170.レイドアタック 5~序盤戦~

今回はラストアタック予定のためダイジェスト化はせずに最初から書いていく所存。

既に大分昔の話(30話ぐらい前)の話と内容が一部かぶるけど、同じクエスト攻略だから当然だよね!


**********


 ハルやリク達の装備更新から数日が経ち、土曜日。

 遂にレイドを本格的にクリアにかかる日がやってきた。


 今回はカラーポーションや蘇生薬もしっかり準備してある。

 この1週間でかなりの修練が進み、ハイポーションだけなら★10か★11で安定。

 クリアポーションを除くカラーポーションは★5から★8、クリアポーションは★4から★6となった。

 そして肝心の蘇生薬は★4で安定し、たまに★5が作れるといったところだ。


 まだまだ【魔力操作】と【気力操作】を使ったアイテム作成にはムラがあると言うことだが、確実に前進しているわけであって、今までのようなひたすら失敗を繰り返していた練習に比べれば万倍マシというものだ。

 そして、【魔力操作】と【気力操作】を使うことで特殊ポーション類も効果が上昇し、★11まで作る事に成功した。

 ★11のステータスポーションは6時間の間ステータスを80上昇、移動速度増加ポーションは30分の間移動速度を50%上昇まで効果が高まっていた。


 この特殊ポーションの効果上昇には特に白狼さんが目を輝かせており、早速『白夜』に卸してほしいと相談を持ちかけられた。

 もっとも、「その辺の話は帰ってからゆっくりやりましょう」と柚月によって遮られたのだが。


 ともかく、俺に用意できた秘蔵のポーション類のうち効果の高いものを各パーティに配布する。

 今回はクリアまで目指す以上、一切の出し惜しみは抜きだ。

 ……よし、これで消耗品の配布も終わったし、準備は万端かな。


「ああ、トワ君、1つ提案があるんだけど」


 準備が終わり後はレイドクエストを開始するだけのタイミングで白狼さんから待ったがかかる。


「今日はレイドを本気でクリアする予定で挑むわけだ。そうなるとレイド攻略者の名前はあそこの石碑モノリスに刻まれることになる」

「へえ、そうだったんですか」

「ああ、そうだよ。初攻略パーティともなれば、参加した各個人の名前まで記される事になるね」

「……それって断ることは?」

「うん、出来ないね。それともう1つ、初回攻略時にワールドアナウンスが流れるんだけど、そこでレイドチームのチーム名が流れるんだ。今までは適当に『レイドチーム』で済ませていたけど、さすがに今回は味気ないし変えないかい?」

「『白夜攻略班』って言うのは?」

「それは今回は却下かな。僕達の出している戦力は2パーティ分だし、レイド発見者は君なんだから。『ライブラリ遠征隊』とかはどうだろう?」

「……生産クランがレイドエリアを初攻略っていうのもアレかと思いますが……」

「どちらにしてもモノリスに名前は残るよ? まあ、個人名だけじゃなくチーム名も残るのだけどね」

「……それなら『ライブラリ遠征隊』は却下で。……そうですね、『妖精郷探索隊』というのはどうでしょう?」

「……うん、それなら悪くないか。それじゃあレイドチームの名前を変えられるのはホストパーティである第1パーティだけだから変更をよろしく頼むよ」

「わかりました……はい、完了と」


 今まで変更したことのなかったレイドチーム名をデフォルトから『妖精郷探索隊』に変更した。

 これで、このまま攻略したとしてもそれなりに箔はつくだろう。

 あと、俺達がこのレイドエリアの攻略者だって言うことも現地に来なければばれないみたいだし。


「さて、俺達は準備できたけど、皆は大丈夫か?」

「わたし達は大丈夫!」

「俺達も準備万端だ」

「我々もいいのである」

「僕達『白夜』も問題ないかな」


 全員に確認を取り、問題ない事を確認。

 さて、今度こそ準備も整った、後はこの扉をくぐってレイドを始めるのみ。


「さあ、それじゃあレイドアタックを始めようか!」


〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』に挑戦することができます。挑戦しますか? Yes/No 〉


 いつもの確認画面が表示されるが、ここは迷わず『Yes』を選択する。


〈レイドクエスト『妖精郷の封印鬼』を開始します。制限時間は4:00:00です〉


 これもいつも通りの制限時間表示。

 制限時間が動き出すと同時に俺はレイドエリアの扉に触れてエイドエリア内へと転送される。


 まずはいつもの雑魚掃除からだ。


「ここはいつも通りだ。時間を無駄遣いしないようにパーティ単位で対処にあたろう!」


 白狼さんの指示の元、全パーティがバラバラにモンスターの集団へと切り込んでいく。

 もちろん、俺達『ライブラリ』のパーティもその1つだ。

 最近はタンクの練習を始めたドワンを先頭に、俺やユキ、柚月にイリス、そしてシリウスが続く。

 ドワンが敵1グループのターゲットをかき集めて1カ所にまとめてくれるので、俺達は範囲攻撃で一気にモンスターをなぎ払っていく。

 レベル45制限と言うこともあり、外で行う攻撃よりも威力は低めではあるが、それでも4人分の範囲攻撃を同時に受けては敵も耐えることは出来ないようだ。

 なお、シリウスは焼け残りがいた場合に備えて待機だ。


 最初の大部屋の各所では、同じように各パーティ毎に分かれて同様の殲滅戦を繰り広げている。

 とにかく、最初の封印鬼戦まではどこまで時間を短縮できるかが鍵になってくるのだ。


 各パーティ毎にモンスターのグループを殲滅すること約10分、遂に最初の広場のモンスターは全滅した。

 最初の時は様子見も兼ねてだけど30分かけてたことを考えれば大きな進歩である。


「殲滅は完了しましたね。このまま先に進みますか?」

「そうだね、この程度の戦闘なら問題ないだろうし先に進もうか。休憩は最初の封印鬼前広場で行おう」

「わかりました。……それじゃあ移動速度増加ポーションを飲んで先に進もうか」


 戦闘時間が短く済んだことで集中力もまだまだ続くという判断の下、俺達はこのまま先に進むことにした。

 移動速度増加ポーションの効果も受けて、小走りで道中の敵を倒しながら進む事30分弱、遂に封印鬼前広場までたどり着く。

 初回アタックの時はここまでで1時間半かかっていたからな、それが40分程度でたどり着くのだからずいぶんと進歩したものだ。


「うん、やっぱり移動速度増加ポーションは便利だね。ここまですいすいたどり着けたよ」

「そうであるな。効果時間も延長されたことで2本目を開けずともここまでたどり着けたのは幸いである」

「それじゃあ、予定通りここで休憩ですね」

「そうだね、10分ほど休憩を取ろうか。時間的な余裕は大分あるからね」


 白狼さんの宣言により、各自が思い思いに休憩を取り始める。

 俺達は……ユキや柚月、イリスは普通に休憩してるけど、ドワンは盾の調整をしているな。

 ドワンがタンクの練習を始めてからまだ間もない。

 ヘイトをかき集める挑発系スキルもまだ未熟ではある。

 だが、装備自体はタンクとして最高峰に値するものが用意されており、さらに市場から【重装行動】を購入したらしく移動にも差し障りが少なかった。


「ドワン、調子はどうだ?」

「トワか。まあまあといったところじゃの。タンクとして最低限の役目はこなしていくつもりじゃよ」

「それは助かるけど……何でまたタンクに転向しようと考えたんだ?」

「一言で言ってしまえばユキの嬢ちゃんに頼りすぎじゃったからの。ユキの嬢ちゃんの回避盾とプロキオンのメインタンク。どちらも悪くないし十二分に強い。じゃがユキの嬢ちゃん一人がいなくなっただけで機能しなくなるのでの。それならば、わしもタンクとして動けた方が効率的なのでな。幸い、装備類については素材さえあれば自力で全て揃うからのう」

「そう言うことなら構わないけど。あまり無理はするなよ?」

「無理などしとらんぞい。……まあ、ユキの嬢ちゃんのように回避盾をやれと言われても無理じゃがな」

「そんなことは言わないさ。それじゃあ、この先もよろしく頼むぞ」

「わかっておる。任せておけ」


 ドワンの様子を確認した後はユキ達の様子も確認したがこちらも問題なしという事だった。


 やがて休憩時間の10分が過ぎ、封印鬼との第1回戦が始まる。


 ここの封印鬼との戦いはいい加減手慣れたもので、戦闘開始と同時にそれぞれがパーティ単位で散らばって封印鬼を包囲する。

 メインタンクはいつも通り『白夜』第1パーティが務め、それ以外のパーティはタンク以上のヘイトを集めないように注意しながら攻撃するだけなので事故が起こることもありえない。

 途中、要所要所で咆吼によるスタンや全体攻撃による回避不可のダメージ、特殊範囲攻撃によるタンク以外の被弾なども発生しているが、装備を更新している分俺達の余力はまだまだある。

 実際、全体攻撃のダメージも俺のHPで2割程度とかなり少ないので、他のメンバーからしてみれば気持ちHPが減ったかな? 程度で済む話だろう。


 このようにして封印鬼との第1回戦は順調に推移していき、15分ほどで遂に1本目のHPバーが消滅する。

 1本目のHPバーを削りきられた封印鬼はこれまでと同じように森の中へと逃げ去っていった。


「うーん、ここで追撃できれば最終戦の時、もっと楽が出来そうなのにー」

「さすがにそれは無理だろう。そんな甘いことが出来るような設計にはなっていないだろうよ」

「そうだね。もし、HPバーギリギリまで削った上で大ダメージ技を重ねるようにして当てても、おそらくはHPバー1本目が削りきれるだけで、2本目まではダメージが入らないと思うよ」

「そうであるなぁ……この手のボスはその程度のギミックは仕掛けてありそうである。その辺りの検証は後日、日を改めて行いたいのであるよ」

「そうだね、僕もここの攻略を1回だけで終わらせるつもりはないから手伝うよ。何回攻略するのかはクリア報酬次第だけど」

「出来ればクリア報酬が豪華だとありがたいですね。『白夜』としてもそれなりの時間を割いてきた訳ですから」

「さて、ともかくボス戦は終了だ。装備品のメンテナンスをしてから次に取りかかろうか」


『白夜』1軍パーティのメインタンクであるガイスさんの盾は、聖霊武器化してあるため普通の鍛冶では修復できない。

 それについては折り込み済みで大量の魔石を使って一気に耐久値を回復させていた。


 他のメンバーもメイン武器として聖霊武器を使っていたメンバーが多く、それぞれ魔石を使って修理をしている。

 ……俺も聖霊武器を大分使用してきたからな、この先に備えて回復させておくとするか。



**********



~あとがきのあとがき~



1周目では2時間近くかかった最初の封印鬼までの戦闘ですが、今回は1時間あまりで終了しました。

装備更新やレベルアップも要因としてあげられますが、最大の要因は慣れでしょうね。

特に封印鬼前までの長い通路を30分で駆け抜けたのが大きかったです。

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