171.レイドアタック 5~中盤戦~

 ひとまず最初の封印鬼を倒した俺達は休憩と装備のメンテナンスを行っていた。

 と言っても、基本的には攻撃は聖霊武器が多かったためそれらは各自の修理になり、ドワンが修理――というかリペアを使ったのはタンクの鎧装備だけだった。

 それ以外のメンバーの装備についてはほとんど耐久度が減っておらず、このまま最終戦まで行っても問題ないと言う判断が出たのでそのままだ。


 装備の整備が終わったら、部屋の中心に現れた魔法陣から次のマップへ移動する。


「さて、とりあえず最初の封印鬼までは終わった訳だけど……」

「問題はこの次であるな。この先でどれだけ被害を抑えられるかが勝負の分かれ目であるな」

「そうなりますね。出来れば全体で5つ以内に抑えたいところですが……」

「うーん、移動速度増加ポーションもパワーアップしたし、それくらいの被害なら大丈夫じゃないかな?」

「ま、油断はできねーけどな」

「そうだな。油断さえしなければノーミスクリアも出来そうだ」


 実際これまで破壊されてきた繭だって、弓を倒すのに手間取っている間に攻撃されたダメージが蓄積していたものだからな。

 ハルではないが移動速度増加ポーションも強化したし、上手く行けば全員がノーミスクリアだって狙えそうである。


「ともかく、ここから先はパーティ単位での行動だ。皆、油断しないようにね」

「そうであるな。今度こそ我々もノーミスクリアを目指すのである」

「そうだよね! どうせ目指すならノーミスクリアだよね!」

「ま、それが一番だわな」

「そうですね。そこを目指して頑張りましょう」

「了解。まあ、無理をしない程度にやるさ」


 とりあえず話はまとまった。

 レイドクエストの制限時間までは大分余裕があるがだからと言ってダラダラとやっている意味はないだろう。


「それじゃあ、行くとするか」

「そうだね。皆、また後で」

「は-い。また後でね-」

「行ってくるのである」

「おう、それじゃあな」

「皆さんお気を付けて」


 俺達は6パーティそれぞれに別れて小道を進む。

 行き止まりにはこれまでと同じように、小鬼の群れと巨大な扉。

 今更、ここの小鬼の群れに手間取るほど俺達は弱くはない。

 それぞれに対象を割り振って一気に小鬼の群れを倒してしまう。


「とりあえずここにいるのは全部だねー」

「さすがにここの群れは呆気ないのう」

「さすがにもうここの群れじゃ手間取らなくなってきたわね」

「そうですね。宝箱も出ましたし次の準備に移りましょう」

「そうだな。……どうやら他ももう終わってるらしいな」


 遠くから地響きのような音が聞こえてくる。

 これは鍵を鍵穴に挿したときにツタで道が封鎖されたときの音だろう。


『こちら白狼。準備できたよ』

『十夜です。こちらも準備完了です』

『我々も準備出来たのである』

『こっちもオッケー!』

『俺達も終わったぜ』


 レイドチャットから各パーティの報告が飛んでくる。


「こっちも今終わったところだ。これから鍵を開ける」


 俺は宝箱から鍵を取り出して扉へと差し込む。

 すると、いつも通り背後の道が封鎖され、6つの鍵が揃った事で扉が開き始めた。


『それじゃあ、皆、健闘を祈るよ』

『ええ、お気を付けて』

『うむ、行ってくるのである』

『しゅっぱーつ!』

『さて、行きますか!』


 俺達以外のパーティは開いてすぐに門の中に入っていったようだ。

 俺達の方は……特に問題はないな。


「それじゃあ、俺達も行くぞ」

「おー、頑張ろー」

「うむ、行くぞい」

「さあ、早いところ済ませてしまいましょう」

「はい、頑張りましょう」

「ウォフ!!」


 俺達『ライブラリ』5人にシリウスを加えたパーティは妖精の繭防衛のために次のステージへと足を踏み入れた。


 次のステージでは妖精の繭6つを防衛する防衛戦だ。

 このステージだけは俺達も移動速度増加ポーションで移動速度をアップさせておく。

 イリスの弓が『魔導弓』に変わった事で俺のライフルと同程度の射程距離を手に入れたわけだが……防衛戦での使用は初めてのため、とりあえず最初は様子見と言うことでこれまで通りの戦法で戦うことにする。


 とはいえ、初めてここを訪れた時とは全員のレベルが違う。

 特にスキルレベルが上がった事により攻撃パターンが増えたことは非常に大きな意味を持っていた。


「ハイチャージバレット!」


【ライフル】スキルの高倍率スキル『ハイチャージバレット』のおかげで杖小鬼は一撃で沈む。

 ハイチャージバレットのリキャストタイムは20秒なので、次の攻撃までには既に回復しているというわけだ。


 イリスの方も新しくなった弓で弓小鬼を射貫いている。

 ダメージ量的に通常攻撃3発程度と言った所か。

 だが、射程距離が伸びたことによって弓小鬼が攻撃を始める前に余裕を持って倒す事が出来た。


 あとは、近接タイプの小鬼だが……こっちはもう少し残っているな。

 俺もマギマグナムで参戦してくるか。

 白狼さん達『白夜』のアドバイスに従い、遠距離タイプは有効射程限界から攻撃しているが、近接タイプの小鬼はある程度の距離まで引きつけてから手を出すように変更した。

 これで移動の手間が省けて、移動によるロスタイムが減るというわけだ。

 もっとも、引きつけると言うことはそれだけ敵の移動に時間をとられているわけだが……うん、問題なく次の増援までに倒す事に成功したな。


 そして近接タイプを倒して数秒後、次の襲撃が開始される。

 引きつけて倒す方法だと戦闘間隔が短くなってしまうが、仕方が無いか。


 そうして増援を倒す事8回、次からはランダムな方向からの襲撃になるが……まずは西か。

 これまでと同じように、まずは俺とイリスで最大射程から杖小鬼と弓小鬼を倒す。

 その後は、出来る限り近接タイプを引きつけてから一気に倒してしまう。


 無事この集団も倒す事が出来た。

 そして、インターバルの間に中央部まで戻る余裕も出来た。


 次の襲撃は……東側か!


 しかし、この戦法ならば真逆の方向から襲われても何の問題もない。

 俺達は同じように東から来た小鬼達を一蹴すると、続く北、南からの襲撃も守り抜く事に成功した。

 もちろん、今回の繭の被害は0である。


 小鬼の襲撃を乗り切りしばらくすると、再び転移させられて最終決戦場でもある広場へと出た。


「ふう、何とかなったな」

「そうだね。被害0でよかったよ」

「あ、お兄ちゃん達も被害0で終わったんだね!」

「うん? ハルか。お兄ちゃん達も、ってことはお前達もか?」

「うん、結構ギリギリだったけど被害0だよ!」

「ああ、トワ君達も被害なしか。これはよかったよ」

「白狼さん達は……当然0ですか?」

「まあね。もう慣れてしまったかな?」

「おや、そちらも被害なしであるか」

「という事は教授もか」

「然りである。あとは十夜君とリク君であるが……」

「俺達も今回は被害0だったぜ!」

「私達も被害なしですね」

「という事は全員被害なしであるか。これは幸先がいいのであるな!」


 確かにまさか全員が被害0になるとは思わなかった。

 ハルやリク達にはまだきついと思っていたが……移動速度増加ポーションの効果上昇は思いの外効果があったようだな。


「うん、本当にこれは調子がいいね。……さて、まずは繭を攻撃されないように中央部に移動させるとしようか」

「うむ、そうであるな。ここで躓いては台無しである」


 俺達は再度別れて広場の中央部付近に妖精の繭を集める。

 こうして36個の繭が揃う様は壮観だな。


「さて、ここからはレイドチームとしての総力戦だが……皆、準備はいいよね?」

「もちろんである。準備は万全であるよ」

「まかせて!」

「おう、いつでもいけるぜ!」

「大丈夫ですよ。いつでもいけます」

「こっちも準備完了。さあ、次の戦いを始めようか!」


 やがて待機時間が過ぎ、小鬼達の襲撃が開始される。


「まずは北と東から! 東は第1と第3、北は第4と第5であたってくれ!」


 今回からは最初は2方向からの襲撃、その後3方向に増え、最後は全方向からの襲撃となる。

 作戦はこれまで通り、1方向当たり2パーティで対処する方法。

 基本的に第1と第3、第4と第5がペアとなって動きそれぞれの方向からの襲撃に対処する。

 第2パーティと第6パーティは念のため3方向からの攻撃になるまでは待機だ。


 攻撃力も少しは上がっているはずだが、俺のチャージバレットではこの襲撃でレベル45まで上がった小鬼を一撃で倒す事は出来ない。

 だが、ハイチャージバレットであれば一撃で倒せるし、チャージバレットで吹き飛ばした方もノックバックから回復すればまた繭の方へと駆け出してくる。

 後は、その無防備な頭を再びズドンだ。


 俺が杖小鬼2体を倒している間に弓小鬼2体もイリス達の手によって片付けられたらしい。

 後は近接タイプ6体だが……こっちも問題なく討伐終了しそうだな。

 下手に手を出さず、一足先に中央部まで戻っておくとするか。


 俺達遠距離攻撃部隊に遅れること数秒、近接攻撃部隊も中央部まで戻ってきた。

 あと10秒もしないで次の襲撃が始まるわけだが……それぞれポーションなどで回復をしてその時を待つ。


「次は北と西だ! 北を第1と第3、西を第4と第5であたってくれ!」


 レイドコマンダーである白狼さんからの指示が再度響き渡る。

 さて、それじゃあ次の標的を撃ち抜いてくるとしますか!



 そのようなやりとりを繰り返すこと18回。

 最後の全方位からの襲撃には少々手を焼かされたが、無事36個の繭を守り切ることに成功した。


「やったー! 遂にボスまで全部の繭を守り抜いたよ!」

「やったな! これでボスのレベルも40のままだぜ!」


 ハルとリクは全身で喜びを表現するかのように飛び回っている。

 程度の差こそあれ嬉しいのは全員一緒であり、大なり小なり喜びの色が浮かんでいる。


「さあ、嬉しいのは僕も一緒だけどまずは大ボス、封印鬼戦の準備だ。急いで取りかかるよ」


 確かに浮かれてばかりもいられない。

 この数分後からは最終ボスであろう封印鬼戦が開始されるんだからな。


**********



~あとがきのあとがき~



各パーティ毎に分かれての繭防衛ですが、久しぶりのサイコロの神様で被害状態を決めました。


1~2:2個破壊、3~4:1個破壊、5~6:被害なし


でやって、6・6・6・5と4連続で被害0判定が出たためこのような結果に。

(なお『白夜』2パーティ分は元から被害0判定です)


サイコロの神様は今日も今日とて気まぐれです。

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