172裏.とある運営管理室のレイド観戦

「なっ、『妖精郷の封印鬼』が遂に倒されたぞ!?」


 その一言に運営管理室が一気にざわつき始めた。


「嘘でしょう? あそこのボスは初見殺しのオンパレードのはずなのに……」

「それを言い出したら、ボスに至る道程だって初見殺しだぞ? 妖精の繭防衛とかテスター班から『開発に本気の殺意を覚えた』と言わしめたほどの高難度ミッションだったからな」

「それで、AI監視による不正はなかったのか?」


 Unlimited World、このゲームでは一部のボス戦は常にAIで監視されており、ユーザーによる不正――つまりチートツールの使用など――や設定上のバグがないかを常に監視している。

 この『妖精郷の封印鬼』についてもAI監視の対象ボスであった。


「ちょっと待て……うん、不正もバグもなし。まっとうな方法で倒されているな。もっとも、聖霊武器による聖霊開放のオンパレードという超派手な戦闘が繰り広げられたようだがな」

「まあ、どんなボスもいつかは倒される宿命だ。そう言う風に設計しないと『クソゲー』認定されてしまうからな」

「その辺の難易度調整をもっと開発が考えてくれればいいんだけどな……」

「開発部隊だけに任せておくと殺意激マシマシのボス仕様が上がってくるから油断できないのよね……」

「それにしても『妖精郷の封印鬼』がこんなに早くクリアされるとはなぁ……」


 運営的には『妖精郷の封印鬼』のクリアはもう数ヶ月後、それこそ世間一般の学生達が夏休みに入っている頃かそれが終わった後になるだろうと想定していた。

 何せ、『妖精郷の封印鬼』は発見するための事前情報、つまりはヒントがどこにも設置されていないレイドエリアだったのだから。

 しかも、特別な条件――ケットシーによる案内か特殊スキルである【妖精の導き】の使用――を満たさないと、レイドエリアに到達することが出来ず、永遠に森の中を彷徨さまようことになるのだから。

 その条件を満たすのも、あるダンジョンの最奥部のさらに奥にあるただの花畑という、どう考えても怪しいが何もない場所で条件を満たさなければならないのだから、開発部隊にはこのレイドクエストを発見させるつもりすらなかったのだろう。


 閑話休題それはともかく


 レイドエリア『妖精郷の封印鬼』が発見されたのは3週間前の金曜日だった。




 当時、『プレイヤーが『妖精郷の封印鬼』発見のためのフラグを満たしました』というメッセージが流れた事はまだ記憶に新しい。

 そもそも、あの花畑は実装当時――ゲーム開始当初からあったので実質的にはたどり着けるようになったときからずっと――いくつもの検証好きが散々調べた結果『イベントは何もなし』と決論付けられていた。


 それは当然である。

 そもそも『妖精郷の封印鬼』は5月末のアップデートで追加された新規レイドエリアなのだから。


 そして、新規レイドエリアを実装したにもかかわらず、ゲーム内に発見につながるようなヒントを一切用意していないのはここの運営・開発の悪い癖と言うべきか、あるいは根本的な意地の悪さというか……

 ともかくとして、発見されるまで数ヶ月はかけさせて、それからヒントを配置し発見させる予定だった。


 さて、そんな予測を破ってくれた破天荒なプレイヤーは誰か、そんな事をかんがえてログを追ってみると……そこには運営管理室ではおなじみとなっていたあるプレイヤー名が記されていた。


「……また、プレイヤートワかよ……このプレイヤー、本当に運営や開発と繋がりがあるんじゃないんだろうな?」

「……まさか、室長がこっそりと情報の横流しをしてるとかはないよな?」

「それこそまさかよ。ユーザーに流れる情報はAIで可能な限り監視しているわけだし、特に運営管理室関係者がゲーム内にインする時はしっかりと監視されている訳なんだからそれは無理よ。……リアルの方でも顔見知りだったりすると話は別だけど」

「だよなぁ……でも、実際こうして発見されそうになってるわけだしなぁ。そもそも何でこんな何もないエリアを訪れようとしたんだ?」

「ちょっと待て、その前からの行動ログを追ってみる。……どうやら花畑前の森林ダンジョンに用があったようだな。トレントやエントと言った樹木系モンスターを斧で大量伐採して素材集めをしていた形跡がある」

「なるほどな。木材を集めるなら森林ダンジョン……惑いの森は現状では最良な選択肢の1つだな。それで、花畑まで行った理由は?」

「そっちは会話ログを追ってみたが、単なる観光目的のようだ。同行者の1人が花畑を見てみたいと言い出した事が理由のようだな」

「まあ、妥当な理由よね。……それで、そこから『妖精郷の封印鬼』発見フラグまでの経緯は何かしら?」

「大前提としてプレイヤートワを含めたクラン名『ライブラリ』のメンバーは全員がケットシー持ち、それはいいよな?」

「ええ、それは把握しているわ。あの早さでケットシーを入手したんだもの。開発が用意した裏口イベントとは言え一気にケットシー入手まで進んだわけだから覚えているわよ」

「それで今回、森林ダンジョンに挑んでいたメンバーの1人、プレイヤーイリスが眷属としてケットシーを召喚していたんだ。でだ、ケットシーを召喚したまま花畑、つまりフェアリーサークルまでたどり着いてしまったという訳だな」

「……つまり今回はプレイヤートワがメインで動いたわけではない訳ね」

「まあ、中心人物ではないのに居合わせるって時点でそれはそれですごいという物だけどな」

「ともかく、これで『妖精郷の封印鬼』は発見されたも同然ね。あとはこの情報が拡散されるかだけど……」

「拡散しないんじゃないか? 少なくとも自分達がクリアするまでは」

「それは難しいんじゃないかしら? あのレイドクエストは種族レベルが45まで制限されるとはいえ、装備もそれに見合うレベルまで弱体化されるわ。『ライブラリ』がいかに優れた生産者集団だとしても装備の力でごり押しするのも限界があるわよ?」

「それにクエストに必要なパーティ数という問題もあるな。あそこのクランは所属人数5人、不足分の人数はフェンリルで補うとしても1パーティしか組めない。残り5パーティをどうするかという問題があるからな」

「それもそうか。ともかく、この件は要観察だな。……あと、気は進まないけど室長にも報告しておくか」

「それがいいでしょうね。プレイヤートワはお気に入りみたいだし」

「余計な手出しをしないでもらえると助かるけどな。……それじゃあ行ってくる」


 そして開けて土曜日。

 レイドクエストに必要なパーティ数という問題はあっさりと解決されていた。


「クラン『白夜』に『インデックス』、さらにはプレイヤーハルとプレイヤーリクのパーティに増援を頼んだのかよ……」

「繋がりとしては妥当だが……『白夜』以外は基本的にレイドには挑まないパーティだろう? それならそんな簡単にはクリアされないんじゃないか?」

「だといいがな。ともかく、彼らの様子を見守るとしよう」

「そうね、そうしましょう」


 とりあえずは攻略の様子を観察することにした運営チーム。

 ……観察と言うよりも観戦と言うべきだったのかも知れないが。


「あー、妖精の繭防衛戦で初挑戦は終了か」

「まあ、あそこは初見殺しその1だからね。仕方が無いでしょうね」

「お、どうやら2回目の挑戦もするらしいぞ。まあ、ここのレイドは消耗品の使用頻度が少ない訳だし無理な話じゃないか」

「妖精の繭防衛戦で失敗したのなら、そこまで時間が経っている訳でもないしね。次はどこまで行けるか見物ね」


 どうやら運営チームは完全に観戦モードに入ったみたいだ。

 なお、観戦しているメンバー以外にも運営チームはいるし、GMコールがあり運営が動かなければいけない事態になれば仕事を優先するだろう、多分。


「2回目は何とか妖精の繭防衛戦第1段階をクリアできたようね」

「だが、合計で12個の繭を破壊されているだろう? 正直、これ以上破壊されたらボス戦が厳しいだろう」

「いや、現実的にはもう厳しいぞ? テスター班のクリア実績によれば7個以上破壊されたときのクリア率は20%未満だったからな」

「……本当に開発は殺意マシマシで作ってるよな、このレイドクエスト」

「そうね。それに見合ったレイド報酬も用意しているわけだし、そこは諦めてもらうしかないわね」

「そうだな。……そろそろ防衛戦第2段階開始だ。どう動くのか観戦させてもらおう」


 その後の第2段階では妖精の繭は1つも破壊されずに終了した。

 これには運営チームも素直に賞賛することになる。


「あら、第2段階では被害0ね。初見で達成とはかなりすごいじゃない」

「レイドコマンダーの指示が的確だったからな。さすがは『白夜』仕切るプレイヤー白狼と言ったところか」

「そうだな。さて、次が最後のボス戦な訳だが……勝てると思うか?」

「さすがに無理だろ? 繭を12個破壊されているって事はレベル52の封印鬼と戦わなきゃいけないんだ。初見突破は無理だって」

「初見殺しのトラップをかいくぐって、2時間近く持久戦が出来れば何とか、ってところかしら。さすがに無理でしょうね」

「そうだな。それじゃあ、どこまで行けるかが問題か……始まるみたいだし頑張ってもらおうか」


 その後、1回目のボス戦はHPバー1本を削ったところでクエスト放棄となり終了した。


「1回目で1本削るか。テスター班の大半よりもいい成績だな」

「それに妖精の繭と封印鬼のレベルの関係性にも気がついたみたいね。さて、これからどうするのかしらね?」

「どうするかとは?」

「情報を公開してしまうのか、それとも可能な限り秘匿して初回クリアを目指すのかってことよ」

「普通に考えて秘匿だろうな。レイドの初回攻略報酬が非常に豪華なのは『白夜』は知ってる訳だし、公開には動かないだろう」


 そのまま戦闘後の反省会まで見学していた運営チームはレイド情報を非公開としたことで、ある種の安堵を感じていた。


「さすがにこの情報を今すぐ公開されても困るからな」

「後から反感を買うことよりも実益をとる。実にゲーマーらしい発想ね」

「反感と言ってもたかが知れてるさ。先行者利益の一部なんだからな」

「ともかく、今日はこれで解散の様子ね。私達も通常業務に戻りましょう」

「そうだな。これ以上監視しても何も起きないだろう」


 その後、彼ら運営チームにとって毎週土曜日の『妖精郷の封印鬼』攻略戦は要監視――あるいは観戦――対象業務となっていた。

 そして、レイド発見から3週目、都合4回目のレイドアタックで遂に封印鬼の最終段階まで到達されてしまう。


「……ここに至るまで3週間、合計4度のアタックで最終段階まで到達か。やっぱりテスター班よりも優秀だな」

「仕方が無いんじゃないかしら? 武闘大会上位勢が顔を揃えているし、それ以外のプレイヤーもスキルが高い人間がちらほらと混ざっているわ。少なくとも全員が平均以上じゃないかしらね」

「『ライブラリ』が生産系クランって事で少し見積もりが甘かったかな……」

「まあ、まだ最終段階の考察は済んでないわけだし、次で勝てるとは限らないでしょう?」

「そうだがなあ……このペースだと来週にもクリアされそうだよなぁ」

「来週か……金曜日には小規模なパッチ適用があるが……」


 そんなことを話している運営チームの背後から声がかかる。


「断っておくが、『妖精郷の封印鬼』についての仕様変更はなしだぞ」

「ああ、室長。……いや、さすがにわかってますよ。クリアされそうだから強化するなんて真似はしません」

「それに今から変更を依頼しても来週には間に合わないでしょうし……さすがにこれ以上プレイヤートワを狙い撃ちにした修正は行えません。それでなくとも、βからの『ボム』の仕様変更は実質1プレイヤーを狙い撃ちにしたようなものなのですから」

「ゲームバランスが崩れるからどうしようもなかったとはいえ、あれはなぁ……」

「まあ、わかっていればよろしい。それで、来週にはクリアできそうなのかね?」

「五分五分と言ったところでしょうか。最終形態には到達しましたが、そのギミックについての考察は出来ていない段階ですし……」

「ふむ、それくらいあのメンバーであれば乗り越えそうな気もするがな。来週のレイドアタックは私も観戦させてもらおう。……ああ、室長室で観戦するから邪魔するつもりはないぞ」

「……一応、私達はレイドに不具合が発生していないかの監視も行っているのですが……あのレイドは他には実装されていない『レベル制限』機能がかかっているわけですし」

「だが実際には観戦と変わらないだろう? 邪魔するつもりも咎めるつもりもないから安心したまえ。それでは、これからの業務もよろしく頼むぞ」

「……行ったな。さて、来週にクリアできるかどうかは室長じゃないが見物だな」

「テスターの最終段階での平均全滅回数は3回ぐらいだったかしら。ギミックがわからないと最終段階もきついのよね」


 そして、運命の最終決戦が開始されるであろう次の土曜日、運営チームは開始前から度肝を抜かれていた。


「ちょっと、なんでほぼ全員の装備が更新されているのよ!?」

「大方、『ライブラリ』が頑張ったんだろうよ! ……ああ、全員の装備がレイド産以外の最上級素材で作られた装備に置き換わってやがる! レイドエリアのレベル制限効果があるといっても一定以上のステータス減少は起こらない仕様なんだぞ!?」

「さすがにそこまで予想して用意したわけじゃないだろうがな……そして特殊ポーション系も★11を遂に作れるようになってやがる!」

「という事は【魔力操作】と【気力操作】を覚えたって事よね!? さすがと言いたいところだけど早すぎるんじゃないかしら!?」

「だが、貼り付かせていた監視AIの報告上は一切のチートはなしだ! 普通にプレイヤースキルで覚えたんだよ!」

「本当に生産に関しては俺達の想像を軽く飛び越えてくれるな! そして全員が聖霊武器持ちとか豪華すぎるだろう!?」

「聖霊武器については仕方が無いだろう? あれだけの高品質品を揃えられて聖霊武器化しないはずがないんだからな。一般に聖霊武器がまだ出回ってないのは中級錬金術士の不足もあるが、★7品の流通がようやくポツリポツリと出回り始めただけってのがあるからな」

「これ以上、事前準備の話をしてもしょうがないわね。ともかく今日の様子を監視させてもらいましょう」


 出だしから大きな波乱のあった5度目のレイドアタックであったが、次の波乱は妖精の繭防衛戦で起こった。


「……全パーティ被害0のパーフェクトクリアかよ。さすがとしか言えないな」

「というか、移動速度増加ポーションの効果が強すぎるんじゃないか? あれって本当に50%上昇か?」

「今調べた。中に入ってるポーションは★11で50%上昇だが、実際にはポーション瓶効果でさらに薬の効果が40%上昇、合計で移動速度が70%上昇になってる」

「マジかよ……それならあの移動の速さも納得だな」

「でも、これって相当にまずい状況じゃないかしら」

「まずいとは?」

「今までも妖精の繭防衛戦第2段階では1個たりとも破壊されたことがないのよ? 今回も油断さえしなければ被害0で終わるでしょうね。そうなると封印鬼のレベルは初期状態の40な訳だけど……」

「……ああ、それはまずいな。最終段階でしくじらなければ負ける要素がない」

「後は、最終段階でミスが出るかどうかの問題か……」

「室長はきっと大喜びで観戦してるんだろうな」

「きっとそうね。……さあ、第2段階が開始したわよ」


 第2段階では彼らの予想通り大きな波乱もなく全ての襲撃が一蹴されてしまう。

 そして、さらなる爆弾が運営の元に投下された。


「海鮮料理の★10品だと!? つまりあの料理プレイヤーも【魔力操作】と【気力操作】を覚えてるって事か!?」

「そう言うことなんでしょうね。プレイヤーネーム・ユキ、β勢ではなく正式サービスからの参加のようだけど……『ライブラリ』にいるのは伊達じゃないって事ね」

「海鮮料理のバフ時間は60分だったよな? という事は効果時間中に封印鬼を倒しきることも可能なんじゃないか?」

「それはわからんが……第1段階との戦闘時間が15分程度だったことを考えればありうるな」

「戦術としては、増援の小鬼対策で常に2パーティを待機状態にしている以上、DPSは下がるはずだけど……1時間前後で倒せる火力が出せるのは確実ね」

「って事は封印鬼が勝てる可能性は、まだ解き明かせていない最終段階のギミックにどれだけ対応できるかだが……こうなってくるとそれも望み薄か?」

「最低でも1パーティは封印鬼の移動に備えて待機させるでしょうからね。封印鬼が相手のタンクを削り倒せるかどうかが鍵になりそうね」

「そうだな……さて、そろそろ始まるようだ。最終決戦を見届けよう」

「そうね。……運営としてはどちらを応援するのが正しいのかしらね?」

「どうなんだろうな。最上位クラスレイドに挑む挑戦者を応援するべきか、まだ4週間・5回の挑戦なのに追い詰められているレイドボスを応援するべきか……」

「ああ、そう言えば、開発部隊もこの様子を見てるらしいぞ。応援しているのはもちろんレイドボス側らしいがな」

「まあ、彼らはなぁ……」

「彼らのことはおいておきましょう。さあ、始まったわ」




 そして話は冒頭の場面に戻る。

 運営チームがざわつく中、1人の男が運営管理室にやってきた。

 もちろん運営関係者、榊原室長だ。


「なかなか楽しい戦闘だったようだな。まさか最終段階のギミックまで戦闘中に分析してしまうとは驚きだ」

「……そんな簡単に済ませないでください、室長。レベル65レイドも相当ですが、ここの難易度も決して負けず劣らずだったんですよ?」

「まあ、クリアされてしまったものは仕方があるまい。絶対にクリアできないゲームなど『クソゲー』でしかあるまい?」

「それはそうですが……これからどうしますか?」

「どうすると言われてもな。どうもしない、これしかあるまい。運営の公式イベントでもない、ただのレイドクエストクリアなのだからな。今現在行われている報酬の配分などが終了したらそれで終わりだよ」

「ですが『妖精郷の封印鬼』はの入口を開ける鍵でもあるんですよ? それをクリアされたという事は『』が入手出来てしまうと言うわけで……」

「それこそ入手出来ない事の方が問題であろう? 正当な手段で正当に入手する権利を得たのだ。運営から出来る事など何もあるまい。……そう言えば、『入手出来ない』で思い出したが、トワ君達がフェンリルに勝った際に『幻狼の腕輪』を入手していないが、あれはどうなるのかね?」

「『幻狼の腕輪』ですか? ……あ、その前段階を通常クリアせずにフェンリル戦をクリアしてしまうと腕輪を入手することが出来ないんじゃ……」

「至急、開発に確認して入手不可能であったらバグ扱いで修正するように。……さて、今回の戦闘だが戦闘映像の記録は残してあるな?」

「それは当然です。不正対策のためにも多角度からの映像記録を取得済みです」

「そうか、ならばその映像を加工して夏休み向けのPVの一部として使用できないか検討してくれ。最後の聖霊開放連発の場面など、βの流星雨に匹敵する見栄えのいい素材だと思うが? 身長5メートルにも及ぶ巨鬼に連続して仕掛けられる派手な必殺技。いい場面だと思うぞ」

「……そうですね。プロモーション班と協議いたします。他には何かありますでしょうか」

「いや、特に何もないな。引き続き業務に励んでくれたまえ」

「わかりました。それでは失礼します」


 足早に立ち去る運営スタッフを尻目に、榊原は独りごちる。


「まさかこの早さであのレイドをクリアするとはな。さすがと言うべきだが、あまり差が開きすぎるのもよくないし、かといってこれ以上トップにブレーキをかけるわけにも行かない。運営とは難しいモノだな」


 言葉の内容とは裏腹に心底楽しそうな榊原であった。


**********



~あとがきのあとがき~



レイドアタックを見守る運営チームのお話でした。

運営、仕事しろ()


なお本話ですが表である172話よりもさらに長くなって8,000文字ほどあります(

これが普通の話だったら途中で分割して2話にしているところです。

さすがに裏話を2話に分割するのはあれなのでやりませんが。

おかしいな、せいぜい5,000文字程度で済ませる予定だったのにどうしてこうなった(

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