。後で何がいいか確認して受け取るね」


 後は……このスキルブックか……


**********



~あとがきのあとがき~



まずはスキルチケットの配布まで終了です。

なお、ユキがこのスキルを覚える事までは既定路線です。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る